日本ヒューレット・パッカード「HP Pavilion Desktop PC s3040jp/CT」

HP Pavilion Desktop PC s3040jp/CT

前面部。カードリーダーのほか、中央部に光学ドライブとUSB、ヘッドホン出力を備える。下部にある「Pocket Media Drive Bay」については後ほど詳解する

背面部。PS/2のほか、USBやサウンド出力周りが充実。テスト機は増設ビデオカードを利用しているが、内蔵グラフィックスを選択することもできる

メーカー製PCでしか得られない魅力を持った製品

日本ヒューレット・パッカードが今年3月に発表した、個人向けPC市場への再参入。それに合わせて発表された製品の一つが本製品である。107×340×276mmというコンパクトな筺体を持つスリムデスクトップPCで、最安構成時6万9300円。米系企業がリリースする製品らしく、最安を低く抑える一方で、BTOによるカスタマイズ性を持たせ、ニーズに合わせて金額に見合ったスペックを自分で作り上げられる魅力を持っている。

一方で、こうした製品はとにかくシンプルであることが多い。例えば、キーボード&マウスはワイヤードのシンプルなもの、ソフトウェアはほとんどプリインストールされていない、など、PC初心者に限らず、上級者でも自作PC並みにスキルやハードウェア・ソフトウェアのアラカルト買いが必要になるといってもいいだろう。

もちろん、こうしたシンプルさを求める向きがある一方で、やはりある程度は購入してすぐに利用できる状況であってほしいと思う場合がある。国内製品の大手メーカーの製品は、そうしたニーズに対する要望に応える向きが非常に強い。では、このs3040jp/CTはどうかというと、「こうなってると嫌だな、と思う部分を徹底的に排除してきたな」という印象を最初に受けた。個人向けPC市場に再参入するに当たり、ユーザーニーズを広く捉え、最大公約数的な部分への絞り込みにかなり気を遣ったことがうかがえるのである。

先に挙げた点をみても、キーボードとマウスは一つのUSBレシーバで利用できるワイヤレスタイプが標準で付属するほか、ジャストホームEXがバンドルされる点なのは独特だ。とくにジャストホームEXという選択は"米系企業製品らしくなさ"を浮き立たせているように思うが、気軽に使ううえでは便利なアプリケーションである。かといって山ほどのアプリケーションがバンドルされているわけではなく、この適度さに好印象を受ける。

付属のキーボードとマウス。レシーバ部は一つで利用できるワイヤレス製品。キーボードはホットキーやメディアキーも豊富だ

Vista Home Premiumプリインストールを選択した場合は、Media Center対応のリモコンが付属する

キーボードのプロパティから、キーボードのホットキーを押したときに起動するアプリケーションを指定できる

ジャストホームEXがバンドルされており、個人ユースの簡単な作業を行える

オプションでMicrosoft Office 2007 Personalなどを同時購入することもできる

「Pocket Media Drive Bay」は一種のリムーバブルケース

さて、冒頭の写真でも触れたとおり、本製品の前面下部には「HP Pocket Media Drive Bay」と呼ばれる独自のスロットが用意されている。ここはオプションの「HP Pocket Media Drive」を搭載する専用スロットである。

HP Pocket Media Driveは現時点では120GBのモデルのみがラインナップされているポータブルHDDで、電源給電可能なUSBケーブルやキャリングケースなども付属するオプションである。これを本製品で利用する場合は、Pocket Media Drive Bayに直接収納することでケーブルレス接続が可能なわけだ。

その実態はUSB接続なので転送速度などの付加メリットがあるわけではなく、あくまでケーブルレスという物理的なメリットにとどまる。だが、HP Pocket Media Driveのほうは専用デバイスではない汎用的な製品として捉えれば、本製品とセット購入時に120GBで1万1550円(原稿執筆時)という価格には魅力がある。

Pocket Media Drive Bay自体の魅力は現時点では強く感じないが、今後容量のバリエーションが増えてこれば利用者も増えるだろうし、接続がUSBである点を活かせば、ここにリモコン受光部内蔵のTVチューナーデバイスを入れるなどの機能面の広がりも可能だろう。今後の用途拡大に期待したいポイントではある。

本体前面下部に備えたHP Pocket Media Drive Bayは、文字通り、オプションの「HP Pocket Media Drive」を収納するためのベイ

接続インタフェースはUSB。ベイ収納時は電源供給などを考えずに挿すだけで利用可能になる

HP Pocket Media DriveはUSB接続のポータブルHDDとしても利用可能。USBを2ポート使って接続することでバスパワー給電で利用できる

IntelだけでなくAMDプラットフォーム製品も

さて、本製品は購入時にある程度のスペックのカスタマイズが可能だ。スリムデスクトップPCということもあって、パーツの選択肢はそれほど多くはないが、CPU、メモリ容量、HDD容量あたりは、本体サイズからみれば無難な選択肢が用意されている。

