【コラム】

ちょこっとイイブック

30 しょうゆ風味にローカライズ - 「冬のソナタ」(星合操)

一井おん  [2005/09/14]

こんにちは。忙しいイチイです。大して忙しくないのにやたら忙しぶる人っていますけど、イチイは今、胸を張って「忙しい」と言える立場だと思います。今これを書いている次の日には、遅めの夏休みでソウルに行く予定なのですが、その前に普段の倍の量の仕事を片付けないといけないし、なのに上司には飲みにラチられちゃうし、コラムのネタは思いつかないし。よく考えたら遊びで忙しいだけじゃん! とちゃぶ台ひっくり返しちゃいたい気分です。はたして明日飛べるのか、自分でも心配。

それにしても、忙しいときに限って、ヒマな人につかまっちゃうものですね。先日、広島に転勤になった友人が訪ねてきたので、ついついおしゃべりをしてしまいました。

以前は東京に住んでいた彼女。1日にいくつも予定を入れては、仕事に遊びにと精力的に飛び回っていた子だったのですが、聞いてみると、広島では遊び仲間も減り、めっきりヒマになってしまったのだそう。そんな彼女から、時間つぶしに買った1,000ピースのジグソーパズルが完成間近だ、という話を聞いたのです。そこで思い出したのは、学生時代に親しくしていた、後輩Mちゃんのこと。見た目は小さくて少しぽっちゃりしたMちゃん、ぱっと見はなかなか可愛らしいのですが、実は、かなりのダメダメっ娘(こ)だったのです。

まず、Aちゃんの住むひとり暮らしの部屋、これが汚いのなんの。床やテーブルには化粧品が散乱しているし、家電は壊れたままになっているし。おまけに、ユニットバスで手を洗おうとして、なぜか楽器が湯船の中につっこまれているのにはさすがのイチイもビックリ、「コラー!」と叱ってしまいました。しかも話が恋バナになると、おもむろにタバコを吸いはじめ、昔ふられた男をひきずり出しまくるんですよねぇ、情けない。後ろ向きな性格が先か、汚い部屋が先か、ニワトリとタマゴのような法則を見事に体現しているダメダメっ娘なのでした。

そんなAちゃんが「最近これにハマッてるんです」と取り出したのが、カニの形をした知恵の輪。何年か前にイマドキ風の知恵の輪がちょっとしたブームになったことがありましたよね。彼女、これをヒマつぶしに本屋さんで買ってきたんです、と言うのです。そのわりには、大して楽しそうでもなく、うつろな目で知恵の輪をいじり続けるAちゃん。しかも広島の彼女と違って、いつまでたっても解けないんです。あっちこっちひねってみるものの、全くもってダメ。それを見ていて、ますますAちゃんはダメダメっ娘! というイメージがイチイにはしみついてしまったのですが……。

さて、今回ご紹介するのは、明日ソウルに行くぞスペシャル! ということで、やや遅れてる感はありますが「冬のソナタ」漫画バージョンです。これ、電子書籍でなければ絶対買わないんだろうな。だって、万が一単行本を会社の人にでも見られたら大変。ただでさえ職場ではオヤジキャラに加えアキバ系女子(前回コラム参照)を確立しているのに、今度は韓流マニアらしい、などとささやかれてしまうでしょう。電子書籍なら全8巻大人買いしても誰の目にも留まらないわけで、助かります(こうして人に言えない秘密が増えていく……)。

話はそれましたが、この漫画のストーリーは、いわゆる昼ドラのようです。おそらくはTVドラマと同じでしょうが、純愛に婚約者に三角関係とお決まりの関係に加え、出生の秘密、記憶喪失、海外留学と、ネギトロにしょうゆをかけたようなベーシックな味付け。いや、韓国だからコチュジャンか? 意地悪な女、気立てのいい女友達なども欠かせません。

驚いたのは、これらのベタベタな構成要素を、見事に無駄なく、連続して挿入し、1つのストーリーとしてきちんと成立させているというところです。これがジグソーパズルなら、1つのピースを持って絵柄をつき合わせて「これは、ここにはまるのかな?」と、縦にしたり横にしたり試行錯誤を繰り返し、しかるべき場所を探し当てます。知恵の輪だって、「こうかな? それともひねるのかな?」と考えますよね。この「冬のソナタ」には、ベタな構成要素の組み立て方に、そういった迷いが感じられません。あれだけの盛りだくさんのピースを、全8巻という比較的短い中にぴったり収めてしまっているところに感心しきりでした。そういった意味で、「冬のソナタ」のストーリーはよくできたパズルといえるでしょう。知恵の輪娘のAちゃんとは今は連絡をとっていないけれど、彼女にこそ観てもらいたいですね。

ちなみに雑誌で読んだところによると、韓国には恋愛もの以外のドラマがないようなのです。また、韓流ドラマの特徴は、1回ごとにジェットコースターのような山場がある、とのこと。これに慣れてしまうと、どちらかというとリアルさを追求し、まったりとした空気の日本の恋愛ドラマでは味が薄く感じられてしまうらしいです。刺身にコチュジャンをかける国民性と、しょうゆをかける国民性の違いのようなものでしょうか。

では、漫画「冬のソナタ」としてはどうか? というと、キャラクターが実際の俳優に似てない! 何より、ヨン様が演じたジュンサンがメガネをめったにかけていないし、しょうゆ顔。イチイが思うきわめてベーシックな少女マンガ風の絵が足りなかったので、やはりヨン様とチェ・ジウの、こってりとした本場ドラマを観てみたいものだなぁ、と思ったのでした。

「冬のソナタ」(1)~(8)

著者:星合操
出版社:宙コミッククリエイション
価格: 各600円
データ形式:独自形式(専用ソフトウェア使用)
購入サイト:eBookJapan

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