今回のテーマは朝ごはんである。

朝ごはんは食わない。というと、有識者や、意識が高い所にぶっ飛んでる女が「健康や美のためには朝ごはんが一番重要」と言うのはわかっている。むしろわかっているから食わないのだ。

まず私の顔を見てほしい。多分見れないと思うので、核戦争後の世界でモヒカン肩パッド達がジープで走っている荒野を思い浮かべてほしい。質感は大体あれと同じだ。

「荒れている」というより「し、死んでる!」という感じなのである。吹き出物がつぶれたところがかさぶたになり、かさぶたがはがれてまたかさぶたになり、永遠にかさぶたのままという永久機関を顔面に作り出しているのだ。

もちろんこのシステムを作り出すには相応の努力が要った。

あのダルビッシュも「練習はウソをつかないと言うけど頭使って練習しないとウソつくよ」的なことを言っていたとおり、正しくない努力はただの徒労というわけである。よって「朝ごはんを食べるのが健康と美にいい」と言われれば、真っ先にそれを無視しなければならないし、夜、特に寝る前に食べるのは良くないと言われたら、寝る5分前まで、口に甘いものを入れ続ける。そう言った効率の良い努力をしていかなければならない。

また朝食べないことにより、体が飢餓状態となり、夜食ったもの(カロリー)をより吸収するという効果がある。そのために、あえて朝ごはんを我慢していると言っていい。

さらにストイックに昼ごはんもあんまり食べない。最近は「満足一本バーホワイトチョコ」と「ウイダーinバー プロテイン ベイクドチョコ」を1本ずつのみだ。ここ半年ぐらいは会社ではそれを週5で食べているため、周囲からは偏執者と思われていると思うが、求道者と言うものはいつの世も理解されないものである。

それに一応栄養補助食ではあるが、両方チョコだ。30半ばも過ぎて昼飯がチョコというメルヘンぶりであり、偏執者の上におとぎの国在住という近づきがたさで、私は常に一人のランチタイムを満喫することに成功している。やはりつるんでいるようでは、道を究めることができない。

このように、私にとって朝ごはんというのは夜のパフォーマンスをあげるために長らく無視されてきた存在だったのだが、朝ごはんという奴が重要で、さらに美味いものだということはよく知っている。

もし朝ごはんを食べるなら、ごはんに味噌汁か、焼いたパンに牛乳というスタンダードなものがいい。ごはんを口に入れ追って味噌汁を飲む、またはトーストをかじり牛乳で流し込む。この口の中で出会う「固形+液体」の妙は筆舌に尽くしがたい。「口の中で調理し完成させる」と言っても過言ではない。

もちろん組み合わせが重要なので、ごはんから牛乳を口に入れたり、パンに味噌汁を入れてはいけない。その組み合わせが好きな者もいるだろうが、少なくともご飯を口にいれた後、追いパンをするのはお勧めしない。

特に、トーストにバターを塗ったものないしチーズをのせたもの+牛乳の組み合わせは最高だ。トーストというのは意外とソリッドである。口の中が弱い者だと負傷すらしてしまう。それが牛乳を交えながら食うことにより、美味かつ安全に食えるのだ。 バケットなど、さらに鋭いものであれば逆に牛乳がないときは回避する、ぐらいのつもりでいたほうがいい。

正直、朝ごはんというのは夜ダラダラ食うジャンクフードなどよりよほど美味い。では何で朝ごはんを食わずに、夜の暴食を選ぶのかというと、朝ごはんを食ったら会社に行かなければいかないからだ。

朝ごはんを食って幸せな気分になったあと、会社という地獄に行くなど、そんな落差に耐えれるはずがない。精神が崩壊する。

だから、私は「食」という唯一の楽しみを一日の最後まで取っておきたいのだ。目を覚ましたらまた新しい地獄が始まるのだから、眠りに落ちる一秒前まで口においしいものを入れておきたいし、出来れば歯もコンデンスミルクで磨きたい。

朝ごはんを食わないというといかにも意識が低いと思われがちだが、私は私なりの意識の高さをもって朝ごはんは食わないのだ。

だが、そんな信念は夫には関係ないので、彼には朝ごはんを食わせている。と言っても、昨日の残りを適当に出すか、ひどいときはウインナーに米という、肉&炭水化物のみになったりもする。

正しい努力をしなければ意味がないのと同じように、朝ごはんを食っていても、その内容が間違っていたら食わないほうがマシなのかもしれない。

<作者プロフィール>
カレー沢薫
漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。
デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「負ける技術」(2014年、文庫版2015年)、Web連載漫画「ヤリへん」(2015年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。「やわらかい。課長起田総司」単行本は全三巻発売中。