また、ビデオカードについては、チップセット内蔵グラフィックまたはGeForce 7500 LEという選択肢。GeForce 7500 LEを搭載した場合はプラス7770円という比較的安めの価格からも分かるとおり、ゲーム用途のために選択肢を作ったわけではないだろう。Windows Vistaを利用するにあたって、ビデオメモリとメインメモリをシェアするチップセット内蔵グラフィックを避けたいニーズに対処したものだと思われる。Intel 945G内蔵グラフィックでもWindows Aeroは使えなくはないが、トータルのパフォーマンスを考慮すればローカルビデオメモリを持ち、かつパフォーマンスもそこそこのGeForce 7500 LEを追加して購入したほうが良いように思う。

ちなみに、今回のテスト機は、やや特殊で実際には購入することができない構成になっている。よって、ベンチマークはCore 2 Duo E6420に近い値と見て参考になるかと思う。結果はCPUやメモリ、HDDのパフォーマンスは、この省スペース性を考えれば十分なものだと思う。グラフィック関連はGeForce 7500 LEを搭載しても本製品のウィークポイントとなってしまっているが、3Dゲームを積極的に楽しむタイプではない製品ジャンルということで割り切る必要はある。逆にいえば、このポイント以外は、CPUにお金をかけることができれば、かなりのパフォーマンスを得られるといえる。また、同じ筺体を持ちながら、Intelプラットフォームだけでなく、AMDプラットフォームを利用した「s3020jp/CT」がラインナップされている点もユニークで、好みに合わせて選択するといいだろう。

米系企業がリリースする製品としての良いところと、国産メーカーがリリースする製品の良いところを、うまくミックスさせた印象が強い製品である。一歩間違うと、どちらの良さも中途半端にしか持っていないことになってしまうところだが、本製品は絶妙のバランスを保てている。個人向けPC市場へと復帰した日本HPが、他メーカーとはちょっと違うポジションを得ていける可能性を秘めた、興味深いPCといえる。

本体内部。小型筺体だけあってスペース自体は小さいが、光学ドライブ以外は以外に余裕を持って収納されている。ストレートファン構成の横長電源や、背面方向に直に風を送るサイドフローCPUクーラーなどの工夫が見られる

スロットはPCI Express x16とPCI。GeForce 7500 LEを装着した状態で、このスペース。あまり余裕はない

ベンチマーク結果

PCMark05 PCMark 4817
CPU 5397
Memory 4547
Graphics 2446
HDD 5479
3DMark06 Build 1.1.0 CPU Score 1823
3DMark06 Build 1.1.0
800×600ドット
3DMark 1341
SM2.0 438
HDR/SM3.0 517
3DMark06 Build 1.1.0
1024×768ドット
3DMark 1069
SM2.0 356
HDR/SM3.0 397
3DMark06 Build 1.1.0
1280×800ドット(DbD)
3DMark 733
SM2.0 275
HDR/SM3.0 236
※テスト機構成
CPU : Core 2 Duo E6400
メモリ : DDR2-667 1GB×2
ビデオカード : GeForce 7500 LE
HDD : 250GB
OS : Windows Vista Home Premium

スペック表

CPU Core 2 Duo E6420
Core 2 Duo E4300
Celeron D 360
チップセット Intel 945G+ICH7
メモリ DDR2-667 512MB(512MB×1)
DDR2-667 1GB(512MB×2)
DDR2-667 1GB(1GB×1)
DDR2-667 2GB(1GB×2)
グラフィックスチップ Intel 945G内蔵(Intel GMA950)
GeForce 7500 LE
ディスプレイ オプション
HDD 80/160/250/500GB
光学ドライブ スーパーマルチドライブ(LightScribe対応)
オーディオ HD Audio
有線LAN 10/100BASE-T(X)
無線LAN オプション
Bluetooth なし
モデム なし
Webカメラ なし
メディアカードスロット 内蔵(CF/SD/MS/xD対応)
アナログTVチューナー オプション
拡張カードスロット PCI Express x16×1、PCI×1(いずれもロープロファイル準拠)
インタフェース USB2.0×5、LAN×1、ヘッドホン出力×1、ライン入力×1、ライン出力×1、リアスピーカー出力×1、サイドスピーカー出力×1、センターサブウーファ出力×1、マイク入力×1、デジタル音声出力×1、PS/2×2、IEEE1394×1
本体サイズ 107(W)×340(D)×276(H)mm
本体重量 約6.7kg
OS Windows Vista Home Basic
Windows Vista Home Premium
Office オプション(Microsoft Office Personal 2007)
オプション(Microsoft Office Personal 2007 with Microsoft Office PowerPoint 2007)
その他の主なソフトウェア ジャストホームEX2、Symantec Norton Internet Security 2007(60日間試用版)、BeatJam、MyDVD Basic v9、Roxio Creator Basic v9ほか