MVNOのLINEモバイルが新施策を発表した。サービスインから約半年を経て新しいフェイズに入り、サービス拡充、タッチポイント(ユーザーとの接点)、プロモーションに注力するという。

サービスの点では、プランのひとつとしてミュージックフリーの対象サービスをこの夏から増やす。これまではLINEミュージックだけだったものを他の著名サービスも対象に加えるという。また、通話定額プランも開始するそうだ。詳細については夏以降に発表されるとのこと。

エンドユーザーとのタッチポイントという点では、ビックカメラやヨドバシカメラなどの量販店における即日開通サービスを開始する。すでに先行10店舗には大きなカウンターが店を出している。LINEのトークを使ってサポートを受けられるのは同サービスのユニークな点だったが、今後は、リアル店舗でサポートしてもらえるということだ。

プロモーションとしては、女優ののんを起用したテレビCMがすでにオンエアされている。

LINEモバイル 代表取締役社長 嘉戸彩乃氏(左)と女優ののん。2017年3月14日に開催されたLINEモバイルの発表会の一幕

一般への認知度を高めたいMVNO

これまでの半年、LINEモバイルはWebチャンネルのみでサービスを展開してきたが、いよいよその次の挑戦を始めることになる。より多くの人にサービスの存在を知ってもらうための取り組みだ。

当然、これらの施策にはコストがかかる。たとえば大手の三大キャリアは全国津々浦々にショップを展開して手厚いサポートを提供している。また、これ以上知ってもらってどうすると思うくらいにCM展開も華やかだ。また、端末そのものもメーカーと共同開発で、ネットワークの正常稼働のために、端末のインターオペラビリティテスト(相互運用性を確認するテスト)もきちんと実施している。「メガキャリアは料金が高い」というのは、こうしたコストが上乗せされているからにほかならない。

MVNOもビジネスである限り、契約者数を伸ばすための努力は不可欠だ。だが、それは最終的にMVNOがメガキャリアに近づいてしまうということにもなりかねない。デジタルに疎い人は、Googleを開いて2~3語入れてエンターキーを叩けば解決する問題をサポート窓口に電話で問い合わせたりするものだ。高い料金を払っているのだからそれを当たり前だと思っている。

だからきっと、MVNOにも同じことを求めるだろう。競争という点で考えれば、MVNOであっても、その期待に応えられなければ競合他社に負けてしまうことになる。そして、その状況が当たり前になると、究極的にはMVNOもメガキャリアと料金の点で同等になってしまうことにもなりかねない。

MVNOだからこそできること

新生活シーズンを前に、いろいろな知り合いから息子が高校入学だからスマホを与えたいが、格安SIMはどうなのか、といった便りが届く。これまでは、よくわかったユーザーがサブで使っていたMVNOだが、だんだんメインの回線として使われるようになり、認知度も上がってきて、いよいよ普通の人がその存在を気にし始めている。

MVNOが今のビジネスから一皮むけるためには、いろいろな判断が求められる。だが、それはメガキャリアと同じことをやるということ以外にもあるはずだ。メガキャリアからネットワークを調達している以上、ネットワークの点では絶対にメガキャリアに勝てないMVNO。投資と努力で同じにすることはできても、追い越しはありえない。かといって価格で勝負するにも限界があるだろう。

そんな中で、今後のMVNOの判断が問われている。始まったばかりのビジネスなのだ。なんとか破綻は回避してほしいものだ。

(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)