待望のバークレイズ・センター(Barclays Center)がブルックリンにオープンし、こけら落としとなるジェイ・Zの8日間連続ライブが先週金曜日(9月28日)に始まった。


[Video: Jay-Z Performs “Where I'm From" “Clique" “3 Kings" & Brings Out Big Daddy Kane - Real Talk NY]

[Jay-Z Opens Up Brooklyn's Barclays Center (Freestyles & Speaks On Opening) 9.28.12 - Real Talk NY]


この晩の盛り上がりぶりは上掲のビデオなどからもよく伝わってくるが、8月半ばあたりから続いてきている関連の報道を目にしていると、東京で言えばきっと「両国国技館と東京スカイツリーが一緒にオープンしたような騒ぎではないか」という気もしてくる。

今回はそんなバークレいズセンターと、その顔となったジェイ・Zにまつわる「数字」のなかから目についたものを紹介する。

152,000人

売り切れとなったジェイ・Zのライブの推定観客動員数。

New York Timesはさすがに「お膝元の話題」とあって、この話題について多角的に詳しく報じているが、そのなかのひとつ——バークレイズ・センターの「多目的ぶり」を伝える詳細な図解をみると、収容人員数について「バスケット・ボールの試合で18,000人、コンサートなら19,000人」とある。つまりこのライブに、多ければ15万人以上(19,000人 × 8回)の観客が足を運ぶという計算になる。

Barclays Center: An Arena With Many Faces - NYTimes

このライブについては、「ステージの構築費用に30万ドルかかった」とか「チケットの半分近くは、ジェイ・Zの意向で29ドル50セントで売り出された」、その一方で「よい席のチケットはダフ屋経由で数千ドルにも跳ね上がった」などの話も出ている。

Opening Night in Brooklyn - NYTimes

なお、バークレイズ・センターのスケジュールをみると、音楽関連だけでも、すでに下記のような感じで超大物アーティストのコンサートが来年春まで目白押し。その顔ぶれもジャスティン・ビーバーから、バーブラ・ストライサンド、そしてボブ・ディランと実に幅広い。これ以外に、ホームチームのブルックリン・ネッツ(NBA)の試合が41回もあるほか、プロボクシングのタイトル戦なども予定されていて、まずは順調な滑り出しのようである。

バーブラ・ストライサンド(10月11、13日)、ラッシュ(Rush、10月22日)、ジョン・レジェンド(10月29日)、ジャーニーw/ パット・ベネターほか(10月30日)、ジャスティン・ビーバー(11月12日)、ザ・フー(11月14日)、ボブ・ディラン(11月21日)、アンドレア・ボッチェリ(12月5日)、レナード・コーエン(12月20日)、グリーン・デイ(1月16日)、レディ・ガガ(3月6、7日)、リアーナ(5月4日)

なお、ネッツは同じニューヨークを本拠地とするニックスとコート上で戦うことになるが、同様にバークレイズ・センターも、ニックスのホーム・コートでもあるマジソン・スクウェア・ガーデン(MSG)との一騎打ちになるらしい。音楽やスポーツ関連のイベント会場として、北米でも最もレート(利用料金)が高いにもかかわらず、年間に400回近くもイベントがあって需要に応えられない状態のMSGの市場をどこまで奪えるかにも注目が集まっているようだ。

Barclays Arena Rivals the Garden's Glow - NYTimes
Brooklyn's New Barclays Center Opens Friday: Will It Give Madison Square Garden A Run For Its Money? - Billboard

49億ドル


バークレイズ・センターを核とする再開発プロジェクトの総工費(概算)。このうち、今回オープンしたバークレイズセンター(アリーナ)は約10億ドルで、プロジェクト運営側が計画の承認を得るために提示した条件に含まれる集合住宅などの建設はこれから。「手頃な価格の住宅を2250室つくり、永続的な雇用を1万人生み出す」という約束を守るべく、今後25年かけて15棟も高層住宅棟をつくっていく必要がある。足かけ9年でやっとバークレイズ・センターのオープンにこぎ着けた不動産開発業者のブルース・ラトナーらにとっては、まだまだこれからといったところかもしれない。

