とにかく最初が肝心! 主語(S)と動詞(V)を聞き分けるべし
「リスニングだけはできるようになった」-- 米国に滞在している日本人が自分の英語力について感じるのはコレです。何年米国に住んでいても日本語がだめになっていくだけで、英語をすらすらとしゃべれるようにはならないし、読むのも苦手……これが日本人の実態ではないかと思うのですが、それでもリスニングだけはできるようになるものです。英語に触れる機会が極端に少ないはずの駐在員の奥さまたちですら、例外ではありません。リスニングはトレーニング次第でいくらでも上達可能です。が、忙しい日々の中で、そうそう英語ばかり聞いているわけにもいかないでしょう。今回は何に気を付けて英語を聞くようにするとよりリスニングが上達するのかについて話をします。
「リスニングでは文法力が試されている」と聞いたことがあるでしょうか? 英文法と言えば日本人が一番得意としている分野ですが、その英文法を理解すること=リスニング上達のコツだということに気づいていましたか? 英文法の中でリスニングの役に立つのは文章構造、いわゆるSV、SVOなどの構文です。誰が(何が)どうしたのか、という文章の中心となる骨格を聞き取れるようになると、話の内容をより理解できるようになります。英語の場合、主語はたいてい文頭にあるので、文章の最初の部分をとくによく聞き取る努力をすると効果的です。
得意の文法力をリスニングに生かす
といってもいきなり英語のスピーチを聞きながら「主語は…、動詞は…」と捜し出すのは難しいでしょうから、まずはNPRのPhishing' Scammers Try New Tacticsの記事を聞いてみることにしましょうか。この記事はNPRにしてはめずらしく話の内容がWebサイトで公開されていますので、自分の理解が正しいかどうかも確認できます。加えて、NPRのキャスターが話す英語はゆっくりで、はっきりしていてとてもわかりやすいので、入門編として最適です。
さて、冒頭の部分はWebサイトにないのですが、
One of the things that computer have made easier is giving your bank account number and password to the wrong person.
と言っているのがわかったでしょうか。「One of the thingsはgivingである」という文章の骨格を掴めると、それ以外の部分は骨格に肉付けされているところとなり、単語のグルーピングができて、全体の意味を把握しやすくなります。インタビューの後の、
London had recently....
から始まる文章はとくにわかりやすいので、主語、動詞、文章の切れ目に注意して聞いてみてください。一度では無理でも、2、3回試してみると内容を把握できるようになると思います。
NPRの記事で文章の骨格を掴む練習をしたら、次はスピーチでも聞いてみましょうか。ここで紹介するのはSteve Jobs氏がスタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチのビデオです。Jobs氏の英語はかなりわかりやすいのですが、それでもNPRのキャスターに比べると難易度が上がります。
Jobs氏は
I'm an honor to be with you the day of your commencement for one of the finest universities in the world.*
という、お祝いの言葉でスピーチを始めています(* 多少の間違いは御容赦ください。私もただ今、英語勉強中の身ですので)。この文章の骨格はもちろん"I am an honor"で、まずはおめでとうと言いたいことがわかります。その後、ちょっとしたジョークを言い、
Today, I want to tell you three stories in my life. That's it, not a big deal, just three stories.
と続いています。ここは簡単ですね。さらに、この部分はリーディングで取り上げたthesisにもなっていますが、今回は文章構造に注目、ということで、"I want to tell you three stories."がわかれば十分です。Jobs氏がこれから何をしたいのかがはっきりしました。
リスニング力アップを目指すといっても通常は翻訳をするわけではないので、一字一句すべてを聞き取れなくても内容さえ把握できればいいはずです。WH questionsを頭に思い浮かべ、文章の切れ目と主語、動詞を聞き取る努力をすると効果があるのではと思います。聞きやすい英語をしゃべってくれる人を見つけるてトレーニングするのもコツでしょう。
文法力以外にも、リスニング上達のためにはボキャブラリやスピーチの構成を理解することなどもコツのうちですが、これについては次回にしたいと思います。