冗談かと思ったら本気だった! カニエ・ウェストの面白すぎるオレ様語録


カニエ・ウェストというと、最近では身重のキム・カーダシアン(17日に女児を出産)と一緒にいるところの写真ばっかり……といった印象だが、そのウェストがめずらしくひとりでインタビューを受けている長い記事をNYTimesで見かけた。

Behind Kanye’s Mask - NYTimes

米国時間18日に発売される新作アルバム『Yeezus』のリリースにあわせたもので、それとは別にこの制作にエクゼクティブ・プロデューサーとしてかかわったリック・ルービンのインタビューもWall Street Journalに掲載されていた。

The Inside Story of Kanye West’s ‘Yeezus’ - WSJ

このうち、NYTimesに出ている本人の話があまりに破天荒すぎると、さっそくジミー・ファロンが自分の番組でそのことをネタにしていた。


[Jimmy Fallon's Monologue: Obama Losing Supporters, Putin Speaking English]
(ジミー・ファロンのモノローグ、2分~3分半あたりがカニエの話。"Kanye"という名前を口にしただけで少し吹き出している)


この「カニエ語録」が実に面白いので、今日はその一部を紹介したい(なおジミー・ファロンの引用は、ネタ作りのためにNYTimes記事にかなり脚色を加えている。以下はNYTimes記事からの抜き書き)

「オレは音楽の世界のマイケル・ジョーダン、だから審判が判定が間違っていれば、はっきりそう言える」

You know, if Michael Jordan can scream at the refs, me as Kanye West, as the Michael Jordan of music, can go and say, “This is wrong.”

ジョーダンといえば、いまだにバスケットボールの世界では「神様」扱い。ゆえに「音楽の世界のマイケル・ジョーダン」というのはちょっとしたものである。

「オレの言うことは信用できるし、影響力も強いし、的を射ている。だから、オレなら物事(判定)を変えられる。」

I am so credible and so influential and so relevant that I will change things.

中学生の時に習った「so... that構文」のお手本のようなこのコメント、グラミー賞でナールズ・バークレー(Gnarls Barkley、シーロー・グリーンのかつてのユニット)とジャスティン・ティンバーレイクの作品がいずれも最優秀アルバム賞を逃した時に、カニエが授賞式の客席でジャスティンのほうを向いて「オレにステージに上がって欲しいか(正しいことのために戦って欲しいか)」といった感じで目配せした、というような文脈で書かれている。

「カニエ・ウェストはスティーブ・ジョブズのような存在になると、オレはそう思っている。オレが、インターネットやダウンタウン(ストリート)、ファッション、カルチャーの分野でスティーブのような存在であることに疑問の余地はない」

I think what Kanye West is going to mean is something similar to what Steve Jobs means. I am undoubtedly, you know, Steve of Internet, downtown, fashion, culture. Period.

トレンドを作り出す能力についてのコメント。このあとの部分で、「ビギーが亡くなった時、初めてジェイ・Zはジェイ・Zになることができた。それと同じように、スティーブが亡くなったからオレはその後を継ぐような存在になった、とオレは正直にそう感じている」という一節が続いている。なお、ビギー(Biggie)というのは、1997年に亡くなったブルックリン出身の大物ラッパー、ノトーリアス・B.I.G.のこと。

「オレはいずれ何十億ドルもの価値を持つ集団(会社)のリーダーになる、なぜならオレは答えを知っているからだ。オレは文化のことがわかっている。オレこそが中核だ」

I will be the leader of a company that ends up being worth billions of dollars, because I got the answers. I understand culture. I am the nucleus.

インタビューの締めくくりの部分に出てくるコメント。まるで全知全能の存在、自分を中心に世界が回っていると本気で思っているようだ。


さて。今回リリースするアルバム、タイトルからしてイエス・キリスト(Jesus)を想起させる「イーザス」だし、なかには「オレは神だ(I Am a God)」というタイトルの曲も含まれているというし、ご本人がどこまで本気なのかが少し心配になってくる。いずれにしてもこの新作アルバムで、アーティストとして、またビジネスマンとしての器量がわかる、ということになるかもしれない。

他人のふんどしの取り回しなら誰にも負けないジェイ・Z

しばらく前から噂になっていたジェイ・Zとサムスンとのコラボが米国時間6月17日に正式発表されていた。

Samsung to Give Away 1 Million Copies of Jay-Z’s New Album - WSJ

Galaxyシリーズ製品のプロモーションを狙ったこのコラボ、内容は7月4日に発売されるジェイ・Zの新作アルバム「Magna Carta Holy Grail」を米国のGalaxy(Galaxy S III, Galaxy S4, Galaxy Note II)ユーザー限定で、3日前に先行リリース(100万コピーを無料配布)する、というもの。サムスンはジェイ・Zらに総額500万ドル(1コピー5ドルx100万コピー)を支払うという。

自分の新しい商品の宣伝プロジェクトに、他者を「相乗り」させて、ちゃっかりお金まで頂戴する。「他人(ひと)のふんどしで相撲を取る」というのは、まさにこういうことを言うのだろうが、ジェイ・Z流ビジネスの真骨頂ともいえる。マイクロソフトからの「Bing」のプロモーション予算で展開した自著「Decoded」の宣伝のことを覚えている人なら、「またやりやがったなぁ」とニンマリして終わりかも知れない。また去年米国だけでマーケティングに4億ドル以上使ったというサムスンにとっては、500万ドル程度のお金はどうでもいい額、とみることもできよう。

このコラボの話、6月初めに囁かれていたでは、「総額は最大で2000万ドルにも」「サムスンといっしょにストリーミング音楽配信をはじめるのでは」といった話も出ていたから、それに比べると正式発表の中味はちょっと期待外れともいえそうだ。また、昨年ビヨンセがペプシと結んでいた複数年にわたる総額5000万ドルのパートナー契約に比べても一桁小さい。いっぽう、年々アルバムを売るのがむずかしくなっている状況を考えると、たとえディスカウントでもまとめて100万枚(コピー)さばける、というのはアーティストにとって悪い話ではないはずだ。


さて。このプロモビデオをみると、いつもながらの豪華なメンツがこのアルバム制作にかかわっていることがわかる。ニットキャップにサングラス姿のごつい男はR&B系の音楽プロデューサーであるティンバランド。最近ではビヨンセの最新シングル「Grown Woman」や、ジャスティン・ティンバーレイクの「The 20/20 Experience」の制作も手がけた大物だ。そして、水玉シャツの男は歌手、音楽プロデューサー、ファッションディレクターなどとして様々な分野で活躍するファレル・ウィリアムス。今シーズンの「The Voice」にシャキーラ・チームのメンター役として助っ人出演していたことは記憶に新しい。さらにアリシア・キーズの夫、スウィズ・ビーツの姿も見える。そして、短パンに裸足で、ソファーに寝そべっていたりするヒッピーのような見かけの年配の男性こそが、カニエ・ウェストの「イーザス」もプロデュースしたリック・ルービンだそうである。

Jay-Z giving away 1 million early copies of new album to Samsung owners - The Verge