世界最高峰の栄誉「ノーベル賞」。毎年10月に発表され、12月に授賞式があります。2013年は、日本人の受賞こそなかったものの、ここ1年ほど話題になっていた「ヒッグス場」の提唱が物理学賞になりましたねー。今回は、そんなノーベル賞を楽しむためのネタ知識をまとめておきましょー。

ノーベル賞。オリンピックとならんで、別格級に有名な外国語ですな。はたからみたら平凡な鉄オタサラリーマンである田中耕一さんも、ノーベル賞受賞者となったとたん超有名人であります。まあ、ふだんは知られてなくても、ああ、あの、ってなもんですな。

あ、念のために、田中耕一さんは、大学を一年留年して(まあ、東北大学ですが)卒業し、京都の島津製作所の技術社員(ソニーに落ちて同社に受かった)で、電車の運転席の後ろに陣取って通勤するのが楽しみという人で、タンパク質の分析のための重要な技術を発明したことで2002年のノーベル化学賞を受賞しています。ノーベル賞をとれて嬉しかったのは500系新幹線のグリーン車に乗れたことだそうで、鉄分高いですねー。ちなみに東北大を出ている秀才ですから、そこんところは間違えないように。

ということで、ノーベル賞は、何しろ話題にできるのです。受賞者も田中さんに限らず、いろいろおもしろいのですが、今回は、ノーベル賞そのものを楽しむためのネタ知識をまとめてみました。とりあえず、キチッとしたネタは ノーベル賞のWebサイトにありますので、ホンマかいなと思ったら、そっちを見ていただくとして、どうぞ、ご笑覧あれー。

ネタその1:最初のノーベル賞は1901年。受賞者は有名な…

物理学賞はレントゲンさんその人です。そう、レントゲン撮影に使うX線の研究で受賞したんですね。化学賞はファントホッフさんです。医学生理学賞はベーリングさんで、共同研究者の日本の北里柴三郎(北里大学と慶応義塾大学医学部の創設者)も候補にあがっていましたが、栄誉はベーリングだけのものとなりました。平和賞はアンリ・デュナン、赤十字社の創始者として有名ですね。文学賞はプリュドム、詩人でした。まあ、とりあえず、レントゲンとアンリ・デュナンだけ知っておけばネタには十分かと。

ネタその2:ノーベルさんたった1人の遺産の運用益で続けられている

ノーベル賞は、スウェーデン国王から授与されたりしているので、国がお金を出してやっていると誤解している人をたまーにみかけますが、あれは、全部、アルフレッド・ノーベルさんの遺産の運用益なのです。彼は化学者で実業家、爆薬の研究で巨万の富を得た有名な億万長者でした。そして生涯独身でした。死後の評価(爆薬で大勢の命を奪ったとされる)を気にした彼は、全遺産を、人類の進歩に寄与した人に与えられる賞に使えと遺言を残しました。親族はたまったもんじゃありませんが、税金を引かれたほぼすべてがノーベル賞を授与するノーベル財団の基金となったのですねー。

ちなみに、ノーベル財団が引き継いだ遺産は全体の90%あまりで、3100万スウェーデン・クローナ。現在の価値にすると17億スウェーデン・クローナだそうです。1クローナは15円くらいなので、日本円にすると250億円くらいですねー。ちなみに賞金は各賞800万スウェーデン・クローナです。日本円で1億円あまりということになります。250億。ビル・ゲイツの方がもっと持っているような(ちょっとググったら6兆円とかいう国家予算な金額がでてきました…)。

ネタその3:ノーベル賞は6つある。

理学3賞といわれる(1)物理学賞、(2)化学賞、(3)医学生理学賞が有名ですな。あとは、(4)文学賞に(5)平和賞があります。で、もう1つはというと(6)経済学賞なんですが、これだけイマイチ有名でないですし、話題にならないですね。いろいろ理由はあると思うのですが、日本人受賞者がいないことと(それどころか、欧米人以外ではインド人1人しか受賞者がいない)、この賞だけあとから(1969年)付け足されたからでしょうかね。もっといえば、物理学賞はノーベル賞ではないとノーベルの遺族(兄弟の子孫)が主張しているそうです。

ネタその4:生きている人だけが受賞できる

科学の世界の巨人というと、ニュートン、ガリレオ、ファラデーあたりが思いうかびますねー。ところがぎっちょん、彼らはノーベル賞を受賞するチャンスはまったくなかったのです。というのは、ノーベル賞ができる前に故人になっており、ノーベル賞は生きている人にしか与えられないことになっているからなんですねー。

これによる悲喜劇はいろいろありますが、有名なのは、宇宙の膨張を発見した天文学者のエドウィン・ハッブルさんが受賞できなかったことです。ノーベル賞の決定発表は10月の初旬に行われるのですが、彼は受賞内定していた年の9月28日に亡くなっているのです。

最近では、決定発表の3日前に亡くなった2011年医学生理学賞受賞者のラルフ・スタインマンさん(受賞発表時は故人)が話題になりました。それでも受賞となったのは、受賞者を選ぶ人たち全員が、彼の死亡を知らなかったからという理由でございました。亡くなったのは9月30日、発表は10月3日でした。

ノーベル賞 公式Webサイトのトップページ(2013年10月29日時点)

著者プロフィール

東明六郎(しののめろくろう)
科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。