【コラム】

経済ニュースの"ここがツボ"

73 米大統領選の世論調査、トランプ氏が上回る - 株価下落・円高が現実に!?

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米大統領選について本連載の前号(11月1日付け)で、トランプ氏がクリントン氏を急追していると書いたばかりですが、ついにトランプ氏がクリントン氏を上回る世論調査結果が出てきました。

米紙ワシントンポストとABCテレビが1日に発表した世論調査結果によると、共和党候補ドナルド・トランプ氏の支持率46%、民主党候補ヒラリー・クリントン氏が45%で、トランプ氏が1ポイント上回りました。同調査の前回(10月30日発表)の結果はトランプ氏45%、クリントン氏46%で、トランプ氏が1ポイント差まで接近していましたが、今回逆転したことになります。

今回の調査は、FBI(米連邦捜査局)がクリントン氏のメール問題の再捜査を発表した10月28日を挟む27~30日に実施されたもので、やはりメール問題が大きく影響したことがうかがえます。

市場にも衝撃

この結果は市場にも衝撃を与えました。1日のNY株式市場ではダウ平均株価が105ドル安と、最近では久しぶりの3ケタの下げとなり、水準も1カ月半ぶりの安値となりました。為替相場は円高・ドル安に振れています。1日のNY市場では1ドル=104円10~20銭で取引を終了したあと、2日の東京市場では103円65銭とさらに円高となりました。一日で1円40銭程度も円高が進んだことになります。

トランプ氏の支持率がクリントン氏を上回ってから1カ月半ぶりの安値

トランプ氏の支持率がクリントン氏を上回ってから円高進む

トランプ氏の支持率がクリントン氏を上回ったことは、日本の株価にも影響が及びました。NY株の下落や円高を受けて、2日の日経平均株価は300円を超える下げとなりました。下げ幅は8月3日以来、約3カ月ぶりの大きさです。本連載の前々号(10月18日付け)で「トランプ勝利なら株価急落、円高・ドル安のおそれがある」と書きましたが、早くもその動きが出始めたと言えます。

日経平均株価にも影響

もしトランプ氏が勝利した場合、同氏の保護主義的な政策や排外主義は米国経済にとってマイナスになる可能性が高いため、株価下落要因となり、為替市場ではドル安要因となります。米国だけでなく世界経済にとっても波乱要因となるため世界的に株価下落が広がる懸念があります。

日本はドル安・円高という経路を通じて、より株価下落の影響を大きく受ける可能性があります。トランプ氏勝利はドルの信認低下につながりドル安となるのですが、もう一つ注意すべきは「リスク・オフ」の円高です。世界の多くの投資家がリスクへの警戒を強めて投資に慎重になることを「リスク・オフ」と言い、リーマン・ショックやギリシャ危機などの際に見られた現象です。そのような時、投資家は資金をより安全な運用先に移そうとしますが、その有力な受け皿となるのが日本円なのです。日本が投資家から高く評価される結果、円高が進むという皮肉な現象が起きるわけです。トランプ氏勝利は‟リスク・オフの円高”につながる可能性があることを念頭に入れておく必要があります。

ただ今のところ、他の多くの世論調査ではまだクリントン氏の支持率のほうが上回っています。米の政治専門サイト「リアル・クリア・ポリティックス」が集計した主要世論調査の平均値では11月2日午後8時(日本時間)現在、クリントン氏の支持率47.2%、トランプ氏45.5%で、クリントン氏が1.7ポイントリードしており、全体としては依然としてクリントン氏が優勢と見ていいでしょう。

しかし両者の差は日を追うごとに縮まっているにも事実です。前号で見たように、10月31日現在で両者の差は3.9ポイントでしたから、すでにその差は半分程度に縮まっているわけです。

投票日まであと1週間足らずとなり、今後の展開はますます読みにくくなりました。過去の事例を見ると、投票結果が世論調査通りにならなかったケースもありますので、ここは注意深く冷静に見守るしかないようです。市場も神経質な動きが続きそうです。

執筆者プロフィール : 岡田 晃(おかだ あきら)

1971年慶應義塾大学経済学部卒業、日本経済新聞入社。記者、編集委員を経て、1991年にテレビ東京に異動。経済部長、テレビ東京アメリカ社長、理事・解説委員長などを歴任。「ワールドビジネスサテライト(WBS)」など数多くの経済番組のコメンテーターやプロデューサーをつとめた。2006年テレビ東京を退職、大阪経済大学客員教授に就任。現在は同大学で教鞭をとりながら経済評論家として活動中。MXテレビ「東京マーケットワイド」に出演。

