【コラム】

ちょこっとイイブック

51 ツブシききたい下心に - 「機動戦士ガンダムC.D.A. 若き彗星の肖像」(北爪宏幸)

一井おん  [2006/05/10]

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出版:角川書店 連載:角川コミックス・エース 著:北爪宏幸 提供:バンダイチャンネル
(C)創通エージェンシー・サンライズ

こんにちは。またケータイをなくしたイチイです。また、というのはここ1年の間にケータイをなくしたのが2回目。情報セキュリティが叫ばれるこのご時世で、個人的個人情報漏洩もはなはだしい限りです。

アドレス帳の復旧も、前回は前に使っていたPHSから地道に移していたのですが、もう今回はめんどうになってしまって放置状態。電話をかけてくる人やメールをくれた人から順番に登録していけばいいやという投げやりなスタンスを取っています。「090」「080」で始まる謎の電話に思い切って出てみるのはなかなかのスリルです。大体は親しい友達で安心するのですが、うっかり着信拒否に登録していた人物からの電話を取ってしまう、なんてことも。いつドボンが訪れるかという、ゾクゾク感がたまらない1人遊びを楽しんでいます。

困ってしまうのが、ここのところ合コン回数が比較的多かったために生じる問題です。合コンと言えば、素敵な出会いがあったにしろなかったにしろ、開催されれば一応の礼儀として連絡先の交換があるわけです。その度に、顔の輪郭もぼやけて思い出せないようなのっぺらぼう達のメールアドレスがたまっていきます。

ある時、名前や人となりを想像しにくいメールアドレスから、こんなメールが送られてきました。

(タイトル)おひさしぶりです
(本文)お元気ですか? 今度ヒマになった時にでも飲みに行きましょう! ではでは

あんた誰? ですよ。もうちょっとタイトルや本文に特徴をつけようよ! シカトしてもよいと思ったのですが、もしやこの人が運命の相手で、これがきっかけでゴールイン、3年後にはハワイで挙式なんてことになるやもしれない。そんなことを考えるととても無視などできず、数少ない情報から想像力をめぐらして、返事をしてみることにしました。あの時の合コンで会った、大手メーカー勤務の××さんかな? そういえば、彼は池袋の近くに引っ越したから、また飲みに行こうって言っていたような。そうだ、そうに違いない!

(タイトル)Re: おひさしぶりです
(本文)こんにちは! 返事が遅れてすみません。今度池袋あたりで飲みに行きましょう! 一井おん

このように返したのですが、結局その相手は池袋の君ではなく、恵比寿にお住まいの方だったのでした。「何で池袋? 了解です」。その本文を見た途端、すべての記憶がよみがえり、失敗を悟ったのです。何で恵比寿の近くに住んでいる人と、わざわざ遠い池袋で飲まなければならないのか。これだったらせめて、王道中の王道、交通の便もいい「渋谷」とでも書いておけばツブシがきいたのに……と後悔したのでした。

"ツブシをきかせられる"、というのも1つのスキルだなと思う今日この頃です。たとえば「仮面ライダー」が好きなイチイは、合コンでは決してその話題を出すことは出来ません。なぜならツブシがきかないから。「仮面ライダー? へー、何、最近もバッタみたいなやつなの?」。10人中9人からこういう答えが返ってきます。違うんだって! 最近は人造人間じゃないし世界観がまったく違うの! いくらこちらが熱くなったところで決して広がりは生まれず、かえってドン引きされるだけ。普段からツブシのきくネタを仕入れておかなければ……という思いで今回「ガンダム」を選んでみたのでした。

ガンダムは、ひと口にガンダムと言っても、ちょっとネタにしようくらいの下心では、なかなか全体を把握することが難しい、奥深いものです。電子書籍で読むことができるのは今のところ、「機動戦士ガンダムC.D.A. 若き彗星の肖像」というコミック作品のみです。北爪宏幸氏という、ガンダムといえばこのデザイナー! といった地位の人が描いています。物語の主人公はシャア・アズナブル。1年戦争を描いたいわゆる「ファーストガンダム」から次に登場する「Zガンダム」まで、シャアは何をしていたのか? という空白の7年間を描いたものです。

