【コラム】
テレビドラマ『絶対彼氏』や『乙男』、スポーツ情報番組『すぽると!』など、これまでは主にテレビ番組のCGデザイナーとして活躍してきたCGクリエイター・松田圭太が監督、脚本、VFXを務めた映画『エレクトロニックガール』。この映画は、CGを多く用いた作品では異例とも言える、低予算(宣伝費含み600万円)で制作された作品だ。また、主役であるアンドロイドのナナは、映画初主演となるグラビアアイドル・小泉麻耶が務めている。この作品の松田圭太監督と主演の小泉麻耶に話しを訊いた。
――この作品の制作期間を教えてください。
松田圭太監督(以下、松田)「2006年末ごろに、この作品の企画が立ち上がり、映画の完成は2008年の5月だったので、制作期間は約1年半ほどですね。撮影自体は2007年10月に6日間のスケジュールで行いました」
――CG中心の作品は撮影後のCG制作にかなり時間を要するのではないかと思うのですが。
松田「そうですね。予算が少なかったので、CG制作を外注できませんでした。最終的には何人かに手伝ってもらいましたが、全450カットのCGカットのうち、400カットを自分の会社で制作しました。そのため、映画のCGを制作する期間はテレビ番組の仕事をすべて止めました。10月に撮影が終わって、11月は映画以外の仕事をすべてストップさせて、1カ月間集中的に制作しました。12月はテレビの仕事が繁忙期に入るので、テレビの仕事を行い、年明け1月、2月に再度テレビの仕事をストップし、作業しました。そのおかげで2月までに、ほぼ映像を含むCG制作は完了しました。あとの期間は、音楽が仕上がってくるのを待っていたという感じですね」
――普段の仕事もある程度こなしながら、作品を仕上げていったんですね。CG制作もそうですが、映画制作する際、どういったツールを使っているのですか。
松田「CG制作はオートデスクのCGソフト「3D Studio MAX」を使っています。そのほかにも、アドビ システムズの写真編集ソフト「Photoshop」やグラフィックス描画アプリケーションソフト「Illustrator」、ビデオエフェクトソフト「After Effects」も使いました。映像編集などはアップルの「Final Cut Pro」、カラーグレーディングも同じくアップルの「Color」で行いました」
――現在、映画制作では、フィルムとデジタルの撮影するふた通りの撮影方法があり、同作品では、デジタルを採用されていますね。フィルムでの撮影に対してはどう考えていますか。
松田「私の場合は、制作費が多くてもデジタルで撮影すると思います。フィルムで撮影すると、テレシネしてキネコするといった作業が必要になり、お金がかかります。そのため、最初から映像素材がデータであった方がいいと思うんです。貧乏性になっちゃってるんですよ(笑)。デジタルで撮って、その浮いた予算を何か別のものに使った方がいいかなと思うんです」
――松田監督はこの作品を制作するにあたり、映像表現としてどういった部分に工夫したのでしょうか。
松田「実は、海と家とグリーンバックの前でしか撮影できなかったのです。研究所からナナが逃げていくシーンも外では撮れませんでした。街並みなどを現実味を持たせつつCGで作るには、それなりの労力が必要になります。そこには勝算がないなと思い、映画『ルネッサンス』(2006年)で、背景を白黒にして街並みを描いてるものがあったので、こういうタッチで背景を描く場合、日本なら漫画だと思い、背景を漫画にしました。それに合わせて小泉さんにも白黒のメイクをしてもらい、漫画の質感が出るようにしています」
――映画『ルネッサンス』をヒントに新たなアイディアを盛り込んで作品に生かしたということですね。このほかにも映画を作る際、松田監督が影響を受けた監督はいますか。
松田「尊敬できる監督はロバート・ロドリゲス監督ですね。自分が落ち込んでいるときにロドリゲス監督の本を読むと力が湧くんです。ロドリゲス監督は初めて映画を制作する際に、人体実験のアルバイトをして70万円ほどのお金を貯めたそうです。またロドリゲス監督は監督以外にも、CG制作や、音楽制作もこなします。とにかく、できることはなんでも自分でやるというスタイルなんです。ハリウッドスタイルの映画製作では、色々と監視がある理由で、テキサスに自分のスタジオを作って、『シン・シティ』 (2005年)などの作品を制作しているんです。そういう精神にすごく共感しますね」
