新語到来!? いえいえ、前からある言葉です

日本、とくにインターネットを中心とするコミュニティには、頻繁に新しいカタカナ言葉が流入してくる実感をもっている方は多いのではないでしょうか。ならば、そういった言葉の発信地の代表である米国なら、きっと新しい言葉がどんどん生まれているはず…と思いませんか。残念ながらその期待に反して、あまりないのが現状です。なぜかというと、おそらく、もともとが英語なので、新しい言葉ではなく、すでにある言葉の中から最もふさわしいと思われるものがあてはめられているからでしょう。

一方、新しい概念に関係する言葉は、日本にやってくると訳さずにカタカナで表現されることが多いので、新しく作り出された言葉のように見えるのではないかと思います。訳さずに使われているカタカナ語やプログラミングの世界で使われている英単語の中には、本来とはちょっと違う意味が普及してしまっていることもよくあります。私は米国にやってきてから、「その単語は本当はそういう意味だったのか!」と誤解に気づくことがよくあります。そこで今回は正しい意味と用法を知って、ボキャブラリーを向上させる話をしましょう。

英英辞典で単語そのもののイメージを掴む

単語の正確な意味と用法を知るには良い辞書は必須です。読者のみなさまはどんな辞書をお使いでしょうか。私が今、主に使っているのはESLの先生に勧められた「Longman Advanced American Dictionary」です。この辞書を入手する以前から電子辞書を含め、いくつか持ってはいたのですが、日本の英語はBritish Englishなので米国で使われている英語と同じではありません。同じ単語でも意味が違うこともあり、不便を感じて改めて入手しました。

たとえば、マウスリンスや水などを口に含んでぐじゅぐじゅするあの動作には"swish"という動詞を使いますが、この意味はAmerican Englishの辞書にしかでていないようです。辞書は改めて購入しなくても、今ならインターネット上に公開されているものがいくつもありますので、そういった辞書を利用するといいでしょう。とくに「Cambridge Dictionaries Online」は便利です。American Englishの辞書もあるので、米国人が書くブログや記事を読むときにも、この辞書を使えば誤解なく読めますね。

Cmabridge Dictionaries Onlineはレベルに合わせていくつかの辞書が用意されている。デフォルトは"Advanced Learner's Dictionary"。定義や用例などもわかりやすく、英英辞典に慣れるのにも最適

ではさっそくCambridge Dictionaries Onlineでいま流行の"chasm"という単語を引いてみましょう。「岩などの裂け目」と「グループ間の意見の大きな食い違い」という2つの意味が出ています。キャズムは日本ではマーケティング用語に分類されることが多いですが、英語圏ではマーケティングだけではなく一般的に使われている言葉です。たとえば、1つ目の物理的な裂け目やクレータの意味で、火星の表面にある筋をchasmと表現します。「Image of the Day:Chasm of Mars」ではまさにこの意味で使われています。また、NPRの番組で放送された子供達の心のケアに携わっている方へのインタビューでは、とあるケースについて「子供にはchasmがあったが、それはnarrow chasmだったので容易に越えられた」という表現が使われていました。

Cmabridge Dictionaries Onlineで"chasm"を引くと……

定義が2つ示された。どちらも「隔たっている」ことを連想させる

ソフトウェアの世界だけで使われる用語に聞こえる単語も、ほとんどが一般的に使われている言葉のソフトウェアへの流用です。たとえば"compile"ですが、コンパイルと聞けばプログラムをコンパイルして実行形式に変換することかと短絡して考えがちです。が、実際には「調査結果をまとめる」というコンテクストでよく使われています。実際、リサーチペーパーを書いているときに"compile"という言葉をよく聞きました。また、Webアプリケーションの脆弱性に"vulnerability"という用語を使いますが、家庭内の問題を表現するときにもvulnerabilityですし、"property"と言ったら主に個人所有の土地を意味しています。Java言語の有名なビルドツールに"Maven"というものがありますが、"an investment maven"という表現を見て、私は初めてmavenは人であることも知りました。

プログラミングのkey termsもたいていは一般的に使われている単語です。かつて私は、"void"という単語をプログラムの中でしか使ったことがありませんでしたが、米国にやってきて以来、日常の生活で使う単語に変わりました。米国では支払いにチェックをよく利用しますが、チェックに記入した金額を間違えていたときに「そのチェックをvoid(無効)にして、新たに書き直す」という用法を学びました。"void"のハンコがぺたんを押されて返ってきたチェックを見ると、なんとなくうれしくてとっておきたい気分になったものです。また、"nil"を辞書で調べると

He went to a dating service in September because his social life was nil.

のような例文があり、「この感じがnilなのだな」と思うとプログラムがこれまでと違って見えてきます。

メールボックスのフラグが立たないんですけど

さて、言葉ではありませんし、日本にやってきたときに変わってしまったものでもありませんが、ソフトウェアの世界でお馴染みの"mailbox"のフラグが実際の使い方と違うことはご存知でしょうか。

Webメール流行している今では、電子メールが届いたときにmailboxのフラグが立つアイコンは珍しくなってしまいましたが、ちょっと古くから電子メールに親しんでいた方なら自分のデスクトップのアイコンのひとつだったのではないかと思います。

米国の郵便受けはまさにあの形をしていてフラグもあります。ただし、フラグはこれから郵送したい郵便物を自分の郵便受けに入れてある場合に立てておくのです。するとUSPS(The United States Postal Service)の配達人が回収して宛先に配送してくれる仕組みになっています。つまり、配達人がやってきたあとはフラグが下がっていて、たいていは配送された郵便物がポストに入っているんです。「フラグが立っている=まだ郵便配達人が来ていない」と判断できるわけです。米国にやってきた当初はなぜウチの郵便受けのフラグは立っていないのか、これはどういうときに使われるのかが疑問でした。mailboxは受け取るだけではなく、出すのにも使うのでした。

英単語はわざわざ英文を読まなくても、ソフトウェアに係わっていればどこででも見かけます。カタカナ語にしてもプログラミングのkey termsにしても、オリジナルが英単語だったらまずは辞書を引いてみてください。意外な発見があると同時に自然にボキャブラリが増えていくのではないでしょうか。

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