世界最大のコンシューマーエレクトロニクスショー「IFA2017」にやってきた。あちこちで話題になることが多い各社のスマートスピーカーがこれからの新しい市場を創出する雰囲気に溢れている。そして、スピーカーに限らず、あらゆるものが「AI」をキーワードに再編成されようとしている。

ドイツ・ベルリンで開催されたIFA2017

AIというと身近な例としてアップルのSiriやGoogleアシスタント、マイクロソフトのコルタナといったものが思い浮かぶ。日本ではまだサービスが開始されていないがアマゾンのAlexaもAIの横綱的存在だ。先日は、コルタナとAlexaの相互連携も話題になった。コルタナにAlexaを呼ばせたり、Alexaにコルタナを呼ばせて、それぞれが得意なことを頼めるようになるという。

AIが暮らしの中にはいってくると

おそらくエンドユーザーの中は、スピーカーやスマホといったデバイスの中に、人工知能が入っていると思っている人もいる。ベンダー側も、AIのブランドごとに商品を用意する。IFAでは日本のオンキョー&パイオニアがAlexa用とGoogleアシスタント用のスマートスピーカーを別の製品として発表したが、見かけは違っても基本的にできることは同じだ。スマートスピーカーはそれと対話する人間との接点にすぎない。いわばラスト5メートルを担うインターフェースであって、その先はクラウドにいるAIとつなぐ役割を担うだけだ。でも、各AI専用の製品にした方がわかりやすいからそうなっている。ハードウェアはほとんど同じなのに、アマゾンdashが商品ごとに別のものが用意されているのと似ている。

このことは、たとえばテレビでいうとフジテレビしか写らないテレビ、NHKしか写らないテレビのようなイメージだ。東京で受信できる地上波7局をすべて楽しむには7台のテレビが必要になるということだ。

Googleアシスタント搭載スマートスピーカー「G3」。10月に欧米で発売する

ということは、今後、AIが暮らしの中に入ってくると、たとえば家族の人数分のスマートスピーカーがリビングルームで話しかけられるのを待っているという状況にもなりかねない。一人が異なるAIを使い分けたいなら、その数はもっと増える。

きっと、そういうことは起こらないだろう。スマートスピーカーはたぶん専用機から汎用機になり、設定次第で異なるユーザー、異なるAIへの接続を担うようになるだろう。そのときに評価の基準になるのが、音のよさや、そのデザイン、設定のしやすさといった要素になる。

「スマート」の概念がちょっと変わる?

ドイツ時間2日に発表されたファーウェイの「Kirin 970」

その一方、今回のIFAでは、ファーウェイが世界初のAI専用プロセッシングユニットを内蔵したプロセッサとしてKirin 970を発表し、それが10月16日にドイツ・ミュンヘンで発表される新スマホMate 10に搭載されることが明らかになった。こちらは、ニューラルネットワーク、つまり能の機能の特性を機械上で実現するための計算を支援するユニットだ。ファーウェイではデバイスそのものがAIの機能を備えることと、さらにクラウド上のAIと相互連携ができてこそ、さまざまな未来を実現できると考えているようで、その第一歩としてのMate 10が、どのような見せ方でこの新プロセッサを活かすのかが気になるところだ。

スマホそのものにAIの機能を持たせようというこのアプローチが成功するのかどうか。もしうまく行けば、いわゆる「スマート」の概念がちょっと変わることになるかもしれない。クラウドサービスを前面に出さなかった点でちょっとユニークだ。とはいうものの、とにかく蓋を開けてみなければ何もわからない。

(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)