ドコモがアップルのiPhone SEの発売時に運用されることになっていたFOMAからXiへの契約変更に際しての購入に適用する「月々サポート」の増額金額を修正した。

ドコモのiPhone SEの販売価格(月々サポートの期間限定増額の変更)

16GBモデルの場合、当初は5月31日までの期間限定で10,368円が設定されていたが、それが9720円になる。この修正によって、ユーザーが結果的に支払うことになるiPhone SEの価格は「実質ゼロ円」から648円となる。かろうじて「実質ゼロ円」となってしまうことを回避していることがわかる。

こうした動きは、これからの端末価格の設定が多少は変わることを示唆してはいる。これまでのように、端末価格を大幅割引した上に、月々の端末代金補助も大盛りにして、MNPによる移行や新規契約を煽るといったことがなくなることが求められているのだ。

このドコモの修正施策は、先だって総務省によって策定され、過日、意見募集が行われた「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」に従おうとすることによるものだ。このガイドラインでは、高額な割引を抑制するためにさまざまな提案がなされている。基本的にはユーザーの間で不公平が生じないようにし、MNPや新規、機種変更など契約ごとの支払額の差があまりにも大きくならないようにしようとしている。

648円は合理的な額なのか

ただ、このガイドラインにおける「合理的な額」「行き過ぎた額」といったキーワードには注目しておきたい。実に曖昧だからだ。冒頭の例では、確かに648円は実質ゼロ円ではないが、少なくとも最新製品のiPhone SEの価格としては限りなくゼロ円に近いように感じられる。それがまかり通ってしまっているところが問題だ。

消費者としては高機能な端末を廉価で入手できるのはありがたい。どうしてその恩恵を取り上げられるのかという疑問もわくだろう。それはそれで正論だ。

だが、端末の販売価格は事業者が決める。それを高額に設定しておけば、端末購入補助金は高く見せかけることができる。高い補助金分をまかなって事業者側の負担を抑制するには、元々の通信料金を高く設定しておけばそれでいい。しかしこれではユーザーごとの不公平を生むし、通信料金も安くならない。

通信料と端末価格のわかりやすい区分を

このガイドラインは2016年4月1日から適用されるが、消費者は通信料金と端末の価格、どちらが安くなることを望んでいるのだろうか。もちろん両方なのだろうが、そもそも、その区分がわかりにくくなってしまっていることが現状の問題であることを再確認しておきたい。

つまり、以前から懸案されていた端末と回線サービスの分離についても遅々として進まないことを考えるべきだ。それについてはこのガイドラインの趣旨としても指摘されてはいるのだが、行政が市場価格にメスをいれることへの遠慮が見え隠れしていている点がどうにももどかしい。

(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)