【コラム】

カレー沢薫のほがらか家庭生活

58 寝坊

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今回のテーマは「寝坊」である。当コラム、いかに私がだらしない人間かを晒し、どれだけそれを正当化するかがテーマになってしまっているが、実は「家族コラム」である。

確かに私はだらしない。本体も周りも汚い。歩いた後には、脱いだ靴下片方のみが10足ぐらい落ちているし、袖口には常にカラッカラの米粒がついているので、小腹が空いた時にも安心だ。

そして怠け者であり、動くのが嫌いだ。最近では尿意を感じた瞬間、「ここでしてもよいのではないか」と思うし、その思いは年々強くなっているので、もはや発射5秒前である。最近問題になっている「セルフネグレクト」は全く他人事ではない。むしろ予備軍だ。気づいたら身体が半分腐ってたということも十分ありえるし、そうなっても「賞味期限は俺が決める」と放置するに決まっている。

そんな女以前に大人として、人としてどうか、というような状態だが、そこまでだらしなくない部分もある。

まず、締め切りは守る。最近では締め切りが多すぎて、何がいつ締め切りか分からず、知らない内に破っていることが頻発しているため、「締め切りを覚えていれば破らない」というところまで落ちているが、それでも基本的に締め切りは守っている。

もちろん、提出した物は締め切りを守っている以外に褒めるところがない。私の雑な人格の縮図のようなものだが、ひとつでも美点があるだけマシだろう。もし世の中の作家が全員締め切りを守りだしたら、その唯一の褒めどころさえ、当たり前のことになってしまうので、他の作家たちは全員5年ぐらい締め切りを破ってほしい。私の良さが際立つし、編集者という生き物が困るので一石二鳥だ。

つまり、「時間にはそんなにルーズではない」ということだ。待つのも嫌いなので、早く来て待つということはしないが、遅れることはそんなにない。

よって、寝坊もあまりしたことがない。「目が覚めたら家を出る時間の10分前だった」ということはザラにあるが、元々身だしなみレベルが低いので、ハイスピードで着替えて顔を洗って、そこら辺に落ちている液体(歯磨き粉含む)を顔に塗って、ウンコして飛び出せば、大体間に合う。ちなみに、ウンコにかける時間が一番長い。

「起きたら出社どころか曜日を越えてサザエが終わっていた」というような、致命的寝坊はしたことがない。よって、今まで私は朝には強い。目覚ましなしでも起きられる人間だと思っていたのだが、最近そうじゃないような気がしてきた。「常に誰かが先に起きているから起きられるのではないか」と。

実家にいた頃は5人家族で、祖母は早起き、母も仕事に行くので、みなが起き出したらそれにつられて起きていた。今も夫が先に起きているので、それに合わせて起きる。夫の起床はいつでも「圧倒的起床」である。私も遅刻はしないが、それでもギリギリまで寝ていたい派だ。だが、夫は常に出社1時間前には起きているし、それは年々早くなっている。

朝、夫は6時には起きるので私もそれに合わせて起きる。夫が洗濯ものを干し、風呂を掃除し、私は夫の弁当と朝食を作る。二人暮らしなので洗濯ものは2日に1回。量も大したことはない。6時15分頃にはやるべきことが終わる。

そこで私が何をするかというと、「二度寝」だ。そもそも出社が7時半ぐらいなので、そこまで早く起きる必要がないのだ。そしてそのまま、「気づいたら出社10分前だった」に続く。

夫の出社はそれより早いが、その間、何をしているかというと、新聞を読んだり、余裕がある時は床などを掃除していたり、私の元にクソほど送られてくる雑誌類を分別したりと、「スタイリッシュ起床アクション」をしている。もはや人間性が根本的に違うのだ。

私も夫もいい加減仕事ばかりしているが、私はあくまで私の仕事で忙しいだけだ。よって、仕事がない時は、虚空を見つめるか延々ソシャゲで単純作業をしているかだ。「時間があるから床を掃除する」という発想がない。

だが夫は、たまの休みになると、更に床を掃除したり、布団を干したり、毛布を洗いに出かけたりするのである。「毛布を洗いに行く」と言う発想、ない。カーテンと同じぐらい、一度入手したら、半永久的に洗うことなく使い続けるものだと思っていた。

寝坊しないのもそうだが、私が辛うじて人間の生活ができているのだ夫のおかげだと思う。むしろ、私が落とした靴下を夫が拾うから、私は更に靴下を落とすようになったのだ。恐らく、一人暮らしになったら永遠に起きなくなるだろう。

そんな非常にきちんとした夫なのであるが、最近「あなたの部屋の掃除はあきらめた」と告げられた。勝った。几帳面への勝利である。

筆者プロフィール: カレー沢薫

漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。
デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「負ける技術」(2014年、文庫版2015年)、Web連載漫画「ヤリへん」(2015年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。「やわらかい。課長起田総司」単行本は全3巻発売中。

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インデックス

連載目次
第60回 最寄駅
第59回 ハロウィン
第58回 寝坊
第57回 友だちの家
第56回 不動産会社の思い出
第55回 おばあちゃんの知恵袋
第54回 家族写真
第53回 トイレの使い方
第52回 近所付き合い
第51回 引越し
第50回 お盆
第49回 100均の神アイテム
第48回 DIY
第47回 間接照明
第46回 家賃
第45回 観葉植物
第44回 畳vsフローリング
第43回 エアコン
第42回 お風呂vsシャワー
第41回 丁寧な暮らし
第40回 ミニマリズム
第39回 部屋着
第38回 収納
第37回 掃除
第36回 家具のこだわり
第35回 筆記用具
第34回 映画館
第33回 小学生の時の思い出
第32回 家電
第31回 祖父との思い出
第30回 祖母との思い出
第29回 本棚
第28回 父の日・母の日
第27回 学校行事
第26回 お年玉と誕生日
第25回 仲直り
第24回 お祭り
第23回 花火大会
第22回 春休み
第21回 部活
第20回 教習所
第19回 勉強机
第18回 進路
第17回 通学
第16回 兄弟との遊び
第15回 兄弟喧嘩
第14回 朝ごはん
第13回 運動会の思い出
第12回 正月の過ごし方
第11回 夏休みの思い出
第10回 おこづかい
第9回 モロファミコン世代
第8回 貯金と浪費家
第7回 習い事と「そろばん教室」
第6回 カレー沢流の親孝行
第5回 コタツ、それは女神の微笑み、母なる海
第4回 おふくろの味
第3回 私不在の家族会議
第2回 新潟での家族旅行
第1回 カレー沢薫の実家

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