【コラム】

ちょこっとイイブック

5 平安朝のシティハンター - 「陰陽師」(夢枕獏)

    一井おん  [2005/03/02]

    こんにちは。占い大好きなイチイです。毎日の日課は「Yahoo! 占い」の星座占いチェック。別に自分で手相が見れるとかタロットができるとか、そういう「占いオタク」ではありません。ただ、毎日の始まりに「そういうもんか」と、頭に入れておくとちょっと安心するのです。

    「Yahoo! 占い」の星座占いの好きなところは、「今日の運勢」だけでなく、「前日の運勢」「翌日の運勢」が見られるところです。特に「前日の運勢」を見れば「昨日の占いって、本当に当たってたのかよ」と占いに対する査定をすることができます。

    たとえば前日の仕事運に「不安材料が一掃され環境も整う日」などと書かれていて思い当たるふしがあれば、「そういやナ」と占いに対する信頼感が増します。「前日の占い」のページでさらに「前日の占い」をクリックしていけば、えんえんと過去の占いを確認することができます。逆に、「翌日の占い」もえんえんと未来まで。マックスどこまで占えるのかは試したことがありませんが、一定のアルゴリズムを使っているだけなら、論理的には永遠に「Yahoo! 占い」は決められているのでしょう。なんだかすごいと思いませんか?

    しょせんアルゴリズム、とわかっていつつも、「Yahoo! 占い」に対するイチイの依存度はかなりのものです。たとえばショッピングに行ったとき、紫かベージュか、はたまたピンク色のニットを買うべきか思いあぐねてしまったとき、イチイはすかさずケータイで「Yahoo! 占い」を見に行ってしまいます。で、「ラッキーカラー」を見て買ったりするのです。結構キてるでしょう。

    要するに、自分の中にこれだ! という確固たる基準がないので、占いでもないと物事を決められないのです。マークシート式のテストが難しすぎて、エンピツ転がして答えを決めるのと一緒。お昼のランチが日替わりパスタでもペスカトーレでも和風きのこスパゲティでもいい、などと思いながらフニャーと生きてまいす。

    きわめつけには「おみくじで恋人と別れる」という高等テクを使ったこともあります。運命のおみくじは、明治神宮にて。あそこのおみくじって、吉凶が関係なく、和歌なんです。それはン年前、そろそろ別れようかなと思っていた彼氏と明治神宮に初詣に行き、ひいたおみくじに書かれていた和歌の解説には「誰もわからないだろうと思っていても、神様はちゃんと知っていますよ」といったことが書いてありました。しかもシメには「明るい生活は秘密にしないことから」とまで。これはもういくしかないだろう、とその日の夜には別れ話を切り出してしまった次第です。ウソみたいなホントの話。それからというもの、和製占いの底力に対する信心があります。

    さて、和製占いといえば、最近ちょっとそのブームも落ち着き気味の感がありますが、Webで見られる占いでも地位を確立しつつある陰陽道があります。そして陰陽道のスーパースターといえば、なんといっても安倍晴明。さまざまな関連書籍が出ていますが、やはりここはマンガ化もされ映画化もされた、夢枕獏さんの「陰陽師」のウェブ文庫版を今回読んでみました。

    現代でいう「安倍晴明」のイメージといえば、魔法のような術を使って闇の領域で暗躍するスーパーエスパーみたいな存在ですけれど、陰陽師ブームの原点となった夢枕獏版「陰陽師」の安倍晴明は、意外に地味です。物の怪を封じ込めるのに髪の毛をヒモ代わりにしたり、「結界を張っておいた」といって、肝心の結界を張る呪文を唱えるようなシーンはカットされていたり。髪の毛をハリみたいにして飛ばしちゃう肉体派のゲゲゲの鬼太郎よりずっと静的で、その分ぐっと謎めいて見えます。

    物語は短編形式で進みます。何編も読んでいると、毎回のストーリーについて、ある程度のパターンにのっとっている構成が見てとれるようになってきました。まず導入は「事件勃発」。欠かせない登場人物は、源博雅という「漢と書いておとこと読む」の代名詞みたいな武士です。心の友である晴明の住まいを訪ね、近ごろ平安朝を脅かす難事件について相談します。大体そのときは2人して何かをツマミに酒を飲んでいます。鮎だったり、キノコだったり。「酒を飲みながらかくかくしかじか」の次は、「ゆこう」「ゆこう」と言って、「本調査」。晴明は博雅の話を聞いている段階ですでに犯人(=物の怪)のアタリをつけていますが、事件被害者の身内の聞き取りなどによってはっきりと事件の原因をつきとめるのです。そして最後には、陰陽道の知識なり技なりを使った解決法で事件は終息、といった具合です。

    こうして見ると、何かに似ていると思うでしょう。そう、実は、探偵ミステリーそのものです。事件があって、調査があって、真実の判明があって、解決シーン。金田一少年とか古畑任三郎とか刑事コロンボだとか、あのへんのミステリーのフレームワークと一緒なのです。ただ犯人が人間じゃないってだけ。実際、当時の陰陽師というのは、官人であり祈祷師であり医者でありの「何でも屋」だったそうです。そういったシティハンター的な要素を筆者の豊かな想像力で膨らませて、一大ブームのもととなる呪術系ミステリーとなったんですね。

    夢枕獏さんの「陰陽師」を読んだせいか、現代で「安倍晴明占い」なんていうのが出ているのを見るとどうもチグハグな印象を感じます。だってシティハンターじゃんねえ、と思ってしまうのです。でも、同じ「セイメイ」でも姓名判断の場合は別。子供を生む予定もないクセに、えんえんと探してしまうくらい、盲信的にまいっているイチイです。

    「陰陽師」

    著者:夢枕獏
    出版社:文藝春秋
    価格:473円
    データ形式:独自形式(専用ソフトウェア使用)
    購入サイト:eBookJapan

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