【コラム】

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58 ドラマ化するマンガの草分け - 「闇のパープル・アイ」(篠原千絵)

一井おん  [2006/06/29]

こんにちは。健康診断におびえるイチイです。来週はいよいよ恐怖の健康診断。今さらになって、夕食を抜いてみるというプチ断食を実行しているところです。

まだまだ若いと思っていても、身体のいろいろなところにガタが来ているのを感じてしまう時です。ましてや、イチイより2、3コ入社年次が上の、30歳間近の先輩達には、より大きな転換期が来ているらしい。随所から「もう若くないし……」の悲鳴が聞こえてきます。30歳になってしまえば、もう割り切れるのかもしれないですけどね。

この間は、ショックな出来事がありました。それは、30歳を前にして異例のスピード昇進を果たした、わが部署のホープの発言でした。仕事はバリバリでき、キャリアを積んだシニア達にも対等に渡り合える度胸を持ち、周囲への気配りもさりげなくできる人。そんな憧れの先輩に、部署の飲み会で「先輩、2次会はどうするんですか?」とたずねると、「ああ、おれだめなんだよね」とおっしゃいます。「えー、いいじゃないですかぁー。明日の朝何か予定がおありなんですか?」と詰め寄ると、先輩は言いました。

「おれ明日、『×××』に行かなくちゃいけないんだよ」

ショックでした。その「×××」とは、かつらを取り扱うことで有名な店だったからです。「ハッハー、先輩、冗談ですよね? 『×××』だなんて、ネタでしょう」というと、「いやマジマジ、ほらカードも持ってるから」と予約カードを見せてくれました。しかし、予約カードには店名が書いてありません。配慮してくれているんだよ、と先輩は言うのですが、まだ信じられず、返事をする代わりに生え際を見つめました。確かに、少しおぐしが繊細、というか、透けてみえる? いやいやまさか。と疑っていると、横からその先輩の同期の方が当然のように「あれまだ知らなかったの?」と言うので、ようやく信じることができたのです。

憧れの先輩が「×××」に通っていた……。美しいイメージが音をたてて崩れ去った……。立ち直りがたいショックです。先輩はその後、発毛と育毛と増毛の違いについて嬉々として教えてくれたのですが、イチイの中で先輩のコードネームは、完全に「×××」になってしまったのでした。

しかし考えてみれば、自分の身体の変化にいち早く気づき、恥ずかしがることもなく最良の対策を立てている先輩は、やはりデキる人なのだなあと思いました。イチイも、自分の体重の変化にいち早く気づいて食生活を見直していたら、健康診断におびえる必要はなかったのに。病気になる前に、身体を監視し続けること。それがトータルでは、もっとも効率のよい健康への道なのだなと思います。

身体の変化といえば、今回紹介するマンガの身体の変化はスゴいです。もう、人間の女の子がヒョウになっちゃうのですから。「闇のパープル・アイ」は10年ほど前にドラマされ、雛形あきこさんが主役の少女を演じて話題になりましたが、このたび電子書籍として「Yahoo!コミック」に新しく追加されたのです。このマンガ、変身ものの少女コミックとしてはバツグンの壮絶さ、グロテスクさを持っています。ごくごく普通の高校生活を営み、家族や恋人にも恵まれた幸せな少女が、ある日突然ヒョウに変身し、人殺しをしてしまうのですから。この転落の激しさは、「デビルマン」の導入部分にも似ています。

妙に印象的なのは、主人公が動物として自分を自覚していくシーンです。そこには必ず血と肉がつきまとっています。たとえば、ストーリーのはじめの方で、主人公は台所で包丁をうっかり落とし、足を傷つけてしまいます(そんな落とし方あるかよ! という感じですが)。そして、ザックリ切れた足の傷口から流れる血に引き込まれ、つい口にしてみて、「甘い……」と感じるのです。また、家族と食事をしていて(これまた不自然にステーキ)、お父さんや妹に、「もっとよく焼いて、レアすぎるから」と言われてしまいます。しまいには、夜中に冷蔵庫に這っていき、中にある、ラップに包まれた生ステーキ肉(なぜそんなものが一般の家庭に普通にあるのか……)に手を出しそうになります。ケモノといえば肉。細かいことはなしに、その強烈なインパクトを与える力がこのマンガにはあります。

そう、そもそもこのマンガは「少女マンガ」なのであって、細かいことまで考えると多くの矛盾があるのです。しっかり作りこんだ、という印象はあまり受けません。しかし、集中豪雨のような衝撃のストーリー展開に驚き、勢いで読んでしまいます。彼女がヒョウでも愛せるか? 逆に、自分がヒョウになっても愛を求めていいのか? そういった恋愛模様も主軸にしっかりからんでいて、キャラクターに感情移入ができます。

そして何より印象的なのは、変身した後は服がビリビリに破けてしまうというところです。それなら、服を脱いでから変身すればじゃん。そういった細かいことは考えてはいけない種類のマンガなのです。

「闇のパープル・アイ」

著者:篠原千絵
出版社:小学館
価格:294円
データ形式:独自形式(専用コミックビューア使用)
購入サイト:Yahoo!コミック

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