「ファーストガンダム」も「Zガンダム」も、イチイにはわからなかったので、読むにあたってはある程度のガンダム史の「お勉強」と想像力が要されたのですが、ひたすらに印象に残ったのは、後にアクシズの指導者となり、シャアの恋人にもなるハマーン・カーンというローティーンの少女の魅力です。

この女の子、若干14歳にもかかわらず、ニュータイプ(通常の人間よりも高い能力を持つ人間)として卓越した戦闘能力を持ち、たとえ単身でも敵地へ乗り込んでいく勇気を持つ肝っ玉ガールなのです。おまけに見た目はもちろんキュート。可憐とかはかなげといった雰囲気ではないのですが、長い髪を2つにわけ、上のほうで結わえたおてんば娘テイストをかもし出しています。いかにもフィギュアにしたらある種の人間に好まれそうな感じです。

イチイは70年代から続く長ーいガンダムの歴史を、さらっと年表みたいなもので勉強し、このコミックを読んだだけなので、ツブシをきかせられるほど把握しきれなかったのですが、「仮面ライダー」を観ているときのように、戦闘シーンのわくわく感というものを味わうことができました。そしてやはり多かれ少なかれ魅力的な女性が出てくる、というのが、この手の戦闘ものの人気には欠かせないポイントとなっているのではないかと推測します。「ああ、ハマーン? かわいいよね」。このぐらいのセリフがさらっと言えるようになれれば、多くの人の共感を得られるのではないか……という下心は達成されると信じてます。

