【コラム】

経済ニュースの"ここがツボ"

24 セブンが独走し明暗分かれるコンビニ業界--セブン好調はマック低迷と関係!?

 

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連載『経済ニュースの"ここがツボ"』では、日本経済新聞記者、編集委員を経てテレビ東京経済部長、テレビ東京アメリカ社長などを歴任、「ワールドビジネスサテライト(WBS)」など数多くの経済番組のコメンテーターやプロデューサーとして活躍、現在大阪経済大学客員教授の岡田 晃(おかだ あきら)氏が、旬の経済ニュースを解説しながら、「経済ニュースを見る視点」を皆さんとともに考えていきます。


大きく変わりつつあるコンビニ業界--セブン&アイはコンビニで利益の8割稼ぐ

コンビニエンスストア各社の今年2月期決算が出そろいました。消費増税の影響で消費低迷が言われるわりには各社とも健闘したと言えるでしょう。消費回復傾向を反映して、2016年2月期は各社とも増益を見込んでいます。ただよく見ると、その中で業界トップのセブン-イレブンが2位以下を大きく引き離し、明暗を分けています。それに対し2位のローソンは佐川急便と提携、3位のファミリーマートは業界4位のサークルKサンクスを傘下に持つユニーグループ・ホールディングスと経営統合に踏み切るとのニュースが大きく報道されました。コンビニ業界は大きく変わろうとしており、そのインパクトは小売業界全体にも波及しつつあります。

まずコンビニ大手3社の今年2月期決算の内容を見ると、セブン-イレブンを傘下に持つセブン&アイ・ホールディングスはグループ全体の売上高(コンビニ加盟店を含む)が10兆円の大台に乗せました。これは日本の小売りでは初めてです。本業のもうけを示す営業利益は前年比1.1%増の3433億円で、4期連続で過去最高となりました。2016年2月期は8.6%増と、さらに記録を5期連続に伸ばす見通しです。同社はコンビニのセブン-イレブン、スーパーのイトーヨーカ堂、百貨店のそごう・西武などを傘下に持っていますが、このうちコンビニ部門だけで利益の8割を稼ぎ、増益率も全体より大きい7%台となっています。つまり同社の好業績はコンビニが引っ張っているのです。

一方、ローソンも営業利益が3.5%増となり増収増益でした。ファミリーマートは営業利益は6.7%減でしたが、最終利益では13.5%増と増益を確保しました。

コンビニ大手3社、セブン&アイと他の2社とではかなり大きな差

ちなみに企業の業績を見る際、決算の結果が大事なのは当然ですが、より重要なのは「次の期の見通し」です。各企業の多くは決算の結果とともに、この「見通し」を発表しますので、今後の経営環境や業績を会社自身がどのように考えているかを読み取ることができます。その点から見ると、3社とも2016年2月期は営業利益で増益を見込んでおり、今後の消費回復にはある程度の自信を示しています。

ただ一口にコンビニ大手3社と言いますが、別表の利益額を比較するとセブン&アイと他の2社とではかなり大きな差があることが分かります。この差はどこから生じたのでしょうか。

セブン-イレブンに来店するのは50歳代以上が30%に

これには3つの要因があります。一つは店舗展開です。セブン-イレブンの国内店舗数は1万7491(2015年2月末現在、以下同)で、ローソンの1万2726、ファミリーマートの1万1328に比べてかなり多くなっています。しかもその差は年々開いているのです。セブンがこの3年間で約4600店増やしたのに対し、ローソンの増加店舗数は約1600、ファミマ約2500にとどまっています。

単に店舗数が増えているだけではありません。1店舗当たりの1日の平均売上高はセブンが65万円に対し、ローソンとファミマは50万円台で、10万円以上の開きがあります。これだけ違えば会社全体の利益もずいぶんと差がついてきます。

第2は、セブンがPB(プライベートブランド=自主企画)商品の開発や消費者ニーズを取り込む戦略を業界に先がけて進めていることです。デフレ脱却という新しい時代の流れに対応して、惣菜やレトルト食品などに高級感を持たせてヒット商品を生み出しましたし、客層が若者中心から高齢者や女性の増加に対応して小ぶりの惣菜やカロリーに配慮したPB食品などを増やしています。

同社の来客店調査によれば、20年前は20歳代が全体の60%を占めていましたが、現在では29%に過ぎず、逆に50歳代以上が30%に達しています。もちろんほかの各社もそのような傾向に対応する商品開発などを進めていますが、セブンが常に先行しているのです。

