【コラム】

ちょこっとイイブック

28 タイトルで1本釣りの顛末は - 「面白すぎる釣りの本」(博学こだわり倶楽部)

    一井おん  [2005/08/31]

    こんにちは。淑女になりたいイチイです。女性のマナー本を数冊買って、目下勉強中であります。そのモチベーションは、タクシーの運ちゃんにバカにされないように、というところからきています。

    イチイの会社では、深夜残業後にタクシーを呼ぶときは、所属するプロジェクトチームで同じ個人タクシーを利用することになっています。だから、乗客と密室で共に過ごし、自宅まで送り届けるタクシーの運ちゃん達は、プロジェクトメンバーの個人的な事情にまで精通しているのです。そんな運ちゃん達に、最近はタクシーに乗るたびにダメ出しをくらっているような気がします。

    「イチイさんって、いつも酔っ払ってるって聞いてますけど」
    「この間なんて、眠っちゃって家になかなかたどりつけなかったらしいですねえ。○○さん(別の運ちゃん)が言ってましたよ」

    そんなことを言われたら身もフタもなく、「は、はぁ……。飲みすぎちゃって……。へへ」と、ヘイコラ苦笑いをしてしまうのです。ちくしょう、客なのに。そこで、育ちが悪いキャラを払拭すべく、淑女の立ち居振る舞いを身につけてやろうと思ったのです。すなわち「ひとりマイ・フェア・レディ作戦」であります。

    イチイの買ったマナー本によると、淑女ってやつはハンカチを3枚持つらしい。1枚は手ふき用、1枚はレースの飾り用(香水つき)、もう1枚は人に貸す用。よく水を吸うからって、ハンドタオルばっかり持ち歩いていたイチイは、あわててヒーラヒラのレースハンカチを調達。また、タクシーに乗る時は、先に荷物を置いてから腰をシートにおろし、次に両足をそろえてくるりと回りながら車内に乗り込むのが正しいのだそう。こういったルールを遵守していると本当に「マイ・フェア・レディ」のイライザになった気分、と悦に入っていたのです。

    話は変わりますが最近、ドラム式洗濯乾燥機を買ったんです。「淑女たるもの、洗濯物の皺をパンパン伸ばす、なんてやってらんないわ」というわけでもないですけれど、家事が格段にラクになると聞いたもので。配送当日は、設置・据付けのために、業者さんが2人来ました。誤算は、彼らが約束より1時間も早い時間に来てしまったこと。玄関は散らかっているわ、古い洗濯機の中にまだ洗濯物が入っているわで、恥ずかしい思いをしました。それならまだいいのです。業者さんがせーので古い洗濯機を持ち上げた途端、目に入ったものに思わず戦慄が走りました。

    (あ、それずっと探してたけど見つからなかったパンツ(下着の方ね)だ……)

    その後、業者さんは見ないふりをしてくれたのか、涼しい顔で新しい洗濯機の説明をしてくれたのですが、イチイはもう気が気じゃありません。それをひったくって永久に誰にも見つからないところへ葬ってしまいたかったです。その後の反省は、「淑女たるもの、念には念を入れるべし」。約束の前日には、すっかり準備がととのって後は寝るだけくらいの用意周到さがあってこそ、余裕のある態度が取れるってものです。

    さて、今回ご紹介する電子書籍は釣り関連。今まで釣りなど、まったくやったことがありません。興味もありませんでしたし、会社の元同じ部署だった先輩に「みんなでカツオの沖釣りしない?」と誘われた時も断ろうかと思っていたのですが、そこでハタと気付いたのです。

    そういや私、魚に触れないんだった。道端でも寝られるワイルドな私の唯一の弱点。ここで本来なら「魚に触れるようになるために釣りに行こう!」なのですが、「魚に触れない淑女な自分を発見するために釣りに行こう!」という、釣り好きの人が聞いたらビックリするような理由で行くことにしました。そこで、一応は釣りの基礎知識でも身につけようと、「釣り」をキーワードに検索し、まさに1本釣りの気分でひっかかった本を購入してみたのですが……。

    「面白すぎる釣りの本」。タイトルからしてちょっと気になる感じがします。そして、編集は「博学こだわり倶楽部」。「倶楽部」という名称あたりに、カルチャーセンターのにおいを感じます。「クラブ」だと若者の響きなのに、「倶楽部」にしてしまうと一気に年齢層が高くなるのはどういうわけなんでしょう。

    まあそんな話はいいとして、この本、てっきり初心者のための釣り入門なのかと思いきや、実は釣りにまつわる雑学ネタの本だったのです。つまり「面白すぎる釣り」の「本」ではなく、「面白すぎる」「釣りの本」。「面白すぎる」は「本」にかかっていたんですねー。いやーやられた。実際に手にとって全体の雰囲気を確かめることができないのは、お手軽な電子書籍の欠点でもあります。

    しかし、目次を見れば、ある程度この本の雰囲気が予測できるでしょう。「つい喋りたくなる面白話がギュウ詰め」のまえがきに始まり、「1度は勝負(バトル)してみたい世界に名だたる巨大魚! 幻の魚!」の第1章、「これで大アタリ間違いなし……世界の珍釣法を一挙公開!」の第4章、「魚好き日本人がこだわるこれがゲットした魚の味わい方」の第6章(しかもいきなりピラニアの食べ方について書いてあったりする)。

    いずれもカタカナを駆使し、ワイドショーの見出しのような精力的な見出しばかり。淑女とは程遠い雰囲気です。今回もやっちゃったよと思いました。でもおとなしく読み進めてみると、内容は軽いノリの知恵袋的な話が多く、「おばあちゃんのぽたぽた焼き」の袋の裏に書いてある小話を読んでしまった後のような、ほんわかした気分が残ったのでした。

    「面白すぎる釣りの本」

    著者:博学こだわり倶楽部(編)
    出版社:河出書房新社
    価格:420円
    データ形式:テキスト/PDF/XMDF
    購入サイト:電子書店パピレス

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