【コラム】

"できるITエンジニア"のコミュニケーションスキル

3 カウンティング(2) - 実践に持ち込むためのコツ

    林浩一  [2009/08/11]

    本連載では、前回から「カウンティング」というテクニックについて解説しています。

    カウンティングとは、これから説明するポイントの数を最初に示すというテクニックです。聞き手は、事前に全体像をつかめるため、話の内容を理解しやすくなります。

    ポイントの数を示すだけの簡単なテクニックですが、最初は使いこなすのが難しいかもしれません。そこで、今回はこのテクニックを身に付けるためのコツを紹介します。

    カウンティングで書く

    まずは、執筆で活用するためのポイントから紹介しましょう。

    ドキュメントを書くときにカウンティングを使うのは簡単です。書き直しができるからです。

    具体的には…

    書いたものを見直して、ポイントの数を数えてから元に戻って、最初にポイントの数を宣言するように書き直す

    これだけです。この一手間をかけるだけで、ドキュメントの見通しは見違えるほど良くなります。

    副次効果もあります。意識的にカウンティングを行う中で、論理的な文の構成が自然に身についてきます。ポイントを数えるときに、「本当にこの3つだろうか」、「他にないだろうか」、「一緒にまとめられるものはないか」などと考えて、よりよいまとまりのある項目を出すことを心がけるようにするのです。

    このようにすることで、構成が論理的なものになっていきます。ロジカル・シンキングではMECEという考え方があり、「モレなく、ダブリなく」整理しようという話を聞かれたことのある人も多いと思います。この考え方は、カウンティングのスキルの延長線上にあるものなのです。

    カウンティングやラベリング(前回の記事参照)を使った書き方は、英文のレポートでは非常に広く使われている形式です。筆者も英語の論文を書くためのトレーニングの中で、カウンティングとラベリングのテクニックを身に付けました。

    これらのテクニックは、欧米のコミュニケーションの基本であると言えます。ときどき、日本人の書くものは論理的でないとか言われることがありますが、こうしたスタイルにするだけでかなり改善されるはずです。今後グローバルな視野で活躍したいと考える方には必須のテクニックです。

    カウンティングで話す

    続いて、書く場合よりも少しハードルの高い、口頭でのカウンティングの習得に進みましょう。欧米の人のインタビュー記事などを読むと、質問に答えるときに、3点ありますとか、4点ありますとか、前置きして話をしている人がいるのに気づきます。つまり、口頭で即座にカウンティングを行っているのです。

    これはなかなか大変です。書く場合ならば最初に全部書き出してからまとめ直せばよいのですが、口頭の場合はそれを頭の中で、しかもとっさにやらなければなりません。しかし、これができるようになれば、聞いているほうは整理した形で理解できるので、説明に納得感が出てきます。ぜひ身に付けたいテクニックです。

    「自分は答えるのにしどろもどろにならないようにするだけで手一杯なので、とてもそこまでできないよ」と思う方もいるかも知れません。しかし、やってみると何とかなるもので、慣れてくるとそれほど難しいものでもありません。とは言ってもなかなか最初の一歩踏み出すのには勇気がいります。

    そこで、そういう人でも「試してみようか」と思ってもらえる裏技を紹介します。次のようになります。

    とりあえず、「重要なポイントは3つです。」と言ってしまう。言ってから、ポイントを考えながら順に説明して、3つ目を話したらそこで終わる

    これだけです。3つにする理由ですが、たいしたものではありません。あまり少ないと整理された気がしないし、逆に多くなると思いつかないリスクが高くなるからです。この答え方は「またまた病」で続けるのと大差ないのに、聞く方の印象はまるで違います。

    整理できていなくても、とりあえず「重要なポイントは3つです。」と言い切ってみよう。きっとなんとかなるはず。ダメなら後から言い直せばよいのです

    「そんな無茶な。2つしか思いつかなかったり、4つめにもっと重要なことを思いついたりすることがあるだろう」――そんな声が聞こえてきそうです。確かにこれは綱渡りです。念のために、セーフティネットを用意しておきましょう。

    もし、どうしても3つ目が思いつかなかったら、こう言うことにします。

    「もう1点あるかと思いましたが、それほど重要ではないので、ポイントはこの2点です」

    逆に、さらにもう1つ思いついてしまったら、こう言うことにします。

    「そう、もう1つ大切なポイントがありました。それは……」

    書くときとは違って、話すときには書き直しはできませんが、途中で言い直すことは許されるのです。できそうな気がしてきませんか? もちろん、いつも3ポイントでセーフティネットに逃げていては、すぐにネタが割れてしまいますので、毎回真剣勝負でカウンティングの綱渡りをやることには変わりありません。すぐに慣れてきて、本当にできるようになります。まずは形から、です。

    今回はカウンティングのテクニックと、その習得方法を2回にわたり紹介しました。皆さんも是非チャレンジしてみて下さい。

    最初から上司や顧客相手と考えると気が重くなります。家族相手に「今日の晩ご飯のおかずの特徴は3つあります」から始めてみましょう。

    (イラスト ナバタメ・カズタカ)

    執筆者紹介

    林浩一(HAYASHI KOICHI) - ウルシステムズ ディレクター


    富士ゼロックスの総合研究所にて、オブジェクト指向、文書処理、ワークフローシステムなどの研究に従事した後、インターネットでの新規事業の開発に携わる。その後、外資系のXMLデータベース会社にて、企業間取引の電子化に関するコンサルタントを経て現職。コンサルティング部門を率いクライアントにサービスを提供すると共に、そのための新しい手法の開発と展開を進めている。その他、コンサルティング・スキルを持つIT技術者の育成にも力を入れている。雑誌記事執筆多数。著書に『ITエンジニアのロジカル・シンキング・テクニック』(IDGジャパン発行)がある。

    関連したタグ

    新着記事

    特設サイトの情報

      人気記事

      一覧

        イチオシ記事

        新着記事

        特別企画

        マイナビニュースマガジン