聞き取れないのは"慣れていない"から

おそらく本稿の読者のみなさまは、仕事柄、英文記事や英文ドキュメントを読む機会が多いでしょうから「読むのはなんとかなっている」という方は多いのではないでしょうか。ところが「聞く」となるとそうはいかず、とくに、ネイティブスピーカーが雑談をしているところに加わるなんて「考えられない!」という状態かもしれません。今回は「読めるのに聞き取れない」場合はどうしたらいいか、という話をしましょう。

聞き取れない理由はなんといっても音に慣れていないからです。リスニングは聞いている時間が長ければ長いほど、確実に上達します。米国に住んでいる日本人なら、聞き取り能力の差はあるかもしれませんが、誰もがリスニングが上達したと感じているはずです。喋ることも書くこともさほど上達していなくても、頻繁に英語を聞いているだけでリスニングはできるようになります。たとえ英文が読めなくても、リスニングの能力は向上します。英語を聞き取れるようになりたいと思ったら、とにかく英語を聞く時間を増やしてみてください。

それでは、リーディングの努力はリスニングの能力を向上させるという意味ではムダなのでしょうか? リスニングには

  • 仕事などアカデミックな内容を聞き取る
  • 日常会話を聞き取る

の2つのケースがありますが、前者はボキャブラリを増やす意味でリーディングは必要です。外国語の理解には母国語でかまわないので概念をもっていることが基本になります。たとえ英語でも、状況や話の流れから相手が何を言おうとしているのかがわかる場合は英語も聞き取れる、という経験をもつ方は多いはずです。

問題は、正しい発音で単語を覚えているかという点です。せっかく単語を覚えても、間違った発音で覚えていてはリスニングの役に立ちません。単語とその正しい発音を覚えたい場合にESLの先生が勧めていたのは、Audio CDを聞きながら本を読むことでした。これなら、わざわざ辞書を引いて発音記号を眺めて、正しそうな音を想像する必要もありません。英語のリズムにも慣れるので、リスニング力アップにつながるはずです。書籍販売のWebサイトでAudiobooksのカテゴリを探すと、いろいろな本がAudiobooksとして出版されているのでご覧になってください。米国では車を運転しながらこういったCDを聞く人が多いようで、多数のAudibooksが出版されています。iPodのようなガジェットにAudiobookを録音して、いつでも聞けるようにしてみてはいかがでしょうか。

Active Listeningの重要性 - 聞きっぱなしでは伸びません

そして、リスニングで重要だと言われているのがactive listeningです。ただ単に聞き流すだけではなく、何の話だったかをまとめてみたり、自分はどう思うのかを述べたり、アクションを書き出す、といったことを行います。「English Listening Tips – ActiveListening」にはactive listeningのために何をすればいいかの解説がありますので、機会があったら試しててみてください。聞いているだけでは頭に残らない単語や音も、振り返って復習する機会を作ると、かなり覚えていられるようになります。

日常会話のリスニングを向上させたいと思ったら、ニュースや映画のように原稿どおりに間違えないで話が進む会話ばかりではなく、普通のネイティブスピーカが話す英語も聞いてみるのが一番です。私がお薦めしたいのは、NPRの"Car Talk"のPoscastです。Car Talkは2人のホストが電話で車のトラブルに対処するという番組で、ごく普通の、多数の米国人がそれぞれに自分の車のトラブルを説明してくれます。ニュースキャスターに比べると圧倒的に早口ですし、クセもあり、正しい英文法じゃなかったり、口語表現だったりして、慣れるまでは何を言っているのかさっぱりわからないかもしれません。しかし、この番組はホストの2人が笑いを交えて楽しく聞けるようにしてくれていますし、電話をかけてくる人によっては、車から出てくる異音を真似てくれるので飽きません。

さて、この番組を聞いていると日本車の名前もよく登場するのですが、正しい発音で単語を覚えているかが試されるところでしょう。"すぶるぅう"と誰かが言ったら、これはSUBARUですし、HONDAは"はぁんだ"です(韓国車の"はぁんだい(日本ではヒュンダイ)"と似ているので注意)。このような発音を知っていれば何の話をしているのか想像できますが、知らないとそこで話についていけなくなってしまうかもしれません。

アカデミックなリスニングと違い、日常会話のリスニングはリーディングから学べることは少ないでしょう。聞きながら、よく登場する言い回しや単語のパターンを覚えたり、verb + prepositionの使い回しを習得したりしながら徐々に慣れていくしかないと思います。リスニングで重要と言われているactive listeningには興味を持って聞くことも含まれますので、自分が面白いと思える内容を選んで聞くようにするとよりリスニングの能力が向上するのではないでしょうか。

リーディングはボキャブラリビルディングには必要ですが、リーディングだけでリスニングの能力も向上させようとするには無理がありますので、ぜひ、音を聞いてください。聞き続けているうちに、ジョークも理解できるようになって、映画の字幕を見て笑う人よりも、先に笑えるようになるのではないでしょうか。