こんにちは、織田隼人です。

前回は「ティザー広告」という広告の打ち方を導入にして、男女が商品に興味を持つプロセスに大きな違いがあるという話をしました。異性の視点からは「何で売れるの?」と意外に思う店舗には、異性のことを知るのに役立つちょっとした仕掛けが潜んでいたりします。ふだん何気なく商品を見るときも、その商品が男性向けなのか女性向けなのか意識して見ることで、自分の職場に応用できるかもしれませんよ。

さて、今回はその「応用編」です。新しいコツを交えながら、男女で興味が異なるポイントを2点、解説してみます。

お店に入る基準となるものは?

最初は、「お店を見つける」プロセスで、どのような仕掛けを施せば「あ、良さそうなお店だ」と思ってもらえるか、という点です。

もちろん、男女関係なく重要なポイントもあります。たとえば立地。お店を見つける云々以前に、そのお店の前を通る人間の数は、単純に多いに越したことはありません。

しかし、同じ条件の立地、同じターゲット層の店舗でも、明らかに集客に差が出るケースに遭遇したことがありませんか?

それは、ターゲットに対して的確なアピールができていないからです。

逆も真なり。嫌いなタレントが宣伝している商品に女性はまず手を出さない

前回の話を思い出してみてください。仮にあなたの店舗が女性向けの商品を売っていたとして、お店の前にはどのような仕掛けを施せばいいと思いますか?

「手書きの何か」とか「キャラクターの似顔絵」を配置しようと思ったあなた、正解です。前回お話ししたとおり、女性はどの「人」から商品を買うのかを強く意識します。

その理論をさらに広げれば、女性向けの店舗には「人間がいる、という雰囲気」が大前提であることがわかるでしょう。デパートなどにデカデカとモデルの写真が飾られているのも、人間を前面に押し出すことで女性に興味を持ってもらうための手法です。

対して男性は、異なるところに興味を持ちます。夜の繁華街などを歩いてみれば一目瞭然、すなわち「光るもの、動くもの」です。

ほとんどの場合、「男性」というのは元々狩猟をする方の性別のことを指していました(今では違います。念のため)。特に夜中は、獲物の目が光っているのを注意深く見つけ、追いかけなければいけませんでした。

「光るもの、動くもの」とは、男性が狩猟の際に反応すべきシグナルなのです。現在もその特性が色濃く残っている、言ってみれば「オトコのサガ」というやつです。

「スペック」か「イメージ」か - 男女で差が出る購入動機

本コラムの第1回を思い出してみてください。男性がものを購入するとき、女性がものを購入するとき、その判断基準が異なるのは第1回でお話ししたとおりです。今回は、それを店舗作りに応用してみましょう。

男性は一点集中型。言ってみれば、「自分の欲しい機能を最優先して、あとは多少犠牲にしてもかまわない」という「スペック重視型」です。

この最大の例は家電量販店で、パソコンにせよ洗濯機にせよ、CPUの性能や一度に洗える洗濯物の容量といった重要な部分に加え、消費電力をはじめとする細かな数字が値札の横に並んでいる光景がすぐに脳裏に浮かんでくるはずです。男性向けの商品を売る店舗は、このように「スペックを表示し、比較しやすい」環境にすることが重要です。

さらに、矛盾するようですが男性は視野が狭く、いろいろな商品を横一線に並べての比較が苦手です。比較といっても、買い物へ出かける前にある程度欲しい機能が決まっていることがほとんどで、あくまで「その範囲の中で」比較をするのです。

家電量販店でやたら多く見かける店員さんは、このような特徴を持つ男性を、目的のスペックを持った商品群まで誘導する役目を持ちます。「事前にある程度絞った状態で」「スペックを比較したい」男性にとって、商品に詳しい店員さんがいてくれるとありがたいことこの上ありません。

一方女性は、「全体の雰囲気との調和」を優先する - ここまでは第1回でお話ししたとおりです。このように商品を選ぶ女性に対して有効な店舗とは、「実際にその商品が使われているイメージ」を前面に押し出した店舗です。

たとえば、女性向けの洋服売り場を見てみてください。

女性向けの洋服屋は、陳列棚のスペースが多少削られても、マネキンを配置し、頭の上から足下まで、実際のコーディネートを「見せる」ことを優先していることがわかるでしょう。

職場のPCがWindowsなのに、Macを買う女性が比較的多いのもそのためです。Appleの店舗に行ってみればわかるのですが、家電量販店と違って、自社の商品の雰囲気やイメージを大切にした店舗作りを心がけていることが伝わってきます。

購入基準と店舗作りのコツは表裏一体の関係です。どちらかを知り、応用すれば、両方の要素がうまく回り始めますよ。

前回も今回も、「実際の売り方」を例として多く挙げました。まずは、自分の足で「流行のお店」を巡ってみて、その店舗作り、商品の売り方のコツを視察してみるといいかもしれませんね。

女性をメインターゲットとするラグジュアリーブランドはイメージが重要。スペックや商品説明よりも"それを身につけた自分"をイメージさせるものが多い(たとえモデルとはかけ離れていても…)

(イラスト ナバタメ・カズタカ)

執筆者プロフィール

織田隼人 (ODA Hayato)

心理コーディネーター&経営コンサルタント。心理についての解説の仕事をメインにしながら、経営のコンサルティング業務も行っている。元々は経営コンサルがメインで、マーケティングに関わりながら心理学を学んできた。心理の仕事では特に「男女の心理の違い」や「意思決定」を専門としている。男女の心理の違いを解説したブログに「男心と女心」があり、月間アクセス数は100万を超える。ほかにも心理学を学べるWebラジオやアニメーションも配信している。Webサイトはこちら → 知りたい! 相手の気持ち