【コラム】
全世界で5,000万台以上を出荷しているアップルのスマートフォン「iPhone」シリーズ。本体の出荷台数だけでなく、アプリケーション本数も20万本を越えており、その数は任天堂のゲーム機「ファミコン」、「スーパーファミコン」、ソニーのゲーム機「PSP」といった3つのゲーム機のソフト総数をも上回るという。そんなiPhoneアプリ市場で、無料アプリランキング首位を獲得した「JETMAN」の取締役 / クリエイティブディレクター・吉岡章夫と取締役の中路真紀に売れるiPhoneアプリを作るコツを伺った。
――まず、JETMANがどのような会社なのか教えて下さい。
中路真紀(以下、中路)「主な事業はふたつありまして、ひとつはiPhone及びAndroidなどのオープンプラットフォーム向けのコンテンツ企画、もうひとつは携帯や家電などに組み込まれるインタフェースのデザインいわゆるGUI制作です」
吉岡章夫(以下、吉岡)「GUI制作で大切なことは、どのようにユーザーを誘導し、どの程度その場に滞在させることができるかということです。そういった面でiPhoneアプリのゲーム制作と我々のメインの仕事であるGUI制作は根底が一緒なんです」
中路「我々の事業はゲーム開発からスタートしましたが、ゲームというのは、ユーザーに長時間滞留させて、楽しさを体験させるためのアイディアをぎっしり詰め込んだコンテンツなので、現在は、その開発ノウハウやアイディアをゲームプラットフォームに留まらず、教育や広告や電子書籍など他の業界に、どう広げていこうかと模索しているところです」
――広告目的ではない無料アプリを作る理由を教えてください。
中路「うちの場合、広告アプリに利用できそうなアプリを1度無料でリリースしてから、それを企業に売り込んでいます」
――一度無料でリリースするのはなぜですか?
吉岡「企業も具体的なマーケティングの数値を提示しないと、あまり積極的には採用してくれません。なので、無料アプリがプレゼンテーションという意味あいをもつわけです。そして採用してもらえば、その開発費をいただけるといった流れですね」
――iPhoneアプリの場合、有料のものであっても115円や350円と比較的低価格な印象を受けます。
吉岡「AppStoreが立ち上がった当時は、今よりも高額なアプリがあったのですが、ユーザーから『これは高い』といった声が出始め、その結果、今では暗黙の了解で115円や350円のクオリティがある程度決まっていますね」
中路「医療の専門家しか読まない電子書籍などに関しては、1万円前後の高額なアプリもありますけどね」
吉岡「ビジネスモデル次第といってしまえばそれまでですが、エンターテインメントカテゴリのアプリケーションで1,000円近い金額を設定することは考えにくいですね」
――なるほど。この金額設定で制作会社としてiPhoneアプリで利益を得ることはできるのでしょうか?
吉岡「現段階では厳しいと言わざるを得ませんが、利益を出す方法はあります。いわゆるBtoCだけを考えてはいけないということです。ユーザーからアプリ代金としてお金をいただくには限界があるので、例えば弊社で制作したアプリ『パラノーマル・アクティビティ』ではアプリを通じてユーザーを誘導し、販売促進を行い、そこから利益を得る仕組みになっています」
――売れるアプリを制作するにはアイディア出しが大切になると思うのですが。
吉岡「一番最初に考えることは、『iPhoneらしさを考える』ということです。ゲーム機でもなく、電話でもない。ではiPhoneでどんな体験させたらユーザーが喜んでくれるかなと」
――デバイスに合うアイディアを出すということですね。
吉岡「そうですね、iPhoneでこれをやったら面白いんじゃないのかという切り口からアイディアを出していきます」
中路「そのためには、まずiPhoneを知り尽くしている必要がありますよね。斬新なアイディアを思いつく人は大勢いると思うのですが、まずiPhoneというデバイスの特性を知らないと何が実現できるのかもわかりませんよね」
吉岡「また競合他社がどんなアプリを出しているかなどもかなり調べます。もし面白いアプリがあれば、その要素も次のアプリ開発に取り入れていきます」
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同社の最新アプリ、運行通知アプリ「鉄道むすめ・三陸鉄道」(価格:450円) |
――『iPhoneらしい』アプリとは具体的にはどういったものを指すのでしょうか。
吉岡「わかりやすい例でいうとPSPだと十字キーと、6つのボタンを使って操作しますよね。この操作方法をそのままiPhoneに移植することはうちでは絶対に有り得ません。なぜなら元来iPhoneの操作は指です。なので、アプリの操作方法もそれに合わせてデザインしていきます。このあたりはGUIの開発に近いですね」
――御社では、電子書籍アプリ「someone」など、数々のヒットアプリを生み出しているわけですが、ずばり売れるアプリを作るコツを教えてください。
吉岡「あまり詳しくお教えすることはできませんがアイコンですね。アイコン制作に力を入れるべきです。App Storeではアイコンしか表示されません。まず、そのアイコンに興味を持ってもらわないことにはアプリの内容すら読んでもらえないのですから」
――iPhoneアプリ開発における最近の傾向を教えて下さい。
吉岡「今、一番注目されているのは、ゲームではなく、ひとつのメディアとしてこれまでになかった切り口をアプリにもたせることですね。これはiPadアプリですが、VolkswagenのiPadアプリなどが良い例です」
――今後、アプリ市場がAndroidに移行していくことも考えられますか。
中路「近年、プラットフォームの寿命と旬の周期がかなり短くなってきてます。我々はプレイステーション初代から常に新しいプラットフォームの開発に挑戦してきて、今はiPhoneアプリ開発をやっていますが、iPadが発売されてからは問い合わせがiPhoneからiPadにガラっと変わりました。iPhoneの場合はエンタメ系の問い合わせが多かったのですが、iPadでは教育や、医療、出版といった幅広い業界から問い合わせがありました。デジタルプラットフォームだけではなく、業界間のコンバージェンスがすごい勢いで進んでいるように感じます。また、Androidに関しても様子を見ていますが、あと2年くらいは普及するのに時間がかかるだろうと、これまでの経験測から考えています」
常に最新機器で活用できる映像制作を教えるデジタルハリウッド
今回お話を伺った吉岡氏、中路氏のおふたりは、ともにデジタルハリウッドの卒業生だ。そんなおふたりが感じているデジタルハリウッドに通うメリットとはなんなのであろうか。
吉岡「我々はデジタルハリウッドの2期生だったので、かなり初期の卒業生なんです」
中路「私は、とある大手カメラメーカーに勤めていたのですが、CGを勉強したくてデジタルハリウッドに入学する前日に会社をやめました」
吉岡「我々の時代には、"CG制作"に関して『これだ!』という閃きがあったんです」
中路「その当時、CGをちゃんと学べるのはここしかありませんでしたし、結果、ここでCGを学んだおかげで人生が大きく変わりました。モチベーションの高いクラスメイトが多かったですし、今でも互いに情報交換を行っています」
撮影:石井健
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