注目されるのは、店で販売している弁当などを宅配するサービス

第3は、前述のような時代の変化に対応して新しいサービスに乗り出していることです。すでに100円コーヒーは有名になりました。店内での抽出コーヒーという商品、100円という低価格、そして店内で飲めるというサービス、いずれも日本のコンビニとしては初めてでしたが、これが大当たり。他のコンビニ各社も追随し、ファストフードの客を奪う形ともなりました。最近、マクドナルドの業績不振はこれも一因なのです。

また注目されるのは、店で販売している弁当などを宅配するサービスを始めたことです。500円以上から無料で届けるというサービスは普通の出前を頼むより安くて便利。同社は宅配用の超小型電気自動車を一部店舗に配置するなどして売り上げを伸ばしています。

これは、一人暮らしの高齢者や働く女性が主なターゲット。店まで買い物に行くのは体力的にきつい、あるいは仕事で疲れていったん帰宅して再び買いものに行くのがつらい、そんな人たちを意識したものです。

これは少子高齢化時代の新しいサービスと言えます。さらにはグループのイトーヨーカ堂やそごう・西武百貨店などのネット通販の商品をセブンの店舗で受け取れるようにするなど、ネット時代に対応した戦略も展開する方針です。

コンビニは単なる小売業ではなく、地域の生活総合サービス産業に

以前、セブン-イレブン・ジャパンの井阪隆一社長にお会いした時「これからはコンビニは単なる小売業ではなく、地域の生活総合サービス産業に変身していく」と語っていましたが、まさしくそのような戦略を推進中です。

そしてセブンの後を追って、ローソンやファミマも同じような戦略に舵を切っています。冒頭に書いたローソンと佐川の提携、ファミマとユニーの経営統合などもその表れで、今後はそうした業界再編の動きがさらに活発化することが予想されます。各社がセブンとの差を詰めることができるかも見所です。コンビニ各社の競争が小売業界をけん引し、それが消費全体の刺激につながることが期待されるところです。

執筆者プロフィール : 岡田 晃(おかだ あきら)

1971年慶應義塾大学経済学部卒業、日本経済新聞入社。記者、編集委員を経て、1991年にテレビ東京に異動。経済部長、テレビ東京アメリカ社長、理事・解説委員長などを歴任。「ワールドビジネスサテライト(WBS)」など数多くの経済番組のコメンテーターやプロデューサーをつとめた。2006年テレビ東京を退職、大阪経済大学客員教授に就任。現在は同大学で教鞭をとりながら経済評論家として活動中。MXテレビ「東京マーケットワイド」に出演。

