氷砂糖とかキャンディとか、砂糖をかんだり、ペンチで砕いたりすると光るというお話がございます。で、ほんまかなーといっていたら、ググれといわれたので、ググってみました。結果、はあ、なるほど、うむ「口内蛍光灯」か、という結論でございまして…。

「目からビームを出せ」といわれても、無茶もいいところで、光を思い通りに出すのは難しいものでございます。でも、ふだんの生活では、結構ピカピカ光っていることは多いのも事実です。

たとえば、夜、帰宅して玄関のカギをあけようとしますな。カギを差し込もうとすると、カギと鍵穴の間に小さなスパークが走ります。そう、身体にたまった静電気が放電したんですね。最近はやりのライトダウンやフリースを暗闇でぬいでも、ピカっと光ったりします。これまた静電気ですな。

静電気が放電発光をするのは、ひじょーによくあることで、巨大なものでは雷が静電気でおきています。こすれあうのは、高さ数キロメートルにもなる、巨大な雲を作る氷の粒です。夏でも、上空では氷になっておるのでございますよー。ちなみに、これが地球の10倍も巨大な木星の雲だと、高さが数百キロメートルとけた違いですので、その分、すさまじい雷がなり、その放電雑音が、地球上の小型ラジオでも聞こえるほどです。いやほんと。

さてさて、静電気のほかに、身近な光といえば、ガムテープ貼り合わせてはがすとき、剥がれようとしているときの光がございますね。えー、これはちょっと前に流行りました。テレビ番組…えーと2008年のトリビアの泉ですか、便利やな検索エンジン…に紹介されたのですが、思い出したようにネタになりますな。

この件の検証は、いろんな方がされております。えー、なんやマイナビのライバルっぽいところが多いのですが、まあ「シナジー効果」ということで。

さて、このテープを剥がすと…というのは、いわゆる静電気によるのではございません。「摩擦ルミネッセンス」といって、びっちりくっついた粘着面が、急激に剥がれるエネルギーが放電→発光となるものなのでございます。あ、ルミネッセンスってよーするに「光る」なので、摩擦で光るなんですが、これだと静電気と区別がつくにくいので、英語でいきまするねー。横文字には理由があるんだぜ。

さて、最後のらくらく化学実験さんには、この摩擦ルミネッセンスの似たような現象に「氷砂糖を砕くと光ります」としれっと書いています。はい、その通りなのですが、ガムテープですらちと難しい実験、氷砂糖となると、さらに難しい。で、「氷砂糖 砕く 光」あたりで検索すると「やってみた」な人が、実験失敗で死屍累々になるわけです。

理由は、光がすごーく弱いからで、ちょっと前のビデオカメラでは映らんのです。

また「ナイトショット」にしてもダメですね。ナイトショットは赤外線を撮るのですが、発光はほとんど紫外線だからです。紫外線はレンズやフィルターで吸収されやすいので、かなり厳しいのですね。

ただ、そうしたものを乗り越えて、ちゃんと光を見せている実験もございます。後半は、ガムテープ剥がしの実験もあるので、一粒で二度おいしい動画です。

足利裕人さんの実験。Tribo-luminescence of the crystal sugar and the packing tape

ただ、氷砂糖はやはり、ハードルが高いということで、なんかないかなーといていたら「キャンディを噛むと光る」という話しが出てまいりました。で、どーするのーといったら、ググれということだったので調べてみると…うむ、そういうことかでございます。

また、ともあれ実験レシピをご紹介します。

準備

  1. 手鏡
  2. 暗くでき、人が入れる場所(押し入れとか)
  3. ミント・オー・グリーン ライフセーバーキャンディ

1、2は何とかなるでしょうが、3が問題です。米国の定番キャンディで、通販で買えるんですが、お気軽さがちょっとイマイチです。で、ライフセーバー(救命)キャンディというのは、浮き輪型(だから救命)の穴あきキャンディです。それのミント味ってわけですな。

実験

  1. 手鏡とキャンディをもって、暗くなる場所に入る。
  2. 暗闇に3分くらい目をならす。スマホ画面とか見たらダメですよー。
  3. キャンディを口にいれ、がしがしとかみ砕く、それを手鏡でみる。

いやー、カンタンですね。それで光るのが見えます。

以下の動画の1分20秒くらいを見てください

Lifesavers Huge Spark

ドアップ注意

Wint-O-Green tested. It really glows!

「Mint o green lifesaver candy spark」で検索していただければ、いろいろ出てきます。

さて、なんで氷砂糖ではイマイチで、ミント・オ・グリーン ライフセーバーキャンディだと派手に光るのか? というと、キャンディに含まれている香料「サリチル酸メチル」に秘密があるのですな。これは、湿布などにも使われているものですが、蛍光物質でもあります。つまり、紫外線を人間の目に見える光=可視光線に変える性質があるんですな。

紫外線を可視光線に変えるのは、蛍光灯の原理そのものです。つまりは、口の中に蛍光灯が出現していると、こういうことになるわけです。

ちなみに、同じライフセーバーキャンディでも、味が違うと「サリチル酸メチル」が入っていないこともあるので、光が見えません。

著者プロフィール

東明六郎(しののめろくろう)
科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。