GFKジャパンが2017年上半期の家電およびIT市場の販売動向を発表した

その中で解説されているテレコム市場の動向について、携帯電話は前年(2016年)から横ばいの1,480万台で、数量構成比でSIMフリースマートフォンはスマートフォン全体の8%を占めるようになったという。こうしてSIMフリースマートフォンが順調に浸透しつつある。

SIMフリースマートフォンは、スマートフォン全体の8%を占めるまでに成長した

スマホ端末を買い換えるにあたっては、ドコモやauといった大手キャリアが提供するものを購入するか、それともSIMフリーのものを量販店などで購入するかの2つの選択肢がある。もし、同じモデルが両方の選択肢に存在するとすれば、確実にキャリアが提供するものの方が安く手に入る。いわゆる「実質×円」と呼ばれる2年間のシバリ期間中に割り引かれる端末購入サポート金と通信費の合算によるものだ。iPhoneなどはその典型だといえる。

一方、キャリア経由では製品を入手できないメーカー製のスマホは、SIMフリー端末を選ぶしかない。ただし、メーカー各社はサポートに力を入れてはいるが、やはり全国津々浦々に展開されているキャリアショップによる手厚いサポートには及ばない。

キャリアで買える端末にはない魅力

格安SIMとも呼ばれるようになったMVNOのほとんどは、ドコモのモバイルネットワークを借りて事業を展開しているので、実際には端末がSIMフリーであるかどうかはあまり気にする必要はないというのも現実だ。困るのは、海外に出たときに、現地のSIMが使えないといったことがある。

ただ、現地事業者のSIMを購入するというのはハードルも高く、時間と手間がかかる。多くのユーザーはローミングですませているのも事実だ。それに、auの「世界データ定額」や、ドコモの「海外1dayパケ」一部地域向けのキャンペーンによる使い放題など、ローミングの価格事情も多少はリーズナブルなものになりつつある。そもそも海外で、そして現地SIMで使いたいというニーズは、たぶん、国民全体の10%くらいしかないと思っている。

それでもSIMフリー端末が浸透しつつあるのは、キャリア経由の端末ラインナップにはない魅力を持つ端末が増えてきているからだろう。先だってもASUSがZenFoneシリーズを刷新したが、ASUSの端末は大手キャリア経由では手に入らない。

HUAWEIのPシリーズの人気もそのことを如実に物語っている。HUAWEIに言わせれば、キャリアからの販売をあきらめているわけではないという。メーカーにとって、キャリアという販売チャネルは決して無視することができないボリュームがあるからだ。MVNOもSIMフリー端末をラインナップして、端末とサービスの両方を提供するようになっているが、これはメーカーとMVNO双方の利害一致によるものだといえる。

携帯電話の料金の内訳を知ろう

端末価格と通信サービスが分離されていれば、消費者は通信費のわかりやすいコスト構造を得ることができる。ただ、分離されていなかったとしても、請求書の明細をちゃんと見れば、何に対していくら払っているかは把握できる。それをしないで、毎月の電話代が高いと嘆いているにすぎないことが少なくない。多くの場合、2年間の割賦で支払うハードウェアの料金が毎月上乗せされているのだから高く感じるのは当たり前だ。仮に10万円の端末を実質2万4千円で入手できるとしても、2年間毎月1,000円を端末代として支払う必要がある。

SIMフリー端末を買えば毎月の電話代が安くなるというのは、ある意味では正しく、ある意味では間違っている。それにMVNOが大手キャリアのネットワークを借り受けて使っている以上、大手キャリアのネットワーク品質を上回ることは絶対にない。どんなによくてもイコールにしかならない。

たとえば、多くのMVNOでは、平日昼休みの時間帯における混雑が悩みだという。著しく通信速度が落ちるのだそうだ。それを他の時間帯並みに補強するには余裕を持ってキャリアから帯域を借りる必要があり、そうすると余分なコストがかかってしまう。他の時間帯は概ね満足できる品質を維持できているのに、昼休み1時間を補強するためだけに余分な帯域を借り受ければ、それはコストにはねかえってくる。それを毎月のエンドユーザー価格に転嫁しなければビジネスは成り立たない。つまり、MVNOに大手キャリアと同じ品質のサービスを求めれば求めるほど、その価格は限りなく同一に近づいていく。

それをわかってMVNOを選び、SIMフリー端末を購入するのならいい。もちろんSIMフリー端末を購入した上で大手キャリアのサービスだけを手に入れてもいい。大事なことは、自分の支払っている金額の明細を知ろうとすることだ。SIMフリーを選ぶことが、賢い消費者への唯一の道ではないことを理解しよう。

この連載も、2014年2月の初回から数えて100回目を数えることになりました。いつもご愛読ありがとうございます。次の100回も、引き続き、よろしくお願いします。

(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)