こんにちは。友人との待ち合わせのときが気まずいイチイです。別に人間関係で悩んでるわけじゃなくて。なんで気まずくなるかというと、顔を合わせたときに第一声で何て言ったらいいか毎回悩んで挙動不審になってしまうからです。

待ち合わせで顔を合わせたときの第一声の難しさは、毎回同じフレーズを使えるわけじゃないということにあります。たとえば、「ごめん、待った?」「ううん、今来たとこ」という、付き合いたてのカップルのような定番のフレーズがあります。しかし、この、一見とても汎用性の高そうに思えるやりとりには重大な欠陥があります。それは、待ち合わせに少しだけ遅れなければならないということです。うっかり定刻通りに会ってしまうとえらい気まずいことになります。なぜならちょっとも遅れてないのに「ごめん、待った?」を使うと、内心と明らかに違うことを言っていると自覚して、態度がしらじらしくなってしまうからです。それを察しつつこたえる「ううん、今来たとこ」。しらじらしさの押し合いへし合いです。もちろん1時間などと遅れすぎてもいけません。「待った?」「そりゃー……すごい待ったよ」ということになりますので。

「ひさしぶり!」これも第一声として手頃感のあるフレーズです。しかしこれも当然、最近会ったばかりの人には使えません。「ひさしぶり!」と口に出しながら、(本当は先週会ったばっかだよナァ)と内心はウソを自覚しているから、やっぱりしらじらしくなります。「ひさしぶり! ……あ、そうでもないかナハハ」といか何とかごまかすことで余計ドツボにハマッていきます。

そんな深く考えずに、普通に挨拶すればいいじゃんという思われるかもしれません。いやでもね、意外とこれも口に出しにくいんですよ。目上の人や初めて会う人ならともかく、普段はタメ口親しい友達に向かって今さら「こんにちは」とか「こんばんは」はなんて、違和感を感じてしまいます。親しい相手には「おはよう」は言いやすいのに、どうして「こんにちは」とか「こんばんは」は妙にあらまってしまうんでしょう?? 日本語って不思議。"Hi"でなんでもすませられればいいのに。って欧米か!

そうやって毎回グダグダと悩んだ結果、今では「おうっ!」「ようっ!」「あー!」などという、まったく意味をなさずかつオヤジ的なかけ声で一律すませることにしてしまってます。楽ちんだけど、色気がないことは間違いありません。TPOに合わせて、待ち合わせの第一声を柔軟に変えることができたらな。でも、待ち合わせっていうのはその場に初めて登場するところなので、空気を読むとっさの判断が必要になるから難しいんだと思います。

ところで、最近では空気が読めないことを「空気(Kuuki)・読めない(Yomenai)」の頭文字を取って「KY」って言うらしい。略語になっちゃうくらい、場の空気を読むのに苦労する人が増えてきたんだなと思います。というわけで、今回の電子書籍は「場の空気を読む技術」です。

この本は、まず、どうして場の空気が読めないのかというまえがきから始まります。なぜ、場の空気が読めないのか。それは重要なサインを見落としているからにほかならないと著者は説きます。相手がせっかくサインが送っているにもかかわらず、それを無視するから、場の空気が読めなくなるのです。この本は、そうしたサインを見落とさないようにするための心理学的な法則を紹介していきます。

まず初歩的な方法としては、表情に注目すること。「怒ってないよ」と言いながら顔が怒っている人は、たいてい怒っています。だからそれなりの接し方をしなければならないということです。また一歩進んで、パターンを理解すること。あの人は朝が苦手だから午前中は大事な話はしないでおこう、といったようなパターンを数多く知っていると、段々と行動を予測できるようになるということです。なるほどと思わせられます。初めは、そのように「察する」「カンを働かせる」にはどうすればいいかというコツが書かれています。

項が進むにつれ、場の空気を読む技術は段々と、受動的な内容から「場の空気をコントロールする」「その場の空気を和みに変える」といった積極的に働きかける技術へとシフトしていきます。ところが面白いことに、実際に「その場の空気を和ませる」というコツは、上手な話の聞き方だったり、相手の三割減しか話さないことだったり、相づちを打ったりといった、比較的控えめなテクニックなのです。これは核心をついているかもしれないと思いました。身の回りにも、調子づいてダラダラとオチのない話を続け、周りがウンザリしているのに気づかない、まさに「KY」な人がいます。「KY」は、自分からの情報発信が過剰になるために、受信がうまくいっていかず、引き起こされるのでしょう。

かといって、話したいことがあるのにぐっと抑えるのもつまんないですよね。「空気を読む」のは、ある程度自分に負担がかかってくるもの。「KY」は、空気お構いなしに自分の楽しみたいように思い切りやるもの。そのバランスを取るのはきわめて難しいことなのかもしれませんね。

「場の空気を読む技術」

著者:内藤誼人
出版社:サンマーク出版
価格:1,050円
データ形式:XMDF
購入サイト:電子書店パピレス