「東京は物価が高いので、生活費が高い」または、「地方は物価が安いので、生活費が東京に比べてあまりかからない」と世間でよく言われていることは、本当なのでしょうか。

連載コラム「地方の生活コストは本当に安いのか?」では、ファイナンシャル・プランナーの高鷲佐織が、実際に東京から地方へ移り住んで感じたことを交えながらお伝えいたします。

都道府県別・クレジットカード契約数

現在の日常生活の支払いには、欠かせない存在になりつつあるクレジットカード。財布の中には複数枚入っているという方も多いのではないでしょうか。

東京から地方に移り住んで感じたことの1つに「クレジットカードは使えません。」と言われるお店が多いこと。東京で暮らしている頃に比べて、外出する際、こまめに財布の中の現金を確認するようになりました。そこで、クレジットカードの普及率について、地域によって違いがあるのか、調べてみました。

クレジットカードの年間の申し込み・契約・解約件数を見てみると、平成26年の入会申込件数と契約件数は若干減少したものの、その後は増加しています。逆に、解約件数は平成25年と平成28年を比べると、平成28年は減少していますので、クレジットカードの普及は拡大していると言ってよいでしょう

表1 クレジットカード年間の申込・契約・解約件数

次に、都道府県別のクレジットカード契約数を見てみましょう。 最多契約数は、ダントツで東京の3,120万件、次に神奈川県の2,041万件、大阪府の1,754万件となっていて、人口の多い県が続きます。つまり、人口が多い県は、クレジットカードの契約数も多いということになります。

表2 都道府県別クレジットカード契約件数(平成28年)

人口に対するクレジットカード契約率は東京が一番ではない

では、次に都道府県別人口に対するクレジットカード契約率を見てみましょう。契約件数としては東京都が一番多かったのですが、都道府県別の人口に対するクレジットカードの契約率が最も高かったのは、岡山県の230.5%です。平均すると1人あたり約2枚のクレジットカードを持っていることになります。

表3:都道府県別人口に対するクレジットカード契約率(平成28年/単位:%)
※出典:一般社団法人日本クレジット協会「日本のクレジット統計2016(平成28年)版」
※都道府県別の人口に対する契約率は、平成28年の契約数と平成28年の人口推計数(総務省による人口推計の平成28年10月1日現在の数値をもとにしている)にて算出している

では、岡山県がなぜ契約率トップなのか、明確な理由は不明ですが、第3回のコラムで記載したように、岡山県は可処分所得ランキングで上位ではないので、可処分所得が多ければクレジットカード契約率が高いということではありません。

違う角度から見てみましょう。移住希望地域ランキング(出典:認定NPO法人ふるさと回帰支援センター)では、各都道府県の中で岡山県は、2014年では3位、2015年では5位、2016年では6位と常に上位にあるので、もしかすると、移住希望者が実際に岡山県に移住し、新しい生活を送る際に、クレジットカードの契約をする人が多いのかもしれません。

終わりに

今回は、クレジットカードを取り上げました。クレジットカードは、その場に現金がなくても代金を後払いすることで商品を購入することができ、また支払いを分割することができるなどのメリットがあります。

一方で、財布から現金を取り出して支払うわけではないため、支払いの合計額が把握できず、多額の支払いをしなければならないというようなことにならないように注意が必要です。特に注意が必要なのは、クレジットカードの支払い方法の1つであるリボルビング払いです。略してリボ払いとも言われています。

リボルビング払いとは、クレジットカードを利用した支払残高をもとに毎月の支払金額(元本返済額+手数料)を一定額にする支払い方式です。月々の支払いを一定にすることができ支払いの計画が立てやすいというメリットがあります。一方、支払い回数や期間の設定がなく、支払残高がある限り支払いが続くため、商品ごとの支払い終期がわかりづらく、無計画に利用すると支払いが困難になる場合もあります。また、支払残高に応じて手数料がかかりますが、これは各社によって異なります。リボルビング払いを利用する場合は、リボルビング払いの仕組みや支払い要件などを確認してから利用するようにしましょう。

クレジットカードは、支払い計画を立て、自分の支払い能力を把握して無理のない利用を心がけていれば、とても便利な支払い方法です。私個人としては、現在住んでいる地域でもクレジットカードの利用可能な店舗数が拡大してくれることを願っています。

執筆者プロフィール : 高鷲佐織(たかわしさおり)

ファイナンシャル・プランナー(CFP 認定者)/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/DCプランナー1級。

資格の学校TACにて、FP講師として、教材の作成・校閲、講義に従事している。過去問分析を通じて学習者が苦手とする分野での、理解しやすい教材作りを心がけて、FP技能検定3級から1級までの教材などの作成・校閲を行っている。また、並行して資産形成や年金などの個人のお金に関する相談を行っている。