え、スライドを見ない!?

前回はテクニカルな内容のスピーチを2つ紹介しましたが、うまく聞き取れたでしょうか? 英文法の知識を使って英文の構造を掴みとること、英語らしい発音とリズムに慣れること、この2つができたら、もう一歩進んでスピーチ全体を理解することにチャレンジしてみましょう。

英語のスピーチを聞くときに、ぜひ試してほしいのはスライドに頼らないことです。英語には自身がないから、大切なことを聞き逃してはいけないから……と、何かと理由を思いついてはスライドを隅から隅まで読んで話を聞きがちですが、この姿勢はいけません。スライドに頼りたい気持ちは十分わかるのですが、見るほうに気をとられると、リスニングはどうしても疎かになります。ネイティブスピーカーである米人でも、文字がびっしりのスライドを使いながら話をするインストラクターに対し、「話を聞きながらスライドを見て、話を聞いて、またスライド…なんでできない」ともらしていました。ちらりと見れば、すべての文字を把握できる程度のスライドなら問題ないのですが、文字を追いかけないといけないなら、読まずに耳に頼るほうが早いかもしれません。

たとえばProject Looking Glassのビデオで、画面を見ながらリスニングした場合と、目を閉じてリスニングに集中した場合、どちらが話の内容を理解できるかを比べてみてください。このビデオに文字はほとんど出てきませんが、つい見とれてしまう画面の連続です。画面の動きは理解を助けてくれるかもしれませんが、「見る」と「聞く」を両方同時に行うのは難しいのではないでしょうか。余談ですが、このビデオに登場している川原英哉氏が話す英語は日本人にはとてもわかりやすいですね。英語はとても上手な方ですが、リズムや発声される音、とくに母音が日本的だからだと思います。

話の変わり目(tansitions)を聞き逃さない

次にお薦めしたいのはスピーチの構成、とくにthesisやmain pointsを聞き取る努力をするという点です。英語のスピーチはライティング同様、thesis statementがイントロダクションの中にあり、thesisを支える複数のmain pointsがパラグラフに相当する部分にあります。パラグラフに相当する部分は一般的にこれからこういう話をしますというmain pointは何かを明らかにする文章で始まっています。そして、最後にはconclusionがあって終わりです。第4回で紹介したSteve Jobs氏のスピーチはテクニカルなテーマではありませんが、構成がきちんとしていてとてもわかりやすいのでこれで説明しましょう。

第4回でも触れましたが、まずJobs氏は冒頭で

Today, I want to tell you three stories in my life.

とthesisを述べています。ビデオが始まってから45秒後くらいに、

My first story is....

と最初のmain pointを簡潔に述べて詳細に入ります。5分25秒後くらいには

My second story is....

そして、8分55秒後くらいには

My third story is...

と3つのmain pointsとそのはじまりをはっきりとわかりやすく話しています。Jobs氏も使っている「first, .... second, .... third,....」のような順番を表す言葉はリスナーに「transitions(話題の移り変わり)をsignalする」ためによく使われます。このほかにも「Let's....」や、話の内容によっては「In addition」などもtransitionsをはっきりさせるために使われます。各main pointを理解するためにはこのようなtransitionsを聞きもらさないようにしたいものです。

さらに、Jobs氏のスピーチは3つのmain pointsの詳細がいずれも"chronological order"と呼ばれる時系列で並べた構成になっていて、リスナーが迷子にならないようにしっかりとガイドされています。このchronological orderの構成のおかげで、conclusionが始まったことをsignalするのに、Jobs氏は「To conclude」や「To sum up」のような平凡な言葉を使っていません。約12分40秒後に表れる

When I was young,...

がそれです。これまで時系列に話が進んでいた、リスナーはさらに新しい話を期待していた、ところが急に時間が逆戻りするので、「あれ!? そうか、話は3つ出てきたし、ここがconclusionだな」とわかるように構成されています。

「ポイントと結論探し」のトレーニングを続ける

例に取り上げたJob氏のスピーチはセオリーどおりの構成でとてもわかりやすいのですが、テクニカルな話題のスピーチだからといって必ずしも同様の方法がとられているとは限りません。傾向として、テクニカルな話題のスピーチは詳細な説明がとても多く、それにひきずられた結果、thesisやmain pointsが何だったのか、「聞いたはずなのに覚えていない!」という状況に陥りがちです。

前回紹介した"Core Patterns for Web Permissions"のスピーチはmain pointsがいくつあって、それが何なのか、把握するのは難しいほうでしょう。たしかに最初にmain pointsは何か、という話はしているのですが、説明をたくさん加えてくれているので、逆に構成を頭の中で組み立てにくいのではないでしょうか。木を見て森を見ず…とならないように、main pointsが何なのか、スピーカーが主張したいポイントはどこなのか、といったことを念頭において聞き取る努力をしてみてください。

テクニカルなスピーチを英語で聞くのは楽ではないかもしれませんが、興味があり、基礎知識もあるから聞いてみたいと思っているはずです。英文法、リズム、発音、構成とちょっと大変かもしれませんが、これらの聞き取りのポイントを抑えてトライしてみてください。

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