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映画『エレクトロニックガール』 |
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感情を持たない人型アンドロイドのアイドル・ナナ(小泉麻耶)は、偶然の事故で自我が生まれ、処分対象となってしまう。生まれた研究所を逃げ出したナナは、荒廃した街で幸紀(綾野剛)と出会い、徐々に人間らしさを身につけていく。 |
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――この作品では、CGが多く用いられていますが、小泉さんはこれまでCGに対してどういった印象をもっていましたか。
小泉麻耶(以下、小泉)「パソコンが苦手で、CGと聞いてもピンと来なかったんです。でも、監督のデモリール(様々な作品のダイジェストをまとめたもの)を観たら、よくテレビで観ている番組ばかりだったので、実はCGを使った映像を何気に観ていて、よく知っていたんだなと思いました(笑)。この作品を通じて監督と出会い、長時間かけて緻密な計算をしながらCGを制作しているのを見て、CGに対する見方が変わりましたね」
――小泉さんはこの作品が初主演作品ということですが、CG作品の特徴であるグリーンバックでの演技に対し、戸惑いはありませんでしたか。
小泉「監督自身がCGディレクターであることをデモリールを観て事前に知っていたので、ほぼフルCG作品になることはわかっていました。なので、そこはあまり気になりませんでした。むしろ私のなかでは、演じる役が人間でなくアンドロイドのアイドルであるという設定に戸惑いました」
――アンドロイドの演技指導はどのようにして行ったのですか。
松田「目、腰、足と、上から順々に動かしていくことや、瞬きをしないこと、斜めに歩かないことなど、ナナの基本的な動作方法を予め全部決めたんです。また作品のなかでナナは自我(心)が生まれるので、それに連動して、第1段階、第2段階、第3段階と、動き方も徐々に自然になっていくようにしました。実際の撮影は順撮りではなかったので、「ここは第一段階のナナだから」、「ここは第二段階のナナだから」といったように撮影前に伝えてから、演じてもらいました」
――小泉さんは、この役柄を演技する上で、何かご自身で意識されていたことはありますか。
小泉「私は、演技が初めてだったということや、本当にアンドロイドという役に対し、資料がなかったということもあり、ナナという人物がどういうものかは、すべて監督のイメージしている世界のなかにしかないと思いました。だから、監督からどれだけナナの情報を引き出せるか、私がそれをどれだけ理解して演じることができるのかということに重点をおいて演じるように心掛けました」
――松田監督のデビュー作品であり、小泉さんの初主演映画であるこの作品の見所はどこでしょうか。
小泉「監督のCG技術です。グリーンバックで撮った映像に、CGを盛り込んで完成した映像を観たとき、こんなに凄いことができる人がこの世の中にいるのかというくらい凄く感動しました」
松田「監督としてはすべてです(笑)。僕が一番得意とする映像面でいうと、予算を逆手にとったCGの使い方ですね。予算が潤沢にあればリアルに作ることはいくらでもできると思いますが、予算の少ない作品でも漫画をモチーフにしたシーンや、戦闘シーンをシルエットにするなど、色々工夫することで、未来の世界観を出すこともできるんです。そういう予算を逆手にとったCG表現は大きな全国ロードショーでは見れない部分なので、そこは是非観ていただきたいなと思います」
様々な出会いを与えてくれたデジタルハリウッド
デジタルハリウッドでは、3D Studio MAX 総合Proコース(現 総合Proコース CGクリエイター 専攻)を受講した松田監督。同校に対してどんな印象を持っているのだろうか。
「今回の映画制作で、CG制作を手伝ってくれたのはデジハリ卒業生でしたし、デジタルハリウッドに宣伝協力をしてもらおう!と言ってくれたのも、私がここでTA(授業のティーチングアシスタント)をしていたときのスタッフの方でした。デジタルハリウッドは、生徒が何か意見を持っていくと、それに対し親身になって考えてくれますし、現役生だけでなく、卒業生に対しても協力を惜しまない学校だと思います」
撮影:石井健
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