日本エイサーが2-in-1 Windows 10 PC「Switch Alpha 12」とWindows 10 Mobile スマートフォン「Jade Primo」を発表した。PCはすでに出荷済み、後者は8月25日の発売に向けて最終の準備が進められている。

日本エイサーが発売するWindows 10 Mobile スマートフォン「Jade Primo」。スマホにしては横長・巨大なパッケージだが……

同社代表取締役のボブ・セン氏は、現在の業界が少し冷え込んでいることを指摘、その要因はPCにユーザーが求めているものに対して、開発側の焦点がうまくあっていない状況にあるのではないかと考察した。そこで同社は、コンシューマーマーケットではより利便性の高いものを、法人マーケットにはより生産性の高い製品を投入し、Windows 10の利便性を最大限に活かすことをもくろむという。

たとえば、Windows 10 Mobile 搭載の「Jade Primo」は、スマートフォンとは思えないパッケージの大きさだ。本体がSnapDragon808を搭載したハイエンド製品とはいえ、5.5型スクリーンを載せた150gのスマホにすぎない。しかも薄くて軽い。

そのパッケージがこんなに大きくなった理由は、キーボードとマウス、そして本体の充電と有線によるモニタとの接続を可能にするデスクドックを同梱しているからだ。つまり、同社はこのスマホをスマホとしてではなく、PCのようなものとして売ろうとしている。

PCとの価格差はたった2万

ご存じのようにWindows 10 Mobileの特徴のひとつとして、大型のモニタをつなぎ、まるでPCのようにスマホが使えるContinuum機能がクローズアップされることが多い。当然、マウスやキーボードをつなげることができれば、ExcelやPowerPoint、WordといったOfficeアプリをフルスクリーン状態で自在に操れる。当然ブラウザも使える。仕事の内容によってはそれで十分という現場も少なくないだろう。

オープン価格を見てみると興味深い。このスマホのパッケージの想定価格は10万円前後だ。一方、同時に発表された液冷Core i5搭載 2-in-1 PCは、4GBメモリ/128GB SSDのもので12万円前後だ。その価格差は約2万円。ほぼ2割高にすぎない。ハイエンドスマホの価格の高値安定とPCの低価格化がもたらした構図だ。

このことから、スマホを通話もできる小さなPCとして考えるトレンドが出てきていることがわかる。もちろん、Windows 10 MobileのContinuumでできることは、Windows 10 PCでできることに比べれば雲泥の差ともいえるのだが、ある程度のことはできる。この「ある程度」をどのようにとらえるかは、これからの企業における情報システム部の腕の見せ所ということができるだろう。もちろん、従業員が300人以下のSMB市場(Small and Medium Business、中小・中堅企業の市場)でも同様だ。

PCベンダはどう動く?

日本HPも、この夏に発売が予定されているWindows 10 Mobile スマートフォン Elite x3を、それだけで一通りのことができる小さなPCと位置づけて訴求しようとしているようだ。

両社ともに、スマートフォンというよりもPCが本業とも言える企業であり、こうした施策がPC事業にどのような影響を与えるかは、十分に吟味した上でのマーケティングだろう。

日本のベンダとしては富士通がスマートフォン事業を継続しているほか、パナソニックがニッチ狙いでTOUGHPADでWindows 10 Mobileデバイスを提供している。VAIOも両カテゴリにチャレンジする希少なベンダーだ。彼らがどう動くか、そして、NECパーソナルコンピュータや東芝にはまるでその気がないのかどうか。

今後の動向を注意深く見守ろう。ここで業界全体の潮目が変わるかどうかが気になるところだ。

(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)