私はかれこれ20年近く、家計のやりくりの取材をしてきました。その中には、貯蓄が1000万円以上ある人も、少なくありませんでした。その人たちが、とりわけ収入が多いというわけではありません。年収300万円台(手取り)というケースもたくさんありました。また、お金を使わないケチケチ生活をして、ギスギス暮らしているわけでもありません。要するに、お金のやりくりが上手なのです。ということは、そのやりくりの仕方を真似すれば、誰でも1000万円貯めることが可能というわけです。ぜひ今日から真似してみてください。

持ち物を減らすとお金が貯まり出す

手持ちのモノを減らして、少ないモノで暮らす"シンプルライフ"が注目を集めています。モノが少ないと家の中がスッキリして、片づけやモノの管理がラクになるだけはなく、実は、お金を貯めるうえでも効果を発揮するのです。

一番の効果は、なんといっても、余計なモノを買うムダ使いがなくなること。手持ちのモノを減らすには、モノを処分する必要があります。お金を出して買ったモノを捨てるときには、少なからず心の痛みを伴うもの。ですから、一度、処分=捨てることを経験すると、また捨てることになる可能性のあるモノは買わないようになります。

処分することは「もったいない」という気持ちと同時に、「スッキリした」という感情も呼び起こします。服がギューギューに詰め込まれていたクローゼットやタンスがスッキリして、着たい服がすぐに見つけられたり、雪崩が起きそうに積み上がられていた本が片づくと、気持ちいいものです。またモノを買い込んで、この爽快感を失いたくないという心理からも、購入行動にストップがかかります。

持ち物を減らすとお金が貯まり出す

モノが減るのに反比例して心が豊かになり、貯蓄が殖える

私たちの親の世代は、「モノがたくさんある=豊かさの象徴」ととらえる人が少なくありませんでした。でも、実際に手持ちのモノが減ると貧しい暮らしになるのかというと、まったくその逆。私が取材したモノを減らして、少ないモノで暮らしている人たちは、貧しいどころか、シンプルライフを楽しんでいました。

いったん思い切ってモノを減らすと、次に買うモノを非常に慎重に選ぶようになります。衝動買いや安物買いがなくなり、本当に欲しいモノをとことん探して、吟味して買うように。本当に欲しいモノなら、多少値段が張っても購入します。なんとなく買ったモノはないので、満足度が高く、長く愛用します。厳選された少ないモノで暮らす"プチ・ミニマリスト"というわけです。

数量的には少なくても、持ち物すべてがお気に入りで愛着のあるモノだったら、心は豊かになるはず。そのうえ、ムダな買い物をしなくなり、お金も貯まれば言うことなしです。

<著者プロフィール>

村越克子

フリーランスライター。学習院大学文学部心理学科卒業。編集会社を経て、フリーに。主婦を読者対象とした生活情報誌を中心に執筆。家計のやりくりに奮闘する全国の主婦を取材し、節約に関する記事を数多く手がける。執筆協力に『綱渡り生活から抜けられない人のための絶対! 貯める方法』永岡書店など。