【コラム】
こんにちは。また座禅に行ってきたイチイです。先月のコラムで座禅初体験のことを書きましたが、先週またまた行ってきてしまいました。今度は茨城県の某市にある道場です。前回は泊りがけでしたが今回は日帰り。朝10時から軽くすわって(「すわる」=そのみちの業界用語で座禅を組むこと)そのあとランチ、午後は講演会というプログラムです。
今回のプログラムで魅力だったのは、きれいな自然の景色の中で「すわる」というロケーションの良さ、そして何といっても女性限定だったということです。女ですわりたがるなんて、どんな濃いキャラクターなんだろう(そういう自分も人のこと言えたもんじゃないのですが)、座禅の後の講演会ってのもどんなもんなんだろうと楽しみにしていました。
しかし今回の失敗は、朝が早すぎたこと。茨城に朝10時ということで、東京駅に朝8時に集合です。こともあろうに前夜、銀座で飲みすぎていたイチイは、近辺の友人の家に転がり込んで寝ていました。「ハッ」と気付いて、「そうだ、座禅に行くのだった!」と思い出し、二日酔いの体を起こして準備を始めたのが朝6時半。ただし、泊まることなど想定していなかったので、着替えの用意などありません。「ごめん、これから座禅行くからジャージ貸して!! 」と頼み込み、ジャージを借りて東京駅へ。なんとか間に合い、高速バスで爆睡しながらかの道場へ着いたのですが、そこでとんでもない事実を思い出したのです。
「今日の私、『ヨン様』靴下だった……」。こともあろうに、こういう場で1番履きたくない、履いてはいけない靴下を履いてきていることに気付いたのでした。「ヨン様」靴下とは、眞鍋かをりさんのブログで一躍その名を馳せた、ヨン様の顔がコミック調でプリントされたスニーカーソックスです。イチイはこれを韓国旅行で見かけたとき、100円という安い値段もあって即買いしてしまいました。この靴下を本当に履いている人ってどのくらいいるんでしょう。
座禅とは、心を無にするためにやっている修行。しかし、ヨン様の靴下など履いていては雑念だらけになるし、他の人にも迷惑でしょう。ヨン様靴下を履いてるのを見られたら、棒でビシバシ叩かれないだろうか。そんなことを心配していて、この前よりちっとも集中できない「すわり」だったのでした。
ただ、午後のイベントの講演会はなかなか面白かったです。テーマは「宮澤賢治とイーハトーブ」。一見座禅とは何の関係もなさそうですが、宮澤賢治の童話を例にあげて環境問題にアプローチするという、小学校の時の道徳の教科書と大学の講義のミックスみたいな内容でなかなか面白かったです。その時にスライドで朗読してもらったのが「銀河鉄道の夜」で、なかなか感動したので今回のコラムに取り上げることとなりました。
「銀河鉄道の夜」は、未定稿であるにもかかわらず宮澤賢治の集大成だと言われています。宮澤賢治の童話の中では1番有名かもしれません。ただ、名前だけでどんな話か知らなかったという人は、意外に多いのではないでしょうか?
イチイとしても、「注文の多い料理店」「セロ弾きのゴーシュ」「なめとこ山の熊」といった有名どころなら小さい頃に見たり聞いたりした記憶があったのですが、「銀河鉄道の夜」は不思議にとっつきにくく、途中で読むのをあきらめたような記憶があります。小さい頃から本を読むのが好きだったイチイが読むのをあきらめた本なんて、埴谷雄高の「死霊」と横光利一の「機械」、「指輪物語」くらいです。これらよりずっと表現はやさしく子供に語りかけるような文体ですが、不思議と頭にすーっと入りにくく、思わずページをめくるのをやめてしまったのです。
ストーリーを一言で言えば、主人公の少年ジョバンニが、親友のカムパネルラと、銀河鉄道に乗って旅をするというお話。その途中でアルビレオの観測所や、銀河ステーションを通ったり、不思議な鳥売りやタイタニック号に乗っていた女の子に出会ったりと、さまざまな体験をする様子を描いています。銀河鉄道というのは亡くなった人が乗る鉄道で、実はカムパネルラは川に落ちて亡くなっていたことをジョバンニは知ります。こう言ってしまえば、「学校の怪談」みたいなストーリーですよね。しかし「学校の怪談」とは到底思えなくさせるのが、宝石のようにキレイな銀河の景色の描写です。
まるで億万の蛍烏賊の火を一ぺんに化石させて、そら中に沈めたという工合、またダイアモンド会社で、ねだんがやすくならないために、わざと獲れないふりをして、かくして置いた金剛石を、誰かがいきなりひっくりかえして、ばら撒いたという風に、眼の前がさあっと明るくなって、ジョバンニは、思わず何べんも眼を擦ってしまいました
これは、銀河ステーションの描写です。宮澤賢治の光の描写の巧みさが良く出ている箇所です。蛍イカって居酒屋のつまみでは、小さなちょこにぎっしり折り重なってとてもキレイとは思いませんが、「億万の蛍烏賊」を美しいと感じさせる表現力がすごい。
その後の話ですが、イチイ24歳の再発見「『銀河鉄道の夜』、意外に面白い話じゃない!」と、座禅の時に感じた「座布団の柄が宇宙に見えてくる」体験とがヘンに化学反応を起こしてしまって、「宇宙って何だろう……」と考えるようになってきました。ちょっと疲れてるのかもしれません。
「銀河鉄道の夜」
著者: 宮澤賢治
出版社: 角川書店
価格: 494円
データ形式: TXT / XMDF
購入サイト: 電子書店パピレス
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