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インデックス

連載目次
第91回 28日衆院解散 - 消費増税などが争点、一転して「自民vs小池新党」の構図に
第90回 米債務上限引き上げ・デフォルト回避で安心感 - しかしトランプ大統領と身内・共和党の溝広がる
第89回 トランプ政権は崩壊寸前!? 米政治不安で株安・円高か - バノン氏解任で政策修正の期待も
第88回 日本橋の高速道路を地下化が具体化 - 都市景観を改善、周辺の再開発と連携
第87回 選挙で明暗分かれたイギリスとフランス - イギリスのEU離脱の行方は混迷
第86回 G7で亀裂を呼んだトランプ大統領 - ロシアゲートで前途に暗雲
第85回 フランス大統領にマクロン氏、ポピュリズム拡大にひとまず歯止め - 新政権のカギは経済立て直し
第84回 フランス大統領選"3度目のまさか"は避けられた - 安堵感広がるが、なおリスクも
第83回 英国がEU離脱を通知 - 交渉は難航か、スコットランドなど国内にも火種
第82回 オランダ総選挙の次はフランス大統領選 - 欧州の政治リスクは続く
第81回 トランプ大統領に批判集中だが、NY株価は11日連続で史上最高値
第80回 “日本批判”を封印した日米首脳会談に安堵感
第79回 トランプ大統領の日本批判は事実誤認--だが日本経済は逆風に耐える力あり
第78回 トランプ次期大統領の矛先がトヨタへ - 2017年は保護主義、ポピュリズムの「懸念」が「現実」に?
第77回 トランプ新大統領を迎える米国を現地取材 - やはり根強い批判、しかし景気は予想以上に好調
第76回 Brexit、トランプの次はイタリア・ショック!?--欧州経済危機再燃の恐れも
第75回 "トランプ大統領"で株高・円安いつまで?--景気には期待、保護主義には警戒
第74回 トランプ大統領の衝撃--保護主義が最大の懸念だが国内経済政策には期待も
第73回 米大統領選の世論調査、トランプ氏が上回る - 株価下落・円高が現実に!?
第72回 米大統領選はどうなる!? 大詰めで波乱 - 市場は「トランプ大統領」を警戒
第71回 米大統領選が終盤戦 - 苦しくなったトランプ氏、浮かび上がった3つの問題点
第70回 現地で見た”Brexitショック”のその後(下) - スコットランド独立? 北アイルランドも!?
第69回 現地で見た"Brexitショック"のその後(上) - 予想外に活気があった英国
第68回 リオ五輪のメダル最多で、景気は本格回復!? 五輪と景気の意外な関係
第67回 28兆円の経済対策と内閣改造 - アベノミクス再強化でデフレ完全脱却めざす
第66回 トルコのクーデター未遂事件の影響は? 中東安定、難民問題、欧州経済の鍵
第65回 参院選の与党勝利はアベノミクスへの信任--脱デフレへ10兆規模の経済政策
第64回 英国EU離脱ショックはリーマン・ショック級--欧州統合は空中分解のおそれ
第63回 英国がEU離脱なら株安・円高進行のおそれ
第62回 消費増税を延期した本当の理由 - 経済成長なしに財政再建はあり得ない
第61回 伊勢志摩サミット、注目は"財政出動"--終了後に消費増税延期を正式決定か
第60回 急激な円高・株安はなぜ起きたか - 米大統領選も円高要因に?
第59回 セブン&アイ鈴木会長、突然の退任に波紋 - セブンは強さを維持できるか
第58回 公示地価は全国平均で8年ぶり上昇、地方圏も底上げ--資産デフレ脱却へ前進
第57回 自動車・電機など賃上げ低水準、景気浮揚には力不足 - 消費増税延期の後押し材料に?
第56回 "トランプ旋風"いつまで続くか - 世界経済にマイナスの影響のおそれ
第55回 シャープが台湾・鴻海の傘下入りで再建の行方は? - 創業者・早川徳次の不屈の精神を取り戻せるか
第54回 株安・円高が加速 - 主な原因は海外だが……
第53回 マイナス金利の影響早くも広がる - 預金金利引き下げなど続々
第52回 マイナス金利を導入したのはなぜ? - 景気回復が期待できる4つの経路
第51回 原油安で"イランつぶし"を狙ったサウジの戦略は変化するか?--減産の兆しも
第50回 原油安はいつまで続くのか!?--サウジVSイランで減産どころかシェア争いも
第49回 2016年、日本経済はどうなる?--"景気回復続く"4つの理由、消費増税再延期も!?
第48回 2015年の世界経済、救ったのは"米国"--2016年はギリシャ、原油安など要注意
第47回 パリの同時テロ、低迷する欧州経済に追い討ちか--"移動の自由"はどうなる!?
