世の中には、人工衛星を見るという趣味、がございます。そして、さらに写真を撮影しようなんてことまでやられています。あの、はやぶさ2探査機も接近時に観測しようなんてキャンペーンまで行われていますね。どうしたら人工衛星を見られるんでしょうか? 初歩の初歩をご紹介します。

さて、いきなりですが、はやぶさ2探査機は、肉眼では見えません。でも、肉眼で見える人工衛星はけっこうあります。最初に、はやぶさ2について、あとで、肉眼で見える人工衛星についてご紹介します。見えない話を聞いてもしゃーないや、という方は、前半を飛ばしてお読みくださいませー。あと「肉眼で」見えないわけですが、「望遠鏡なら」見える可能性があります。でも、ふだん望遠鏡を使い慣れていても、ちょっと難しいと思います。

さて、はやぶさ2探査機が見えない、というと、「えーー? あの、(先代の)はやぶさ探査機、すごく明るく見えたんじゃないの?」と言われそうでございます。はい、確かに、はやぶさ探査機は、オーストラリアでまばゆいほどにかがやいた様子が、いまでもNECさんのCMなどで見られますねー。満月の明るさほどに輝いたそうでございます。いいなー、見たかったなー。

ところが、はやぶさ2探査機が、地球に接近するときの、予想される明るさは、都会で見える一番暗い星の、さらに、1000分の1以下の明るさなんだそうです。天文にくわしい人なら10等~11等くらいと予想されているという情報がよいでしょうね。月とスッポンもいいところです。この差は、光りかたの違いなんですね。

  • はやぶさ探査機: 大気圏に猛スピードで突入し発光。流れ星のデカイ版
  • はやぶさ2探査機: 太陽の光を反射することで見える。月の超ちっちゃい版

流れ星は、数ミリくらいでも、楽々肉眼で見える明るさになります。秒速数十キロと、新幹線の20~100倍ものスピードで大気圏に突っ込むからですね。しかし、はやぶさ2探査機のように、太陽の光を反射するとなると、大きさと距離が問題になります。はやぶさ2探査機は、地球に接近することでスピードをあげる「スイングバイ」をします。このとき、地球の直径の3分の1まで近づくのでございます。12月3日の午後7時ごろに、太平洋上空で最接近しますが、そのちょっと前に、日本上空を通過します。そこが狙い目ということなんですね。はやぶさ2を運用するJAXAのサイトに情報が掲載されています。おっと大塚実さんが、マイナビニュースにスゴイ記事を書かれていますな! 

ちなみに、はやぶさ2探査機の大きさは両翼6m×2mくらい。まあ、ちょっと大きめの自動車くらいですかね。それが接近時で3100kmですから「3100km先の自動車が見えるか?」という話になります。

ただ、それでも、ふだんは何千キロではなく、何百万キロ、何千万キロという距離にあるわけですから、見るチャンスには違いありません。初心者用の一般的なレンズの直径が7cmの望遠鏡を使うと、目で見える100倍。これだとちょっと足りませんが、マニアが持つ20cmのものなら1000倍くらいのものまでとらえられます。見える場所は予想できるので、望遠鏡を決め打ちで狙っておけば、見えなくはなさそうです。でも、ちょっとため息がでてしまいますなー。まあ、マニアが撮影するであろう写真を期待いたしましょう。見えなくても、そっちをむいて応援するってのもありかと思います。日本からだと12月3日午後6時45分ごろに北極星の近所を通ります。10分くらいで45度も東に動きますので、方向注意。

ということで、はやぶさ2探査機は、かなーりハードルが高いわけですが……。

はやぶさ2のイメージ図 (C)池下章裕氏/JAXA

実は見える人工衛星はけっこうあるのでございます。その差は、大きさと、近さと、あとは光の反射しやすさです。たとえば、最大の人工衛星である国際宇宙ステーションは、高度400~500kmとはやぶさ2に比べて7分の1の近さ。そして大きさは、110m×80mもあります。はやぶさ2の500倍以上ですな。こうなると、もうバッチリ見えるというわけです。かなり明るい光の点が、空を2分くらいで横切っていきます。

国際宇宙ステーションの予報もいろいろありますが、JAXAのものをとりあえずあげておきます。仰角と方位と、ちとわかりにくいのですが、仰角が大きいものをねらえば、たぶん、大丈夫です。ちなみに仰角は、頭の真上が90度、中間で45度です。方位も重要ですので、どっちが南か、北か? はある程度検討をつけておきましょう。なにしろ、星がほとんど見えない都会でもわかりますので。

他の人工衛星は、さすがにそこまでわかりやすくはないのですが、かすかな星が、空を動いていくって感じで見えます。Heavens Aboveというサイトでは、任意の場所、日にちでの見えそうな人工衛星のリストが表示されます(リンクでは、東京の場合にしてあります)。都会だと、明るさ(等級)が、2.5より小さく(小さい方が明るい)、高度が高いもの(30度以上になるもの)なら狙い目です。

まずは、わかりやすい国際宇宙ステーションで、そして、慣れて、もうちょっと暗い人工衛星もチェックできるようになったら……うーん、ちょっとマニアになっているかも。

著者プロフィール

東明六郎(しののめろくろう)
科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。