サムスンが世に問うフラグシップスマートフォン Galaxy S5。Galaxy NoteとGalaxy Sという性格の異なる2種類のフラグシップを、半年ごとに交互に更新していく戦略に基づいての発表だ。4月11日から全世界で順次発売されるという。日本でも、各キャリアから夏モデルとしての発売が期待されている。

サムスンのモバイル事業部門のトップ、JK Shin氏がGalaxy S5を発表

予想通りの登場タイミング

MWC(Mobile World Congress) 2014開催初日の2月24日、会場の入り口にはUnpacked 5の巨大看板が設置されていた。Unpackedは、サムスンが歴代Galaxyシリーズの発表イベントにつけてきた名称だ。SシリーズとNoteシリーズでこのイベントが開催されるのが恒例となりつつある。ちなみに、同じ年のイベントについては、Unpacked 5 Episode "n" と nの値が増えていくことになる。

MWC 2014開幕初日、会場の入り口には「Unpacked 5」の看板

会場入り口の巨大看板は、開催2日目には、Galaxy S5のそれに架け替えられていた。つまり、そのMWC初日の夜、Galaxy S5がそのベールを脱いだのだ。

翌日に「Unpacked 5」→「Galaxy S5」へと架け替えられていた

頑固に守られるサムスン哲学

スペイン・バルセロナ市内のイベント会場でMWC開催初日夜に開催されたUnpackedイベントは大盛況だった。ただ、イベントそのものの内容は、過去のUnpakedイベントのような派手な演出もなく、冒頭、豪華な弦楽バンドの優雅なオーケストレーションで、厳かな雰囲気の中でオープニングの雰囲気が整えられた程度といったところだろうか。

また、イベントの進行自体も特筆すべきところはなく、機能と、それが意図する背景が、ストレートに語られるだけだった。

さすがに防水防塵がアピールされたときには歓声が起こった。噂はあったが本当だったのだ。しかも、防水防塵でありながら、バッテリーが交換できるという点に、ちょっとした感動さえ覚えた。関係者の話によれば、サムスン技術者の哲学として着脱式のバッテリをやめることはないだろうということだった。

また、日本の震災を機に、その備えとしてサムスンが提案し、ドコモやauから発売されているサムスン機に搭載された緊急時長持ちモードも、グローバル機にウルトラパワーセービングモードとして投入されたことが明らかにされた。ステージでの説明では、10%の残り容量で24時間の待機が可能になるという。それでもなおバッテリが交換できることは必須だとする同社の姿勢は、本当にスマホを生活の一部としてとらえている、まさに使う人間が作っているというムードが感じられる。

伝統のGalaxy Sシリーズが醸し出す安心感

発表会終了後、タッチ&トライのコーナーで手にすることができた実機は、驚くほど普通だった。防水防塵も指紋認証機能も言われなければ気がつかない。Galaxy Noteに比べて抑えられているスペックを見ると、同社としてのフラグシップはNoteにシフトさせようとしているような雰囲気もある。

その背景には、膨大な既存ユーザーがいるSシリーズは、変えたくても変えられないステージに入っていることがある。おそらく、サムスン機のユーザーは、他社機に乗り換える率が本当に少ないんじゃないだろうか。

たとえば、物理ボタンとしてホームボタンがあり、その両脇にタッチキーとしてのメニューと戻るボタンがある。しかも戻るボタンはホームボタンの右側で、一般的なAndroidとは配置が逆だ。今回、S5ではメニューボタンがタスクボタンに置き換えられたが、それがどう評価されるだろうか。また、これらのボタンはスクリーンの外側に装備されているため、その分、スクリーンに表示できる情報量が、同じ解像度の他端末よりも多い。また、バッテリを交換できる端末は、フラグシップ的な存在感を持つデバイスでは、サムスン機くらいになってしまった。

もし、これらの要素がサムスン機からなくなってしまったら、個人的にサムスン機を使い続けるかどうかはわからなくなってしまう。たぶん、サムスン機はリピーターが多く、その理由はさまざまではあるだろうが、こうした点での差別化が功を奏しているんじゃないだろうか。

サムスンとMicrosoftとGoogleと

そしてイベント翌日、会場の看板はS5のそれに架け代わっていた。だが、会場内に入り、バスケットボールもできるんじゃないかと思うくらいに広大なサムスンブースをのぞいてみても、発表されたばかりのGalaxy S5が見当たらない。並んでいるのは既発売の製品ばかりだ。

巨大なサムスンブース、Galaxy S5は見当たらなかった

4/11といえば、もう残りわずだ。出荷量も半端な数ではないだろうことが想像される。おそらくはすでに完成した実機が倉庫に山積みになっていないことには出荷に間に合わないタイミングだ。実際、イベントのタッチ&トライの会場も広大で、こちらはバスケットボールどころか野球ができそうな広さで、そこには、必要十分な量の実機が用意され自由にさわることができていた。パートナーとの商談に必要であるとはいえ、会場のS4を置き換えるくらいのことは簡単にできたはずだ。

そこにどのような意図が働いているのかはわからない。ほとんどすべてのプレスは、前夜のイベントに参加しているのだから、報道のためには十分な情報が提供されているのだから、影響という点では何もないともいえるのだが、何かに対する「牽制」のムードが感じられたのは気のせいなのだろうか。

Microsoftの方針転換によって、各社がWindows Phoneに取り組みやすい状況ができつつある中で、サムスンは従来からのMicrosoftの重要なパートナーでもある。今年のサムスンがどのような動きをするのか。まだ手の内は明かせないということの一環なのだろうか。S5と同時に発表されたウェアラブルデバイスのGear2がTizenを採用するなど、Googleとの距離感も気になる。その背景に何があるのか。4月の頭、MicrosoftのBuildカンファレンスが始まるタイミングで明らかになるかもしれない。