「機動戦士ガンダムC.D.A. 若き彗星の肖像」

著者:北爪宏幸
出版社:角川書店
価格:525円
データ形式:独自形式(専用ソフトウェア使用)
購入サイト:eBookJapan

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インデックス

連載目次
第96回 「内臓ドライブ」でゲンメツさせないで - 「一日一本!漢検十本勝負 巻之十【二級】」(漢検問題研究会)
第95回 方言ってズルい! - 「ぼっけぇ、きょうてぇ」(岩井志麻子)
第94回 非鉄から鉄へのツンデレ - 「鉄子の旅」(菊池直恵/横見浩彦)
第93回 "KY"と呼ばれないために - 「場の空気を読む技術」(内藤誼人)
第92回 ホームドラマの大原則とは - 「夏休み」(中村航)
第91回 約束にルーズだとお金も逃げていく? - 「お金の貯まる人はここが違う」(邱永漢)
第90回 必然的に事件に遭遇する神様探偵 - 「魔探偵ロキ」(木下さくら)
第89回 1リットルの鼻水 - 「大雑学1 数字で知る人体」(日本雑学研究会)
第88回 たまには一句詠んでみますか - 「添削例に学ぶ俳句上達法【1】」(鷹羽狩行・片山由美子)
第87回 脱・紋切り型英会話 - 「英語即答トレーニング 自然なひとことがさっと口に出る!」(デイビット・セイン)
第86回 封印された秘密をネットで公開 - 「姉ちゃんの詩集」(サマー)
第85回 テキストオンリーで勝負する硬派な料理本 - 「読むレシピ」(日本放送出版協会)
第84回 もし朝起きて虫になってたら - 「変身」(カフカ)
第83回 一話完結ものの異端児 - 「蟲師」(漆原友紀)
第82回 たまったキャッシュを捨てたいときに「ミカ!」(伊藤たかみ)
第81回 おしかけ女房のパイオニア - 「The かぼちゃワイン」(三浦みつる)
第80回 衝撃の結末は読んでのお楽しみ - 「大統領のクリスマスツリー」(鷺沢萠)
第79回 キラーネタの目白押し - 「杉田」(杉田かおる)
第78回 そろそろ、リタイヤ後のこと - 「美術館アンソロジーシリーズ I ルーヴル美術館」(藤ひさし)
第77回 発光する美少女に注目 - 「The MANZAI」(あさのあつこ)
第76回 私、ポータビリティ - 「元刑務官が明かす死刑のすべて」(坂本敏夫)
第75回 かいま見たオヤジグルメ - 「超こだわりの店乱れ食い」(伊丹由宇)
第74回 ため息つくと幸せ逃げるって本当? - 「幸福論」(アラン)
第73回 万葉はハニー・ダーリンの関係 - 「恋愛名歌集」(萩原朔太郎)
第72回 目薬の差し方から昼寝のススメまで - 「疲れをとる365日のヒント」(ライフエキスパート)
第71回 ベタつかない女の友情 - 「下妻物語」(嶽本野ばら)
第70回 胸のすくよなアキバ・ストーリー - 「アキハバラ@DEEP」(石田衣良)
第69回 エラそうで偉い - 「フランス人の贅沢な節約生活」(佐藤絵子)
第68回 賞味期限のないワンコソバ - 「きまぐれロボット」(星新一)
第67回 意外にあなどれない"デブ"の癒し効果 - 「空中ブランコ」(奥田英朗)
第66回 癒し系スプラッタ・ホラー - 「栞と紙魚子 殺戮詩集」
第65回 ケーキバイキングでどれだけ食べられるか - 『ナンシー関「テレビ消灯時間」リミックス』(ナンシー関)
第64回 アツく濃い100円 - 「100円モバイル文庫」シリーズ
第63回 夏は恋の季節ですから - 「マーフィーの恋愛成功法則」(植西聰)
第62回 スバラしき非生産 - 「頭の体操」(多湖輝)
第61回 できすぎたパロディ - 「日本以外全部沈没」(筒井康隆)
第60回 モテワンピなんて着てないで - 「日本沈没」(小松左京)
第59回 最年少何とかに憧れる - 「女子大生会計士の事件簿」(山田真哉)
第58回 ドラマ化するマンガの草分け - 「闇のパープル・アイ」(篠原千絵)
第57回 ミットモナイは反面教師 - 「頭がいい人、悪い人の話し方」(樋口裕一)
第56回 その若々しさは50マジで~ - 「新しい単位 ディレクターズカット」(世界単位認定協会)
第55回 恋愛テンプレート - 「年下オトコ×年上オンナ」(吉井春樹/内藤みか)
第54回 もそもそメシを喰う - 「ぼのぼの」(いがらしみきお)
第53回 アウェーの人に - 「ウェブ進化論 --本当の大変化はこれから始まる」(梅田望夫)
第52回 仕事とプライベートの切り替え上手 - 「生協の白石さん」(白石昌則)
