世界エンタメ経済学 (2) ジョブズも予想できなかった? 「クール」になったシリコンバレーにハリウッドが秋波を送る日

ニュース
トップ

【コラム】

世界エンタメ経済学

2 ジョブズも予想できなかった? 「クール」になったシリコンバレーにハリウッドが秋波を送る日

三国大洋  [2012/05/11]

2/83

5月下旬に開催されるテクノロジー系の有名イベント「D10」カンファレンスに、『ソーシャル・ネットワーク』の脚本家、アーロン・ソーキンがゲストとして登場することになったという。

You Can Handle the Truth: Aaron Sorkin to Appear Onstage at D10

昨年の第83回アカデミー賞授賞式で脚色賞を受賞したアーロン・ソーキン
MICHAEL YADA / ©A.M.P.A.S.

Dカンファレンスの主催はWall Street Journal(WSJ)系列のAll Things Digital(ATD)というブログで、今年はその10回目だから「D10」。一昨年にはジェームズ・キャメロン監督が呼ばれていたりした「D」カンファレンスなので、ソーキンの登壇自体にはそれほど「違和感」もしくは「驚き」はない。それでも、過去に故スティーブ・ジョブズとビル・ゲイツの「共演」を実現させていたようなバリバリのIT系イベントにハリウッドの人気脚本家が呼ばれる、ということに、米国ビジネス界の今が表れているようでちょっと面白い。

さて。アーロン・ソーキンといえば過去には『ア・フュー・グッドメン』、最近ではブラッド・ピット製作・主演の『マネー・ボール』などを手がけた人物だが、特筆すべきはやはり、アカデミー賞脚色賞を受賞した『ソーシャル・ネットワーク』(2010)であろう。この映画の商業的な成功で、ハリウッド関係者のシリコンバレーに対する態度が変わったという話が、少し前に掲載されたWSJの記事に出ていた。

Entrepreneurs Get Big Break—on Screen

その時々の「花形の世界」を舞台にした作品をつくるのは、ハリウッドのお得意とするやり方のひとつで、古くは80年代の『ウォール・ストリート』(マイケル・ダグラス主演/近年続編もつくられていた)などが代表例といえそうだ。けれども、シリコンバレーは長い間、距離を置かれていた。その理由は「オタクっぽい世界をどう面白いドラマに仕立てるか」「技術的なブレイクスルーといった、映画やテレビを観る一般の人にはわけのわからない話をどう見せたらいいか」といった点についての心配があった、というもの。

ところが世の中(観客側)の変化もあり、そして『ソーシャル・ネットワーク』が大ヒットしたことなどもあって、いまハリウッドではちょっとした「シリコンバレー・ブーム」が起こっている。スティーブ・ジョブズの生涯を描いた作品の企画が2本進行しており、そのうち1本は、アシュトン・カッチャー主演で5月に撮影が始まる。また、Facebookの創業者マーク・ザッカーバーグのお姉さんにあたるランディ・ザッカーバーグがエグゼクティブ・プロデューサーを務めることが決まったテレビのリアリティ・ショー(製作はケーブルテレビ網最大手コムキャスト傘下のブラボー・ネットワーク)や、『マネー・ボール』『しあわせの隠れ場所』などの原作を書いた人気ノンフィクション作家のマイケル・ルイスが、シリコンバレーを舞台にしたテレビ番組の脚本を手がける可能性も……といった話が載っている。

故スティーブ・ジョブズと近しかったベテラン・ジャーナリストが、最近になって「発掘」したという複数のインタビューのテープについて記事にしていた。

Exclusive: New Wisdom From Steve Jobs On Technology, Hollywood, And How "Good Management Is Like The Beatles" (Fast Company)

このなかには、ジョブスが1995年当時に口にしたというコメント——「ハリウッドとシリコンバレーは夜の海上ですれ違う二隻の船みたいなもの。何もかもがすっかり異なる」「両者には世間が考えるよりも共通点は少ない」等々が出てくる。いまの両業界の接近ぶりを見聞きすると思わず「隔世の感」という言葉が頭に浮かんでくる。

ちなみに、前述のマイケル・ルイスという物書きも時代の流れに敏感な人で、振り出しはウォール・ストリート——かつての名門投資銀行ソロモンブラザースの債権取引部門での「丁稚見習い」だった。その経験を活かして書いたデビュー作『ライアーズ・ポーカー』が大ヒット。その後、"ネットバブル"の2000年前後には2つほどシリコンバレーの起業家を主人公にしたノンフィクションも手がけた。そしてネットバブル崩壊でたぶん書くネタに事欠いていたはずの時(2002年)に目をつけたのが、『マネー・ボール』で描かれたMLBオークランド・アスレチックスの快進撃——それをもたらした、ビリー・ビーンというゼネラル・マネージャーとデータを駆使した新しいスタイルの球団経営――だった、と後知恵で言うとそういうことになる。