Nets Helped Clear Path for Builder in Brooklyn - NYTimes

また28日には予想通り、この再開発計画に反対する人々のデモもあり、NYPDの警官が警備にあたる姿も見られたとか。


For Brooklyn's New Arena, Day 1 Brings Hip-Hop Fans and Protests - NYTimes

1%の15分の1

ジェイ・Zが保有するブルックリン・ネッツの持ち分。2003年にラトナーが3億ドルでネッツを買収した際、ジェイ・Zは実は100万ドルを出したに過ぎず、その後資金繰りに窮したラトナーが、ネッツの80%をロシア人大富豪のミハイル・プロコロフに譲渡したことで、この持ち分はさらに希釈された。

Jay-Z's contributions have dwarfed the $1 million he invested nine years ago - NYTimes

ただしこの数字の小ささなど問題にならないほどの貢献ぶり(チームのブランディングやロゴ&ユニフォームの決定、さらに自らの40/40 Clubの出店などまで)は誰もが認めるところ。

たとえば、ネッツとバークレーズセンターの運営を取り仕切るブルックリン・スポーツ&エンターテイメント社のCEOであるブレット・ヨーマークによれば、「ニュージャージー時代には年間50万ドルくらいしか売上のなかったグッズ販売が、ジェイ・Zの決めた新しいロゴとユニフォームを披露した4月末にはたった2日半で500万ドルを超えていた。オンライン(ウェブサイト)での注文の数も、初日だけで1,000件に達したが、それまでは年間300件ほどに過ぎなかった」「また、黒&白のユニフォームに当初難色を示していたNBA事務局が結局オーケーを出したのも、ジェイ・Zがデビッド・スターンNBAコミッショナーを説得したからだ」とか。

Barclays Center CEO Brett Yormark on the Brooklyn Brand, Jay-Z, $1 Billion Building - Billboard.biz

「背番号 4」


このユニフォーム、28日にはじめて正式に披露されたが、ジェイ・Zはさっそく背中に「CARTER」という名前(本名ショーン・カーターの姓)、それに「4」の数字が入ったジャージーを着用して登場。この4という数字、ビヨンセの最新版のタイトルにもなっているとおり、ジェイ・Zの誕生日(1969年12月4日)、ビヨンセの誕生日(1981年9月4日)、さらに黒人初の大統領となったバラク・オバマが第44代大統領であることなどにもちなんでいるとか(『ライブ・アット・ローズランド』のステージで、ビヨンセがそんな説明をしていた)。

そういえば、この夫妻、9月18日にはマンハッタンにある40/40 Clubで、大統領選挙を戦うオバマ大統領のために、資金集めのパーティを主催していた(チケットのお値段は「お一人様4万ドル」とか)。前回の選挙でもジェイ・Zがオバマを支持していたり、ビヨンセが大統領就任式のお祝いや舞踏会で歌をうたったり、あるいは今年「産休明け」のライブにミシェル・オバマ夫人と子供たちが姿をみせていたり、という流れを考えるとごく自然なことにも思えるが、それにしても忙しいなかでたいしたもの、と感心してしまった次第である。

Beyoncé and Jay-Z Host Obama Fund-Raiser - NYTimes

追記:あのサイモン・コーウェル(「アメリカン・アイドル」「Xファクター」)とブラック・アイド・ピーズのウィル・アイ・アム(Will.i.am)が組んで、なんと「IT業界版Xファクター」(X Factor for Tech)をやることになったらしい。ビル・ゲイツやマーク・ザッカーバーグみたいな人間が、テレビのオーディション番組で見つかるものかどうか……要注目である。

Cowell and rapper hunt for new Bill Gates - The Sun
Simon Cowell And Will.i.am Are Teaming Up To Create An X Factor To Find The Next Mark Zuckerberg - TechCrunch