第46回 幕末の「薩長土肥」に学ぶ地方創生のヒントとは!?--日本は今"第2の明治維新"
第45回 中国やブラジルなど新興国はなぜ変調?--今や"世界経済最大のリスク"に
第44回 消費税の軽減税率、安倍首相は財務省に不信感--再増税自体の先送りも?
第43回 ノーベル賞日本人2人受賞の快挙が示す日本の底力
第42回 VWは不祥事の"典型"パターンの一つ--トップの指示? 黙認?
第41回 VWの排ガス不正、"史上最悪"の企業不祥事 - 自動車業界全体に影響広がる
第40回 欧州への難民流入、EU統合の理念揺るがす--受け入れめぐり"東西対立"
第39回 日経平均下落の原因は"中国"だけではない--"安倍景気"息切れ、追加緩和も
第38回 中国はなぜ人民元を切り下げた? - 「経済安定」こそ習近平政権の生命線
第37回 優等生・東芝はなぜ「利益水増し」を行ったのか!?--日立への対抗意識も動機
第36回 ギリシャ・チプラス首相はなぜ"豹変"したのか!?--EU支援決定の舞台裏
第35回 中国株はなぜ急落したのか!?--EUと深い関係、ギリシャ危機の影響に注意
第34回 ギリシャ「緊縮反対」が"勝利"、デフォルト・ユーロ離脱に突き進むのか!?
第33回 ギリシャ、ついにデフォルトか!?--7・1デフォルトの場合、国民投票はどうなる?
第32回 ギリシャ危機はひとまず回避、しかし険しい道続く--ロシア・中国の影も…
第31回 米国の利上げはいつ? - イエレン議長のバックグラウンドを考慮すると…
第30回 円安はどこまで進むのか?--米国はいつまで円安を"容認"する!?
第29回 日本の対外純資産が24年連続で世界一、もはや"貿易"で稼ぐ国ではない!?
第28回 "どん底"からの復活 - シャープは創業者・早川徳次氏の精神を取り戻せ
第27回 トヨタが3期連続最高益へ、好決算の陰で"死角"はないのか!?
第26回 安倍首相訪米の隠れた"もう一つの成果"--なぜ米国は「円安」を容認するのか?
第25回 「TPP交渉」加速の陰に「AIIB」の存在あり--日本を巡り米国と中国が綱引き
第24回 セブンが独走し明暗分かれるコンビニ業界--セブン好調はマック低迷と関係!?
第23回 「株価回復は2万円で終わりではない」 - 長期的な上昇相場の"通過点"
第22回 日銀短観、「景況感は横ばい」の"謎"--デフレの"トラウマ"いまだ
第21回 サウジはなぜイエメン内戦に介入!?--原油価格や世界経済に新たな波乱要因か?
第20回 貿易赤字が縮小傾向、何が起きているのか? - その原因と影響を探る
第19回 3月中にも「日経平均2万円」達成か--"賃上げ・原油安"が強烈な追い風に
第18回 賃上げ機運高まる - "実質賃金"はプラスに転換できるか?
第17回 なぜ日経平均が15年ぶりの高値をつけたのか!?--日本経済の"歴史的転換"背景
第16回 「日経平均」が15年ぶりの高値、過去3回の上昇局面と何が違うのか!?
第15回 ギリシャの「ユーロ離脱」はありうるのか?(3)--ドイツへの"敵意"の背景とは!?
第14回 ギリシャの「ユーロ離脱」はありうるのか?(2)--ユーロ発足時から危機の"タネ"
第13回 EUはけしからん!? - ギリシャの「ユーロ離脱」はありうるのか?
第12回 ECBがついに「量的金融緩和」、原油価格の下落で"最終決断"
第11回 フランスのテロ事件、経済への影響は? - 世界を揺るがす「地政学リスク」
第10回 なぜ原油価格が下落している?(2) - ヘッジファンドなどの資金が一斉に"逃げ"
第9回 2015年の米国経済、注目点は!? - 3つの構造変化で景気持続の可能性
第8回 2015年の日本経済はこうなる - 「日経平均2万円」へ"4つの追い風"
第7回 原油安でルーブル暴落、ロシアは一体どうなるのか?--欧米による"経済制裁"!?
第6回 総選挙で自民・公明の与党が勝利、でも株価が下落したのはなぜ?
第5回 なぜ原油価格が下落している? - OPECと米国が"我慢比べ"、日本への影響は?
第4回 "訪日外国人数"が過去最高 - 「観光」は"経済成長"の柱になりうるのか?
第3回 "GDPショック"走る - 消費再増税延期・衆院解散でアベノミクスの行方は?
第2回 「米中間選挙」でオバマ民主党が"歴史的大敗"、日本経済への影響は?
第1回 "電撃的"だった日銀の「追加緩和」~その背景と効果は?

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