2/83

インデックス

連載目次
第83回 テイラー・スウィフトが語る「音楽ビジネスの未来」と稼ぎまくる大御所ロッカーたち
第82回 稼ぐ女房と節操のない亭主 - ジェイ・Z&ビヨンセ夫妻の“金”況
第81回 NBAの帝王レブロン・ジェームズも……AppleのBeats買収で一儲けした意外な人々
第80回 サビ残、ピンハネ、セクハラ……NFLで続出する「チアリーダー残酷物語」
第79回 すべては母のおかげ……NBA年間MVPに選ばれたケヴィン・デュラント「涙の受賞スピーチ」
第78回 人種差別発言でオーナー追放、過熱するNBA LAクリッパーズ争奪戦
第77回 NBA最下位のポンコツチームに史上最高5億5000万ドルの買値がついたカラクリ
第76回 映画もサントラも大ヒット -『アナと雪の女王』のイディナ・メンゼル、不遇の下積み時代
第75回 セルゲイ・ブリンの奇妙で哀しい不倫話 - シリコンバレーの恋愛事情Part2
第74回 シリコンバレーの恋愛事情 - 「メディア王」マードックの新しいお相手
第73回 RT数の新記録打ち立てたアカデミー賞の自撮りと、その裏にうごめくサムスンの金勘定
第72回 ジミー・ファロン、米深夜テレビの顔に + NBAでゲイの現役選手ついに誕生
第71回 マックルモア&ライアン・ルイス、シーホークス、T-モバイル…全米を席巻するシアトル勢
第70回 ビル・ゲイツが今最も力を入れているモノとは
第69回 風前の灯火のBlackBerry、キーボード付きiPhoneケースの登場でいよいよ背水の陣へ
第68回 売り上げ新記録樹立! 全世界を驚かせたビヨンセの奇襲作戦とは
第67回 ベンチャーキャピタルでインターンをする現役NBA選手がいるって本当?
第66回 玉の輿なるか? エヴァ・ロンゴリアの新しい彼氏に注目
第65回 日本とは桁違いのハリウッド・ママタレ事業 - ジェシカ・アルバの場合
第64回 NFLでも”かわいがり”? 米プロフットボール界に急浮上した「イジメ問題」
第63回 アイアンマンは香港ディズニーランドを救えるか
第62回 ケイト・アプトン、テイラー・スウィフトも所属…米大手タレント事務所の争奪戦が勃発
第61回 中国一の大富豪が巨大映画テーマパーク建設…その驚愕の中身とは
第60回 アメリカ公民権運動に見る、政治と音楽の深いカンケイ
第59回 ウォズニアックも酷評! アシュトン・カッチャー主演の「ジョブズ映画」が大コケ
第58回 クリス・ブラウンの引退示唆、リンジー・ローハン低予算問題作公開
第57回 "セクスティング"で失脚したウィーナー元議員、恥ずかしい偽名で返り咲き
第56回 全米ヒットチャート快走中! ロビン・シックの愛妻家ぶりに脱帽
第55回 ヒラリー・クリントンのビックリ講演料と元政治家のギャラ相場
第54回 ジョニー・デップがっかり…『ローン・レンジャー』に米メディアが大コケ予測
第53回 英米No.1カニエ・ウェストの新アルバム、驚愕の制作舞台裏
第52回 ブラピがヨーデルで捨て身のPRに挑んだゾンビ映画と興行収入の話
第51回 突き抜けっぷりが清々しいカニエ・ウェストのオレ様語録とジェイ・Zのたくましい商魂
第50回 「Hulu」争奪戦に名乗りを上げた米エンタメ業界の大物たちと今後の展望
第49回 マイケル・ダグラスとマット・デイモンがゲイカップルに…話題の問題作が間もなく封切り
第48回 Dr.ドレらが米大学に7000万ドル寄付、起業家育成に意欲
第47回 NBA現役選手の同性愛告白をめぐる反応と課題〈後編〉
第46回 NBA現役選手の同性愛告白をめぐる反応と課題〈前編〉
第45回 ニューヨークのバスケットボール狂騒曲と「背番号42」の重み
第44回 J・ティンバーレイクも教材に?ホワイトハウスで学ぶ音楽と国の歴史
第43回 TIME誌が選ぶ「世界最強のカップルたち」の意外性
第42回 ”ケネディ王朝のお姫様”が次期駐日大使の最有力候補に
第41回 奥様は元スーパーモデル…史上初の快挙遂げた弱小大学チームのヘッドコーチに全米が注目
第40回 ジミー・ファロン「昇格」の噂で激震走る米ショウビズ界とビッグ・アップル
第39回 ラップもお笑いもイケるジャスティン・ティンバーレイクの底力
第38回 米国震撼のサイバーテロと驚愕の全米DQNネーム事情
第37回 信じられない年俸額!米強豪大学フットボールチームのヘッドコーチたちのセレブぶり
