前回は、融資の申し込みの際にどのような資料を準備するのかについて説明しました。今回は、融資を申し込む金融機関をどのように探すのか、どのように出会うのかについて解説します。大きく分けて、金融機関側から直接コンタクトがあるケース、借り手側から直接金融機関へコンタクトを取るケース、仲介を依頼するケースがあります。

金融機関側から直接コンタクトがあるケース

テレビ・新聞・雑誌・Web等でニュースを見た金融機関の担当者から、企業の代表電話宛てに連絡がある場合があります。問い合わせ用のメールアドレス宛てに連絡があるのは、稀な印象を持っています。筆者の経験では、帝国ニュースに弊社代表のインタビュー記事が掲載された際、地方銀行の法人営業担当者からコンタクトをいただきました。

金融機関が飛び込み営業する場合もあります。エリア制で営業している地方銀行や信用金庫の担当者は、担当地区を訪問する過程で常に地域の会社の看板をチェックしています。新しい企業が看板を掲げるとすぐに気づき、支店へ情報を持ち帰って帝国データバンクや東京商工リサーチの信用情報を調べます。信用情報が取引基準を満たしていれば、訪問することになります。

金融機関は取引先候補の事前スクリーニングに信用調査会社のサービスを利用していますので、金融機関側からのコンタクトを望む場合は、信用調査会社のインタビュー依頼に応じることが定石です。そして、金融機関からの飛び込み営業があった場合は、一定の信用力があると類推することができます。信用調査会社の調査に応じていないのに飛び込みがあった場合は、手当たり次第の訪問である可能性が残ります。

借り手側から直接金融機関へコンタクトを取るケース

入出金用の預金口座を開いている支店にアポイントを取る、もしくは、融資相談用のフリーダイヤルへ連絡する方法が最もシンプルです。フリーダイヤルの番号は、金融機関のWebサイトを確認すれば掲載されています。

金融機関の法人営業担当者が出席する場に参加する方法もあります。例として、金融機関が主催・協賛するビジネスマッチング会があります。会場に必ず金融機関の担当者がいるので、確実に名刺交換することができます。

生命保険会社が主催する異業種交流会にも、来賓として金融機関の担当者が招かれていることがあり、コンタクトを取ることができます。監査法人や不動産ディベロッパー、公官庁の創業支援部門、信託銀行の証券代行部門等が主催する、懇親会付きのセミナーにも、担当者が出席しているケースがあります。

起業家を集めた展示会であえて来場者を見張り、融資先を探している金融機関の担当者を捕まえる荒技もあります。展示会によっては名刺フォルダで起業家・金融機関・報道機関・事業会社(大企業)・支援機関を色分けしていることがあり、探す際の目印となります。

仲介を依頼するケース

制度融資のあっせんを申し込む際に、窓口となっている商工会議所の担当者へ金融機関の紹介を依頼すれば、日本政策金融公庫を紹介していただけます。また、既に融資をしている金融機関が単独での信用リスク負担に限界を感じた場合(つまり融資残高が大きくなってきた場合)、親密先の別の金融機関を紹介していただけます。

金融機関から融資を受けている知人の経営者に、仲介を依頼する方法もあります。なかには金融機関側から融資を検討している企業の紹介を依頼されている人もいるので、伝手をたどってキーマンを探すことも有効だと思います。

融資を申し込む金融機関の探し方、出会い方についての説明は以上です。次回は、融資を受ける資金の使途について解説します。

※写真と本文は関係ありません

執筆者プロフィール:千保 理(せんぼ ただし)

株式会社情報基盤開発 CFO(最高財務責任者)

ロンドン日本人学校中学部、東京学芸大学教育学部附属高等学校、東京大学運動会バドミントン部を経て、東京大学大学院経済学研究科修士課程企業・市場専攻修了。専門は企業金融(コーポレート・ファイナンス)。生命保険会社のシステム子会社にて勤務した後、東京大学発IT系ベンチャー企業である株式会社情報基盤開発にCFOとして参画。Microsoft Innovation Award 2015にて勤務先が優秀賞を受賞した際のプレゼンター。融資による資金調達を得意としている。