13億超の人口をもつ中国、そのなかで「いちばんの大富豪」というと「さぞかし豪快なことをやりそう」にも思えるが、そうした期待に応えるような大事業に乗り出した人物の話が先頃米国で紹介されていた。

王健林(Wang Jianlin)氏は、大連萬達集団(Dalian Wanda Group:以下、ワンダ・グループ)という不動産関連の事業を手広く手がけるグループのオーナーで、Bloombergによる世界の億万長者番付(Billionaire Index)をみると、個人資産総額は推定133億ドルでだいたい70位台につけている。ソフトバンクの孫正義氏(122億ドル)や故スティーブ・ジョブズ夫人のローリーン・パウウェル・ジョブズさん(115億ドル)より若干多く、ユニクロの柳井正氏(184億ドル)やマイクロソフトCEOのスティーブ・バルマー氏(162億ドル)らとはかなりの差があり、NBAブルックリン・ネッツの筆頭オーナー、ミハイル・プロコロフ氏(132億ドル)とほぼ肩を並べるくらい、という感じの大金持ちらしい(数字はいずれも9月26日現在)。

その王氏率いるワンダ・グループが、中国の青島(チンタオ)につくる「青島オリエンタル・ムービー・メトロポリス」の発表式典が9月22日に現地で開かれ、ハリウッドを代表する大スターらが、映画製作・配給会社各社の幹部らとともに顔を見せたという。

Stars grace Qingdao Oriental Movie Metropolis launching ceremony - Wanda Group (式典に参加したスターの写真が並んでいる)
Wang Jianlin Aims to Create Hollywood, China - WSJ
Wanda to Invest $8.2 Billion in Park, World’s Largest Studio - Bloomberg
China's Wanda Unveils $8.2 Billion Movie Fund as Hollywood A-Listers Lend Support - The Hollywood Reporter

上記のWSJ記事などには、式典に参加した著名人の名前が列挙されているが、この顔ぶれの豪華さがハンパない。レオナルド・ディカプリオ、ジョン・トラボルタ、ユアン・マクレガー、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、ニコール・キッドマン、ケイト・ベッキンセイル、チャン・ツィイー、ジェット・リー、トニー・レオンなどの映画スター、さらに大物プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインをはじめ、米の映画製作・配給会社各社から幹部が参加、などと書かれてある。

このワンダ・グループは、中国国内で500カ所以上のシネコン(スクリーンはあわせて約6000!)を保有・運営するほか、昨年には米国でAMCエンターテインメントという映画館チェーンを26億ドルで買収し、今では「世界最大の映画館チェーン運営会社」になっているらしい(ほかにホテル・チェーンやカラオケチェーンも経営)。また最近では、王氏が米アカデミー協会(Academy of Motion Picture Arts and Sciences、アカデミー賞主催組織)に新たなミュージアム建設の資金として2000万ドルを寄付したことも一部で話題になっていたという。ハリウッドの大物スターや重役らが式典に顔を揃えた背景にはそんな事情もあったようだ。また、「スター連中を呼ぶためだけにワンダが使った額は5000万ドルに上る」ともWSJの記事には書かれている。

青島に建設されるテーマパーク兼映画スタジオもハンパなスケールではないらしい。同じくWSJの記事には「巨大な映画撮影所、テーマパーク、映画ミュージアム、蝋人形館、ローラーコースター、リゾートホテル、複数の映画館、それに客席数3000の劇場や2000人収容の宴会場などが作られる予定」とある。2017年にフルオープンが予定されるこのプロジェクトの総工費はあわせて82億ドルに達する見込みだという。

さらに、ワンダでは、この映画スタジオを使って撮影・製作する作品についても計画を進めており、タレントエージェンシー大手4社とはすでに契約済みで、毎年30作品程度を作っていく予定。その他、中国の映画/テレビ製作会社50社とも交渉中で年間100本程度の映画やテレビ番組をつくっていく考えも明らかにしているという。

「数年後には中国製のハリウッド映画ができている」ということになろうが、青島は日本からも比較的近いので、この巨大テーマパークのオープンが大いに楽しみなところである。