iPhone/iPod touchは、音楽を制作したり、絵を描いたり、写真を撮影・編集したりと様々なクリエーションに活用が可能だ。これは、音や絵に限ったことでなく、小説やエッセイ、コラムなどの原稿を執筆するライターや作家といった物書き系クリエイターにとっても非常に心強い味方となってくれる。特に、移動中などにふと思いついたアイディアやストーリーを、その場で原稿として入力したいといったシーンでは、iPhone/iPod touchの携帯性と利便性が威力を発揮してくれることだろう。今回は、そんな物書き系クリエイターにお薦めする、iPhone/iPod touchでのテキスト入力を快適にするアプリやノウハウを紹介していく。

iPhone/iPod touchでの日本語の入力については、「フルキーボード」および「テンキー」による入力方法が用意されている。少しでも素早く文字を入力したいのであれば、ぜひテンキー方式、さらにはフリック入力と予測変換使った日本語入力をマスターすることをオススメしたい。手のひらサイズの小さなデバイスであるが故、どうしてもフルキーボードでは、ミスタッチも多くなり文字入力の効率を下げてしまうからだ。テンキーによるフリック入力慣れてきたら、「設定」→「一般」→「キーボード」→「各国のキーボード」→「日本語」で、テンキー以外のキーボードをオフに設定すると、英字フルキーボードとの切替えもよりスムースに行えるはずだ。

iPhone/iPod touchでは、「フルキーボード」による入力に加えて、「テンキー」でも文字入力が可能。素早い文字入力には、ほぼすべての文字を2アクションで入力できるフリック入力&予測変換も必須だ。日本語の入力はテンキーでのフリック入力、英語の入力はフルキーボードと割り切って環境設定しておけば、「地球」ボタンをワンタップするだけで、それぞれの文字入力言語の切替も素早く行えて非常に効率的

iPhone/iPod touchには、あらかじめテキスト入力できるメモアプリが標準で付属しているが、「原稿の執筆時に必須の文字数のカウントができない」、「テキストファイルのバックアップがネットワーク経由で行えない」など、本格的なライティング用途で使用するには少々不安だ。そこでオススメしたいのが、文章の執筆に特化したiPhoneアプリ「WriteRoom」。Macプラットフォームでも定評のあるテキストエディタ「Writeroom」のiPhone版となる本アプリでは、Mac版と同様に入力ボタンなどが一切ないフルスクリーンを使って、文章の執筆だけに集中できる環境を構築できる。また、文字数や段落数のカウントはもちろん、同社が運営するWebサービス「simpletext.ws」との同期により、文章のバックアップや同期も可能となっており、その点においても非常に心強い。

「WriteRoom」は、黒と白の外観デザインを基本としたシンプルなフルスクリーン画面で文章の執筆だけに集中できるiPhone用テキストエディターアプリ。入力画面下部の中央にある「Document Actions」ボタンをタップし、「Doucument Statistics」を選択すると、文字数や段落数などをカウントすることができる

実際に、iPhone/iPod touchを入力した際に、意外と面倒に感じるのが「」、【】、『』、""といった括弧をはじめとした特殊文字の入力だ。小説やエッセイなどを書く場合に、多用されるであろうこれらの文字をわざわざ漢字変換を使って呼び出すには非常に手間だ。そんな時には、ペーストボードの拡張と文字入力を補助してくれるツール「TextClipAnywhere」を活用してみよう。本アプリは、どんなアプリ(標準メールアプリ除く)を実行中でも、クリップボード履歴からテキストをペーストしたり、あらかじめ設定した定型文を挿入できる。頻繁に利用する文章や記号などを設定すれば、日本語キーボードの「ー」、「。」、「、」、「?」、「!」を入力するだけで、いつでも好きな時に呼び出せ、効率の良く文字入力を行える。

起動するごとに自動的に現在のクリップボードの内容が履歴(最大20件/1クリップ最大100文字)として保存される。定型文として「」、【】、『』、""などのよく使う記号を登録しておけば、入力の手間を大幅にショートカットできる

さらに、多くの文章を書く必要のあるクリエイターにとって有用になるのが、短い短縮形を長い文章に置換できるアプリ「TextExpander touch」だ。スニピットと呼ばれる決められた短縮形(文字列)をWriteRoom内で入力すると、自動的に登録済みの文章へと変換されるため、文章のテンプレートや語尾などに頻出するような定型文を設定して使うと非常に便利。また、単純な文字の置換作業だけでなく、面倒なHTML/CSSのタグの入力、シンボル/アクセントの入力、英単語の自動校正などの各種機能にも応用できる点も非常大きなメリットといえる。なお、残念ながらTextExpander touchで登録可能な短縮形は英字のみだが、日本語入力モードでもそのまま利用可能となっている。

「TextExpander touch」では、設定済みの短縮形を入力することで文字入力のスピードを向上。文字入力を行うアプリ側がTextExpanderに対応してない場合は、TextExpander内の「Compose」エディタを利用する必要がある

「TextExpander touch」は、Wi-Fiを介してMac版のTextExpanderと、登録されたスニピットの情報を同期できる。校正辞書として使用するための大量のスニピットを設定したい場合などにもとても重宝する機能だ

これらアプリを活用しながら、快適かつ効率の良いテキストのライティング環境を実現することで、iPhone/iPod touchは物書系クリエイターにとっても欠かせない仕事道具として活躍してくれるはずだ。先日日本でも発売されたiPadにより、ますますテキスト入力なども快適に行えるようになってきている。今後、iPhone/iPod touch/iPadだけで執筆された小説やエッセイが、世の中にお目見えする日もそう遠くないかもしれない。