第51回 ツブシききたい下心に - 「機動戦士ガンダムC.D.A. 若き彗星の肖像」(北爪宏幸)
第50回 忘れられない最終便のトラウマ - 「最終便に間に合えば」(林真理子)
第49回 当たり前という名の盲点 - 「逆説の日本史」(井沢元彦)
第48回 R25を読んでなくても - 「大人失格」(松尾スズキ)
第47回 芸術はなぜ爆発か - 「今日の芸術」(岡本太郎)
第46回 世にも新しい読むダイエット - 「妊娠カレンダー」(小川洋子)
第45回 ロハスブームにのせられて - 「超絶ハワイ術 もっとアロハ編」(野田貢次)
第44回 シューカツのちょっぴり苦い思い出 - 「蝉しぐれ」(藤沢周平)
第43回 髪を切ったらまずほめろ - 「大人の女養成講座1 大人の女のお仕事」(石原壮一郎/ひさうちみちお)
第42回 メソッドを噛み砕こう - 「段取り力」(齋藤孝)
第41回 絶望したらハーレクイン - 「憂鬱なクリスマス」(キャロル・モーティマー)
第40回 いい意味の規格外 - 「伝染るんです。」(吉田戦車)
第39回 ヨン様靴下で聞いた話 - 「銀河鉄道の夜」(宮沢賢治)
第38回 萌えと甘酸っぱさと - 「タッチ もうひとつのラストシーン」(青木ひかる)
第37回 「東京流」小説スタバ風味 - 「パーク・ライフ」(吉田修一)
第36回 日本一"端麗"な文章を書いた作家 - 「今夜、すべてのバーで」(中島らも)
第35回 小顔グッズを買う気持ち - 「ショッピングの女王」(中村うさぎ)
第34回 心のアミノサプリ - 「月のしずく」(浅田次郎)
第33回 男運の悪さとは違う - 「だめんず・うぉ~か~」(倉田真由美)
第32回 こってりとしていてそれでいてしつこくない - 「あ・うん」(向田邦子)
第31回 ちょこっと、おかわり! - 「空中庭園」(角田光代)
第30回 しょうゆ風味にローカライズ - 「冬のソナタ」(星合操)
第29回 「Aガール」って言われたい - 「ドグラ・マグラ」(夢野久作)
第28回 タイトルで1本釣りの顛末は - 「面白すぎる釣りの本」(博学こだわり倶楽部)
第27回 ブクロ系からエビス系へなれる本 - 「世界の終わりには君と一緒に」(桜沢エリカ)
第26回 ビールが泡盛になりました - 「プチ断食ダイエット」(いしはらゆうみ)
第25回 音のセンスが支配する - 「骨音 池袋ウエストゲートパーク3」(石田衣良)
第24回 ゲイが気になるお年頃 - 「中原中也詩集」(中原中也 編:大岡昇平)
第23回 みやげスキルを磨く - 「東京 五つ星の手みやげ」(岸朝子)
第22回 MPEGって何の略? - 「SEのためのIT英語入門」(小坂貴志/板垣政樹)
第21回 電話を止められても読みたい - 「三国志」(横山光輝)
第20回 キモカワ、キモオモ - 「元祖 スバラ式世界」(原田宗典)
第19回 ブームの秘密を探る - 「電車男、重松清と語る」(電車男/重松清)
第18回 3,000円のウナ重に似たり - 「沖縄の島へ全部行ってみたサー」(カベルナリア吉田)
第17回 生々しいより"生" - 「あたしの女に手を出すな」(南Q太)
第16回 文豪の夢は乙女チック - 「夢十夜」(夏目漱石)
第15回 SF界のモーニング娘。 - 「グリーン・レクイエム」(新井素子)
第14回 ブログの原型ここにあり - 「ポケットに名言を」(寺山修司)
第13回 美人のヒゲはマゾヒズム - 「ヒゲのOL薮内笹子」(しりあがり寿)
第12回 人生は選択の連続 - 「ハムレット」(シェイクスピア)
第11回 何かと何かを取り違えるプチ失敗 - 「伊賀忍法帖」(山田風太郎)
第10回 ノーリーズンの世界観 - 「デビルマン」(永井豪)
第9回 女の株もちょこっと上げて - 「e(良い)投資家になる本入門編」(長良川昌久)
第8回 毒にも薬にもならないトリビア的元祖SF - 「星の神話伝説集」(草下英明)
第7回 なんてイカした鼻マスク - 「包丁人味平 カレー戦争編」(牛次郎/ビッグ錠)
第6回 女同士のラブホテル - 「対岸の彼女」(角田光代)
第5回 平安朝のシティハンター - 「陰陽師」(夢枕獏)
第4回 元カレと血便 - 「時事通信社『家庭の医学』」 (時事通信社)
第3回 しょっぱいバレンタインに - 「たのしい・わるくち」(酒井順子)
第2回 溜まっているボス・ポセイドン - 「海のトリトン」(手塚治虫)
第1回 私が映画嫌いな理由 - 「蹴りたい背中」(綿矢りさ)

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