世界を席巻した、日本の「カラオケ」。それに必須のものは、音痴でも気持ち良く歌える立役者がエコーですねー。今回は、そんなエコーの歴史のお話です。原価100円くらいでかんたんに作れるエコーマシン工作のおまけつきー。

マイクにしゃべると、声が広がり、長くひびくエコー。音痴を「味わいのある歌」に変える秘密兵器でございます。で、歌だけでなく、エレキギターにもエコーマシンは使われていますし、音響ミキサーとかにもフツーに入っていますね。

エコーは、日本語だと「こだま」。で、こだまといえば、ヤッホーですね。山などでヤッホーっとやると、ヤッホーとかえってくるあれでございます。英語ではyahooですな。某巨大ポータルサイトとの関係は、wikiってくださいませ。

エコーは、反響ともいって、元の音に対して、反射させた音をいいますけれども、さらに、多数回反射させたように感じる効果も指していうようですな。似たようなものにリバーブってのがあるんですが、これは複雑に反射した音がまじりあうような効果をさせていうようです。残響ともいいますなー。違いを表すと…

  • エコー :ワレワレわ レわ レわ レわ …
  • リバーブ:ワレワレわ~~~~

まあ、でも、リバーブはエコーの一種として扱われることが多いし、効果を混ぜることもよくありますので、ここでは一緒くたにおはなしいたします。

これらエコーを人工的に作り出して利用するのは、ふるーくから行われております。テルマエ・ロマエな2000年前のローマ時代の演劇では(もっと前のギリシャ時代も)、劇場でステージを囲むことで、音を一方方向に集め、声がよくひびき広がるようなエコー的効果をねらっていました。コンサートホールは連綿とこの伝統を引き継いでいますね。

似たようなことは、お風呂場やトイレなどでもやれますな。洞窟のなかでも同じことができますので、洞窟コンサートなんかも行われたりします。

ただ、これでは自然の地形や建物がないと、エコーを利用できません。これを持ち運びできるようにしたのがエコーマシンってわけです。

エコーは、元の音に、反射させた音を追加させればいい、つまりワンテンポ遅れた音が出ればいいわけです。元の音はそのままでよいとして、ワンテンポ遅れた音を小さな装置でどう作ればよいか、がポイントですな。

それを解決するのに、1950年代に録音・再生ができる磁気テープが使われました。その名もテープエコーマシンといいます。その原理はこんなもんです。

  1. 録音、再生、消去ができる、わっか状の磁気テープを用意
  2. テープをぐるぐると動かす
  3. 元の音を、テープに録音する
  4. あわせて、元の音をそのまま出す
  5. 録音した音を、テープが少し動いたポイントで再生して出す
  6. 再生ポイントを何個か設けて、元の音を何回か再生して出す
  7. 再生が終わった録音テープ部は、録音ポイントに戻るが、その前に消去

アナログですね。これによって、まあ、デスクトップパソコン程度のサイズのエコーマシンが作られたのですな。そのヒット作が1973年に日本のRolandの RE-101とRE-201。スペースエコーの名前で世界中のミュージシャンや音響効果をする人が使う大ヒット作となったそうです。カタログだけで見たことがあるのですが、6.5万円と8.5万円もする高価な(当時の大卒の初任給ですね)ものでした。いまだに愛用する人がいるそうですし、シミュレーションする装置も出ています。自然な感じが受けていのだとか。

もちろん、テープが擦り切れたり、撚れたりします。ということで、電子回路でこれを替えるということも考えられました。デジタルがない時代は、音をサンプリングするのも一苦労です。そこで考えられたのが、電気をためるコンデンサを使ったBBD回路でございます。BBDってのは、Bucket Brigade Device(Delay)、バケツリレー素子の略で、コンデンサからコンデンサに、電気のバケツリレーをするのですね。回路でちょっと工夫をして逆流を防ぎます。リレーをたくさんすれば、時間がかかる、ということで、音を電気信号に変えて、BBDを通せば、エコー効果が得られるってわけです。これを数100とか数1000とかいう単位でやるのですね。これを使って、ギターなんかにつなぐコンパクトなエコー(ディレイ)が作られました。いまでは、BBDはほとんど出回っていないようなんですが、電子工作にちょっと覚えがある人なら作れるそうでございます。実際、昔はキットでよく売っておりました。

さらに、後世になると、アナログな回路を使わず、デジタルにエコーを作れるようになります。デジタルサンプリングして、それをメモリにためて、吐き出せばいいのですから、原理はカンタンですね。1980年代ころからこれが登場し、いまでは数百円のICを買ってくれば作れてしまいます。もっといえば、コンピュータでエミュレートできますね。だいたいCDのリッピングができるのだから楽勝ですね。AppStoreでは、echoMicとかVocaLiveとかAmpKitなんてアプリがありました。フリー版もあるので試してみてはいかが? iPhoneやiPadがエコーマイクになりまっせー。

というわけで、エコーはどんどん身近になってきたわけですが、もう1つ、すごく原始的なエコーがあるのでご紹介しましょう。これは、カンタンに作れます。長いスプリングを使うのでございます。

では、プチ工作教室。糸電話を考えてみてください。この糸電話の糸をスプリングに変えます。それだけ? それだけ。紙コップのかわりに空き缶を使うとなお良いですね。おためしあれ! スプリングは細い針金を鉛筆などにぐるぐるまいて作ってもいいですね。

このスプリングエコーに、スピーカーとマイクを組み合わせた電気スプリングエコーも使われていました。もちろん歴史は古く1960年代には製品があったそうです。

みんなを幸せにするエコー、万歳。

ローランドが1970年台初頭から1980年代後期まで販売していたテープ・エコーの銘器「Roland RE-201 Space Echo Analog Tape Delay」。画像の出所はUNIVAERSAL AUDIOのWebサイト。2013年11月11日時点で249.00ドルにて販売されている

著者プロフィール

東明六郎(しののめろくろう)
科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。