第36回 ミシェル・オバマのノリの良さに見るアフロ・アメリカンの系譜
第35回 ”神様”に”王様”も集結、NBAオールスター戦ヒューストンの豪華すぎる週末
第34回 グラミー賞で「大人」をアピールした新生J・ティンバーレイク
第33回 ビヨンセの「口パク」騒動に決着か - 米国歌斉唱をめぐる今昔のドラマ
第32回 ビヨンセにゲイの詩人…就任式の人選に表れたオバマ大統領の周到な目配り
第31回 落ち目の女優とスタッフが集結! リンジー・ローハン主演『キャニオンズ』制作の舞台裏 - 後編
第30回 落ち目の女優とスタッフが集結! リンジー・ローハン主演『キャニオンズ』制作の舞台裏 - 前編
第29回 ウィル・アイ・アムが「大企業から引っ張りだこ」である理由
第28回 ビヨンセとペプシの「5000万ドル契約」に思わぬ難題
第27回 ドジャースとフォックスの計画にMLBが「もっと利益をよこせ」と物言い
第26回 思わずハマる、米国オモシロ最先鋒 ジミー・ファロンの「ダサかっこよさ」
第25回 ジョニー・デップの次回作は「シンギュラリティ」がテーマ?
第24回 米国の次期駐英大使候補に浮上したアナ・ウィンターの「選挙貢献度」
第23回 ビヨンセのセルフ監督ドキュメンタリーと加熱するNYバスケ事情
第22回 25年間で60億~70億ドル? プロスポーツ放映権料が高額になる理由とは
第21回 巨額のカネが動く放映権事業 - 米プロスポーツ中継をめぐる二都物語
第20回 オバマ再選にも寄与したサラ・ジェシカ・パーカーの影響力 - 米中政治と芸能の四方山話
第19回 オバマ大統領再選! 強力すぎる支持者による「最後のお願い」が決定打か
第18回 ハリケーン・サンディの被災者支援に結集した大物アーティストたちの共通項
第17回 有名人の「お買い物」でわかるIT、ショウビズ、政治の地図
第16回 オバマ大統領のホワイトハウスは「娯楽の殿堂」
第15回 坊主頭は成功への近道? キングメーカーとなったJ・カッツェンバーグ
第14回 ジェイ・Z、ビヨンセ、ブルックリン・ネッツにまつわる「4つの数字」
第13回 「アメリカン・アイドル」VS.「X ファクター」のヘッドフォン戦争勃発
第12回 ジャスティン・ティンバーレイクもNBAチームのオーナーに
第11回 ライアン・シークレスト、「メディア帝国」実現に向けて正念場に
第10回 同性愛告白であわや破産から15年…「トーク番組の新女王」になったエレン・デジェネレス
第9回 Google会長の豪邸にキム・カーダシアンの呪い
第8回 NBAの"聖域"もついに陥落か - 「広告塔」としてのスポーツチーム
第7回 ジェイ・Zの舌を巻く商才(後編) - ブルックリン・ネッツの全てを掌握した日
第6回 ジェイ・Zの舌を巻く商才(中編) - NBAをめぐる富豪たちのマネーゲーム
第5回 ビヨンセの夫、ジェイ・Zの舌を巻く商才(前編)
第4回 レディー・ガガ以上に荒稼ぎする"青年実業家"ライアン・シークレストの光と影
第3回 "審査員"ブリトニー・スピアーズの誕生とアメリカン・アイドルの凋落 - 米オーディション番組の今
第2回 ジョブズも予想できなかった? 「クール」になったシリコンバレーにハリウッドが秋波を送る日
第1回 アシュトン・カッチャーに代表されるセレブのサイドビジネス

もっと見る

関連したタグ

写真で見るニュース

特別企画

一覧

    人気記事

    一覧

    イチオシ記事

    新着記事

    [鬼灯の冷徹]作者体調不良で隔週連載に 「モーニング」の人気マンガ
    [00:00 7/31] ホビー
    【レポート】2014年夏版、注目したい&買ってみたいWindows PC - 11型~14型コンパクト&モバイルノートPC編
    [00:00 7/31] パソコン
    【レポート】KDDI、第1四半期決算は増収増益 - 2期連続2桁成長へ、田中社長「非常に順調です」
    [22:55 7/30] 携帯
    首位湘南が初のドロー、2位松本は6試合負けなし/J2第24節
    [22:40 7/30] ライフ
    あさりちゃん新作!前身作品も収録の作品集
    [22:28 7/30] ホビー

    本音ランキング

    特別企画

    一覧