【コラム】

ちょこっとイイブック

3 しょっぱいバレンタインに - 「たのしい・わるくち」(酒井順子)

    一井おん  [2005/02/16]

    こんにちは。最近自分にダメダメ言ってばかりのイチイです。酔ってコンタクトをなくしてダメ。会社のイントラネットのパスワードを3回以上間違えてロックされてしまいダメ。風呂の中でうっかり寝てしまい、23才なのにあやうく孤独死寸前になってダメ。「落ち着いてる」「なんか英語できそう(??)」などと言われたりするのですが、こんなイチイが実は「ダメッ子」だと知る人は一体どれだけいるのでしょう。

    エブリデー・イズ・ショッパイ・デーな日々を過ごしていますが、最近の輝け! ザ・ショッペストなトピックといえばバレンタインデーです。バレンタインといえば、めんどくさがりなりに毎年何がしかの手作りをしています。チョコレートを溶かしたり、ラッピングを工夫したりする一連の作業は、年1度の行事みたいなノリでなかなか楽しいものです。

    しかし、今年はできなかったんです、手作り……。事の発端はバレンタイン2日前。ででんとスケジュール帳を埋めた文字は「秋葉原」でした。大学時代のゼミの後輩Nクンが「パソコンを買い換えたい」と言うので、少しばかり人より詳しいイチイがプロデュースすることに。「安い出来合いPCをすすめておくか」と、午後セットアップをして夕方には帰れるだろうとタカをくくっていました。当日昼過ぎにNクンが「メモリ1ギガ積んで、見た目にもこだわりたいっス!」と言うまでは……。

    というわけで、お菓子手作りのはずが、パソコン手作りの休日に。しかも、人の予算だから、と調子に乗ってPrescottコアのCPUを購入。ビスコッティでも作りたいのにプレスコットなんて、トホホ。

    ところが事態は泣きっ面に蜂、マシンが起動しないのです。OSのセットアップ画面までいったのですが、突如「CPU is overheating.」というエラーメッセージを表示して電源が落ちてしまいました。最新CPUはアツすぎた?

    とCPUファンをもう1度付け直してみましたが、女手には固いのでしっかりツメがハマッているのかわかりません。タイムアウト。終電です。「相性の可能性もあるからサポートセンターに持ってってみよう」と提案すると、就職活動中で多忙のNクンは「月曜と土曜しかあいてないんス」とのたまう。アタシ土曜あいてない。ということは……バレンタインも秋葉原ですか!!

    14日は、仕事を早めに切り上げて秋葉原へ行きました。上司にデートと勘違いされたらどうしようと思い、わざと「いやーサポートセンター電話つながらなくって……」などと言ってみたりした自分、悲しかったです。

    結局PCのハードウェア的には何ら問題なく、BIOSの設定を変えたらあっさり起動しました。このために苦戦して、やっぱり終電に。歩いたら間に合わないのでNクンのチャリンコを借り、千葉の閑散とした夜の街を爆走しながら、今アタシ最高にダメッ子!! と思うのでした。

    ダメダメ言ってる自分にさらに喝を、と今週選んだ電子書籍は今「負け犬の遠吠え」でブームの酒井順子さんのエッセイ集です。その名も「たのしい・わるくち」。美人、ブス、自慢しい、やり手、おっちょこちょいなどの女のコズルイ特性のそれぞれを、酒井節で斬る!

    というものです。ブスが嫌いなくせに「あの子、すっごくいい子なの」とひた隠しにする「ブス隠し」や、酔った男の子を「大丈夫? 外の空気でも吸う?」と外に連れ出して寝技に持ち込む「心配症」など、普段ばく然とこうだなーと思っていたことを、明快な言葉でバッサバッサと斬ってくれるので、「あるあるー!」と爽快な気分になれること間違いなしです。

    不思議なのは、本のタイトルこそ「わるくち」ですが、「悪」の香りがしないのです。初めは、最近流行りの『アンアンの恋愛特集に出てそうなおねーさま』にガツンとやってもらいたい、ギブミー 悪口! というマゾヒスティックな下心で読んでみたのですが、「わるくち」を読んでいく内に、みるみる浄化されていく気持ちすらしてくるのです。どうして?

    それは、結論から言ってしまうと、酒井さんが「コズルイ特性」のどれに対しても、「イケナイ」とか「キライ」とかいう言葉を使っていないからです。ただ客観的に分析した結果を、「最近の女ってこーんななのよね、私は違うけど」というスタンスで述べているからだと思います。それはまるで、鋭いメスでスッスッと腹をさばかれている感じ。でも、明快な文体やぶっちゃけたたとえ話という「麻酔」が効いているため、むしろ痺れるように気持ちいい!

    というわけです。しかもこの名医は、患者に対して「治療は不要」と思っている、むしろ若干「うらやましい」とさえ思っているのではないか、そうイチイは感じ取りました。だから読む側は前向きになれるんです。

    ところでこのエッセイ集の中では「おっちょこちょい」、これが自分にとっていちばん思いあたるふしのある特性でした。「アタシってこんなにおっちょこちょいなのぉ」とヌケサク加減をアピールすることで、相手を優位に立たせて「カワイイなぁ」と思ってもらっちゃおうという、酒井さんいわく「この世で最も無難な、そして最も女向きの」短所です。

    普段意識していませんでしたが、なるほどと思いました。CPUにシリコングリス塗り忘れても、マザーボードで指切っちゃっても、「おっちょこちょいなんですぅ」って上目づかいで言ってみれば万事オッケー、許されるんだ!

    この本を読み終わる頃には、イチイはすっかり「ダメッ子」ではなく、「ブリッ子」キャラへと転身しようと決意を固めるのでした。

    「たのしい・わるくち」

    著者:酒井順子
    出版社:文藝春秋
    価格:420円
    データ形式:ドットブック
    購入サイト:電子文庫パブリ

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