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インデックス

連載目次
第66回 トルコのクーデター未遂事件の影響は? 中東安定、難民問題、欧州経済の鍵
第65回 参院選の与党勝利はアベノミクスへの信任--脱デフレへ10兆規模の経済政策
第64回 英国EU離脱ショックはリーマン・ショック級--欧州統合は空中分解のおそれ
第63回 英国がEU離脱なら株安・円高進行のおそれ
第62回 消費増税を延期した本当の理由 - 経済成長なしに財政再建はあり得ない
第61回 伊勢志摩サミット、注目は"財政出動"--終了後に消費増税延期を正式決定か
第60回 急激な円高・株安はなぜ起きたか - 米大統領選も円高要因に?
第59回 セブン&アイ鈴木会長、突然の退任に波紋 - セブンは強さを維持できるか
第58回 公示地価は全国平均で8年ぶり上昇、地方圏も底上げ--資産デフレ脱却へ前進
第57回 自動車・電機など賃上げ低水準、景気浮揚には力不足 - 消費増税延期の後押し材料に?
第56回 "トランプ旋風"いつまで続くか - 世界経済にマイナスの影響のおそれ
第55回 シャープが台湾・鴻海の傘下入りで再建の行方は? - 創業者・早川徳次の不屈の精神を取り戻せるか
第54回 株安・円高が加速 - 主な原因は海外だが……
第53回 マイナス金利の影響早くも広がる - 預金金利引き下げなど続々
第52回 マイナス金利を導入したのはなぜ? - 景気回復が期待できる4つの経路
第51回 原油安で"イランつぶし"を狙ったサウジの戦略は変化するか?--減産の兆しも
第50回 原油安はいつまで続くのか!?--サウジVSイランで減産どころかシェア争いも
第49回 2016年、日本経済はどうなる?--"景気回復続く"4つの理由、消費増税再延期も!?
第48回 2015年の世界経済、救ったのは"米国"--2016年はギリシャ、原油安など要注意
第47回 パリの同時テロ、低迷する欧州経済に追い討ちか--"移動の自由"はどうなる!?
第46回 幕末の「薩長土肥」に学ぶ地方創生のヒントとは!?--日本は今"第2の明治維新"
第45回 中国やブラジルなど新興国はなぜ変調?--今や"世界経済最大のリスク"に
第44回 消費税の軽減税率、安倍首相は財務省に不信感--再増税自体の先送りも?
第43回 ノーベル賞日本人2人受賞の快挙が示す日本の底力
第42回 VWは不祥事の"典型"パターンの一つ--トップの指示? 黙認?
第41回 VWの排ガス不正、"史上最悪"の企業不祥事 - 自動車業界全体に影響広がる
第40回 欧州への難民流入、EU統合の理念揺るがす--受け入れめぐり"東西対立"
第39回 日経平均下落の原因は"中国"だけではない--"安倍景気"息切れ、追加緩和も
第38回 中国はなぜ人民元を切り下げた? - 「経済安定」こそ習近平政権の生命線
第37回 優等生・東芝はなぜ「利益水増し」を行ったのか!?--日立への対抗意識も動機
第36回 ギリシャ・チプラス首相はなぜ"豹変"したのか!?--EU支援決定の舞台裏
第35回 中国株はなぜ急落したのか!?--EUと深い関係、ギリシャ危機の影響に注意
第34回 ギリシャ「緊縮反対」が"勝利"、デフォルト・ユーロ離脱に突き進むのか!?
第33回 ギリシャ、ついにデフォルトか!?--7・1デフォルトの場合、国民投票はどうなる?
第32回 ギリシャ危機はひとまず回避、しかし険しい道続く--ロシア・中国の影も…
第31回 米国の利上げはいつ? - イエレン議長のバックグラウンドを考慮すると…
第30回 円安はどこまで進むのか?--米国はいつまで円安を"容認"する!?
第29回 日本の対外純資産が24年連続で世界一、もはや"貿易"で稼ぐ国ではない!?
第28回 "どん底"からの復活 - シャープは創業者・早川徳次氏の精神を取り戻せ
第27回 トヨタが3期連続最高益へ、好決算の陰で"死角"はないのか!?
第26回 安倍首相訪米の隠れた"もう一つの成果"--なぜ米国は「円安」を容認するのか?
第25回 「TPP交渉」加速の陰に「AIIB」の存在あり--日本を巡り米国と中国が綱引き
第24回 セブンが独走し明暗分かれるコンビニ業界--セブン好調はマック低迷と関係!?
第23回 「株価回復は2万円で終わりではない」 - 長期的な上昇相場の"通過点"
第22回 日銀短観、「景況感は横ばい」の"謎"--デフレの"トラウマ"いまだ
第21回 サウジはなぜイエメン内戦に介入!?--原油価格や世界経済に新たな波乱要因か?
第20回 貿易赤字が縮小傾向、何が起きているのか? - その原因と影響を探る
第19回 3月中にも「日経平均2万円」達成か--"賃上げ・原油安"が強烈な追い風に
第18回 賃上げ機運高まる - "実質賃金"はプラスに転換できるか?
第17回 なぜ日経平均が15年ぶりの高値をつけたのか!?--日本経済の"歴史的転換"背景
第16回 「日経平均」が15年ぶりの高値、過去3回の上昇局面と何が違うのか!?
第15回 ギリシャの「ユーロ離脱」はありうるのか?(3)--ドイツへの"敵意"の背景とは!?
第14回 ギリシャの「ユーロ離脱」はありうるのか?(2)--ユーロ発足時から危機の"タネ"
第13回 EUはけしからん!? - ギリシャの「ユーロ離脱」はありうるのか?
第12回 ECBがついに「量的金融緩和」、原油価格の下落で"最終決断"
第11回 フランスのテロ事件、経済への影響は? - 世界を揺るがす「地政学リスク」
第10回 なぜ原油価格が下落している?(2) - ヘッジファンドなどの資金が一斉に"逃げ"
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第7回 原油安でルーブル暴落、ロシアは一体どうなるのか?--欧米による"経済制裁"!?
第6回 総選挙で自民・公明の与党が勝利、でも株価が下落したのはなぜ?
第5回 なぜ原油価格が下落している? - OPECと米国が"我慢比べ"、日本への影響は?
第4回 "訪日外国人数"が過去最高 - 「観光」は"経済成長"の柱になりうるのか?
第3回 "GDPショック"走る - 消費再増税延期・衆院解散でアベノミクスの行方は?
第2回 「米中間選挙」でオバマ民主党が"歴史的大敗"、日本経済への影響は?
第1回 "電撃的"だった日銀の「追加緩和」~その背景と効果は?

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