Late Night with Jimmy Fallon」でセレーナ・ゴメスをゲストに迎え、マリオのコスプレで歌を披露するジミー・ファロン

米NBCの深夜番組「Late Night with Jimmy Fallon」の司会を務めるジミー・ファロンについては本連載でもすでに何度か名前が登場しているが、このファロンをNBCが来年から同局の「夜の顔」にあたる「Tonight Show」のホスト役に起用する可能性が高まったことを受けて、業界内や関係者の間ではちょっとした騒動が巻き起こっているようだ。

ファロンの「Tonight Show起用」については、以前から一部で可能性が取り沙汰されていたように記憶しているが、「1992年からTonight Showの司会を続けてきているジェイ・レノとの契約が2014年に期限切れとなることから、それを機にNBCがファロンを夜11時台に昇格させる考え」というNBC関係者の話が先週半ばには報じられて、その可能性がいっきに高まったという印象。

夜のトーク番組はテレビ局各社のメンツがかかる時間枠ということも手伝ってか、The Hollywood Reporter(THR)やAdAgeのような業界紙・誌サイトだけでなく、Walll Street Journal(WSJ)やNew York Times(NYTimes)のような経済紙・一般紙でもこの話題が報じられている。

‘Tonight,’ With New Host, Set to Reclaim Its New York Roots - NYTimes
Fallon to Eventually Inherit 'Tonight Show' - WSJ
Sources: NBC Discussing Jay Leno Exit Plan -
NBC Said to Be Preparing for Fallon as Possible 'Tonight Show' Host - AdAge

ジェイ・レノの「Tonight Show」はいまだに人気が高く、11時台のトークショーではいちばんの視聴率を稼いでいるそうだが、視聴者の平均年齢が高いのが欠点(広告主にとっては18~34歳の視聴者層がいちばん魅力的で、テレビ局としてはその分広告料も高くとれる)。とくに今年に入って、ABCが40歳代半ばのジミー・キンメルの番組「Jimmy Kimmel Live!」を11時台に持ってきてからは若い視聴者がそちらに流れているとされ、NBCでもインターネットーーネット動画やソーシャルメディアとも親和性の高いファロンへの世代交代を……という経緯らしい。

Tonight Showはなんと1954年から続く超長寿番組で、この60年弱の間に登板した司会者はわずか数人。しかもジェイ・レノやその前のジョニー・カーソンのように20年近くホスト役を続けた例もあり、すでに人気者のファロンにとってもこれが非常な大役であるのは間違いない。同時に、ファロンはまだ40歳前と比較的若いので、視聴率さえ維持できれば、この先20~25年くらいは続けても不思議はないとも思われる(60歳になっても、ジャスティン・ティンバーレイクと「ラップの歴史」を披露していられるかどうかは、また別の話だが)。

この関連の話のなかでいかにも米国らしい感じがしたのは、「Tonight Show」をニューヨークに取り戻すための税制優遇法案の準備が同州議会で進んでいるという話。

New York Luring Jimmy Fallon 'Tonight Show' With Special Tax Breaks: Report - THR

この番組、もともとはニューヨーク市内のロックフェラーセンターにあるNBCのなかで収録されいたものが、1972年にロサンゼルスに移って拠点を変え、今日に至っている。だが、現在Late Nightがニューヨークのスタジオで収録されていることに加え、ファロン自身もブルックリン出身(ジミー・キンメルも同様)であることなどもあり、たとえTonight Showの司会に決まってもLAには移らないだろう、というのがもっぱらの見方らしい。

そういう事情を背景に、雇用創出をねらう州議会がかなり具体的な内容の法案を準備している。THRによると、この法案には「過去5シーズン以上にわたって州外で制作・収録されていたトークショウもしくはバラエティ番組で、収録を観にスタジオに来る観客の数が200人以上、1シーズンの制作予算が最低3000万ドル」といった細かな条件がついているという。どのような形で税金の優遇措置が講じられるかは明らかでないが、すでに実施されている同様の例では、制作中にかかった経費の一部について30%が還付される、といったものもあるらしい。同州ではすでにこうした形の税制優遇措置で年間4億2000万ドルを使っており、その結果テレビ・映画関連の雇用数は約13万人(昨年5月時点)、過去10年間にニューヨーク市内で使われた制作関連費用は累計で600億ドルに上ったという。どこまでも雇用と税金がついてまわる、いまの米国の世相が反映されている話である。

追記:

以前に紹介したミシェル・オバマ大統領夫人とジミー・ファロンの「Evolution Of Mom Dancing」はYoutubeでの再生回数がすでに1500万回を超えたらしい。マライア・キャリーとのクリスマスソングが950万回ほどなので、それをはるかに上回ったことになるが、こうした「お茶目なネタ」に織り交ぜて、時々披露する硬派のネタもファロンの魅力の一部かもしれない。下掲のビデオもそんな硬派ネタのひとつーー今年はじめにオンエアされていた「連邦政府債務の上限規制(緩和)」をめぐるスロージャムでゲストとして登場するのは、NBCの看板ニュースキャスターで昨年12月にはアップルのティム・クックCEOとの独占会見も実現させていたブライアン・ウィリアムズだ。


Slow Jam The News: Debt Ceiling


こちらは2010年にジミー・ファロンがエミー賞の司会をつとめた時のオープニングシーン。途中でちょっとだけ顔を見せるティム・ガン(ファッションチェック)まで含め、その年の人気者が勢揃い、といったところである。


62nd Primetime Emmy Awards - Jimmy's Cold Open