全国津々浦々のキャリアショップが携帯電話事業者のビジネスを支えている。一方で、パソコンは、まれにIntelやMicrosoftと共催でイベントを開いたりするようなことはあるにしても、どちらかというと量販店に頼りっぱなしという状況だ。

だが、ベンダーによっては積極的に自社製品をリアルな場でアピールするチャレンジに取り組むところもある。以前、紹介したレノボの海の家などもそのひとつだ。

今回は、業界初と言われる「Let's note ステーション」を例にパナソニックの取り組みを見てみよう。

ビルB1の吹き抜け広場に面したLet's note ステーション大阪の店舗

大阪駅。というよりも阪急梅田駅と阪急百貨店の間を抜け、JR高架下ショッピングモールESTを過ぎて新御堂筋をわたった梅田センタービルのB1に位置するLet's note ステーション大阪。梅田駅からは約6分の道のりだ。B1といっても、広い吹き抜けの屋外広場となったスペースを囲むように並ぶショップの中のひとつであり閉塞感はない。

昨年の9月に仮オープン、正式オープンは12月からだ。主な業務は、メーカー直の持ち込み修理、対面での購入相談、困りごとの相談など、購入前、そして購入後のショールーム的な機能を提供している。

ここで購入相談の上、その場でWeb購入すると5%オフのクーポンがもらえる

パナソニックとしては、電話での相談だけではなく、顧客の声を直接聞けるサービス拠点をもちたいということもあり、2010年に秋葉原にオープンした「LUMIX & Let's note修理工房」が先行してサービスを開始している。「Let's note ステーション」は、関西圏における、さらに積極的な試みとして事業部直営というパナソニックとしては初の取り組みとなる。

ここに持ち込まれたLet's noteは、即日修理対応を含むメーカー直の持ち込み修理となる。ほとんどの場合は翌営業日の引き渡し、3,000円の特急料金を払えば即日修理も可能だ。量販店などを経由した場合、少なくとも4日程度は要することを考えれば、1泊2日、あるいや当日修理ができるのはユーザーにとってかなりの安心感だ。

Let's noteの開発拠点であり全国規模の修理拠点でもある守口市のITプロダクツ事業部とこのステーション間には、一日3便の定期便が運行されている。クルマで30分間はかからない距離だ。また、守口と隣接する門真市にはパーツセンターがあり、そちらにも5便の定期便がある。基本的にこのステーションでは修理はしないが、修理拠点との頻繁な往来の中で迅速な修理体制が実現されている。

持ち込まれる中でもっとも多い故障は「起動しない」というものだが、ひとことで「起動しない」といっても、その状況はさまざまだ。持ち込んだユーザーと対面した状態で、その原因をその場で的確に判断し、修理拠点に引き継ぐ。

店長の今中孝氏(パナソニックAVC社ITプロダクツ事業部)

店長の今中孝氏は、

「持ち込まれるLet's noteは大事に扱われていることがわかります。かと思えばはっきりいってボロボロの状態のものもあります。いろいろな使われ方があることがこの目で確認できますね。しかも、実際に使ってこられたお客様が目の前にいるので、リアル感はハンパではありません。その対話が製品作りにいろいろなかたちでフィードバックできるのです。

ここでの修理は行いませんが、お客様と対面で故障の状況を確認している中で、その場でカンタンに対処できるようなことも少なくありません。電源アダプタの不良などは、ほとんどの場合、交換や追加の購入ですみますから」

という。

さらに、このステーションには、約15名を収容できるセミナースペースが用意され、その場所を使って月に一度の頻度でセミナーを開催している。各回のテーマは多岐にわたり、技術情報から、商品開発のこだわり、頑丈設計の秘密など、実際に製品を担当している開発技術者や各部門の担当者を講師としてプレゼンテーションをするのだ。彼らにとっても、実際の顧客の反応を直接聞けることは、今後の製品作りにおいて多くのヒントを得られる場でもある。少人数の会話形式で進行されるセミナーは、聞きたいことがその場で聞けると好評だという。

ちなみに、このステーションは年会費1,800円でメンバーシッププログラムを実施、会員に対しする各種特典が用意されている。スペアのバッテリや電源アダプタなどのオプションを購入する場合、量販店での購入よりも安くなる。また、修理に要したのパーツも2割引だ。そして、セミナーの参加は会員限定のサービスとなっている。現在の会員数は約150名。年間で30万円といったところだ。利益のための会費であるとは思えない。

会員になればオプションの電源アダプタや交換用バッテリが2割引に

「ここではLet's noteは売りません。でも、やはり聞こえてくるのはLet's noteは高いという声です。法人向けのアウトレット販売を実施するなどしてお応えすると同時に、ご愛用いただいているパソコンの無料点検サービスを実施するなど、たとえ高い価格でも満足していただき、またLet's noteを選びたいと思っていただけるサービスを継続して提供していきたいと考えています」(今中氏)。

半日コースや一日コースの「無料愛情点検」では外観清掃や簡易ハードウェア検査が無償で受けられる。また、「Windows 8.1あれこれ無料相談会」といったマンツーマンの相談会も実施されている。

困りごと相談では、マンツーマンでさまざまな相談にのってもらえる

「ウェブでしか受け付けていなかったカラー天板交換もここで行います。写真ではイメージがわきにくいのですが、ここには実物がありますから、好みのものを選んでいただくことができます」(今中氏)

実機はもちろん交換用のカラー天板なども展示されていて実際のイメージがわかる

このように、売りっぱなしではなく、売ったあとの市場が製品をどのように受け入れたのかを知り、それをさらに次の製品に活かしていくためのスパイラルが期待される。ユーザーのためでもあり、売る側、作る側のためでもある場の提供。それがパナソニックのチャレンジだ。

(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)