【コラム】

兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃

131 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(71)Flash

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2020年に、Adobeが「Flash」のサポートを打ち切るという。

Flashとは、Adobe Systems社による、音声や動画、ベクターグラフィックスのアニメーションを組み合わせてWebコンテンツを作成するソフト。また、それによって作成されたコンテンツ(IT用語辞典 e-wordsより)

つまり、アニメなどを作るWeb向けの動画作成ソフトである。「Flashゲーム」や「Flashアニメ」など2000年代のインターネットの進化の一翼を担った存在であり、このたびの「Flash終了のお知らせ」は一時代の終焉とも言える。

しかし実際この報を聞いて「終わった…」と膝から崩れ落ちている人は、長い期間Flashを使っていた人か、現在進行形で使っている人だけだと思う。少なくとも、Flashを自分で使ったことがなければ無感動だろう。

消費者はそれほど産地を気にしない

「Flashゲーム」や「Flashアニメ」をクソほどやったし見た、大学もバッチリ留年中退したという人でも、消費者側でしかなければ、Windows 2000に花添えて「青春さらば」と泣いたりはしないはずだ。

結局、それが何でできているかを気にするのは同じ製造者側であり、見る側としては使用ソフトのことなど、あまり気にならないものである。

pixivを見る時だって、全く自身が絵を描かない人間なら、素晴らしい推しの絵を前に「尊い」としか思わないだろうが、一応漫画家である私は、まず「尊い」と目頭を押さえ、5分ほど網膜を休ませたあと再度見て「尊い…!」と思う。そして次の日また見て「尊っ…!」と思う。

このように私ぐらいのレベルになると、神絵師と同じツールを使っても同じものが描けるわけではないとわかっているので、何を使っているかなんて全く気にしないし、そんなことを考えるのは逆に気が散っている、とさえ思えるが、多少でも向上心がある絵を描く人間は、「どんな画材やソフトを使っているのだろう」と気にしたりするものだ。

よって、私はおそらく「Flash」で作られたコンテンツを大いに楽しんできたであろうが、動画を製作したことがないため、それがFlashであるということはあまり意識したことがない。

「Flash」の存在を強く感じる事と言えば、何らかの動画(どんな動画かは言わない)を見ようと力強く再生ボタンを押したのに、何らかの動画ではなく「最新のFlashをインストールしてください」という文字が画面に表示されたときぐらいだ。そこから「Adobe」のサイトに飛び、「Flash」をインストールするまでの時間は、いつでも永遠のように感じられた。

ちなみにブラウザゲーム「刀剣乱舞」も現在「Flash」で稼動しており、「Flash」終了の報を受けて今後どうするかは検討中だそうである。あまり関係ないと思っていたが、とうらぶのキャラたちが「Flash」で動いていたとあれば一大事だ、と思ったら、よく考えたらゲーム内の彼らは全然動いてない。せいぜい画面の端から中央にゆっくりスライドしてくるとかだ。

むしろ止め絵だけなので、最悪GIFアニメとかでもなんとかなるんじゃないだろうか、「Flash」がなくなっても安泰である(編集注:Flashゲームはキャラの動作以外にもいろいろ動かす必要があるため、GIFアニメだとプレイできず、仮に移行するとしたらHTML5ベースのブラウザゲームとなる可能性があります)。

逆にコレだけ動かず喋らずの奴らが、2年以上人気を保っているのがすごい。高価なソフトを使えば良い絵が描けるわけじゃないのと同じように、キャラがアニメーションでヌルヌル動いてフルボイスなら人気が出るわけじゃないという好例である。

世界は滅亡しないが、サービスは終了する

では、なぜFlashが事実上オワコンになってしまったかというと「脆弱性、高負荷」の問題を解決できなかったからだそうだ。つまり、セキュリティがイマイチで、重くて電力を食うということだ。

パソコンならまだしも、携帯やスマホで、セキュリティが弱く省エネでない、というのは致命的で、iPhoneやiPadに搭載されているiOSがFlashを採用せず、そこから衰退が始まったという。

もちろん「Adobe」も、メンテに失敗したソシャゲのように突然やめると言い出したわけではなく、終わるのは冒頭言った通り2020年である。つまり、作る側はそれまでの間に、他の技術に移行しておけよ、ということだ。

iPhoneの件もそうだが、Macなどは2010年ごろからすでに「脱Flash」を始めていたようである。Flashを脱して次何になったかは次回にでも取り上げるとして、Flashを使っている人は早めに新しいツールへ移行した方がいいだろう。

だが、なかなか、やらねえんだな、これが。大企業レベルなら早々に移行するだろうが、これが中小企業やさらに個人レベルになると、ケツの重さが30トンぐらいになる。

数年前、漫画製作ソフト「ComicStudio」(略称:コミスタ)の販売が終了し「CLIP STUDIO」(略称:クリスタ)に移行したわけだが、その予告を受けコミスタ使いだった私が、すぐクリスタに移行したかというと、まあギリギリまでやらなかった。

使い慣れたものを捨て、また一から勉強し直すというのは気が重過ぎる。それに数年後のことなら今すぐやらなくても良い気がしたし、何より「そうは言ってもコミスタ終わらないのでは?!」と思っていた。

でも終わった。世界滅亡の予言は記憶している限りでは当たったことがないが、サービス終了の予告は大体実行される。

よって、Flashは本当に終わるのでFlash使いの人は早めに移行した方がいいだろう。重いケツを重いままにしておくと、終了間際に慌てて何もかもをやることになるため、一からのスタートがマイナスになりかねない。


<作者プロフィール>
カレー沢薫
漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「やわらかい。課長起田総司」(2015年)、「ねこもくわない」(2016年)。コラム集「負ける技術」(2014年、文庫版2015年)、Web連載漫画「ヤリへん」(2015年~)、コラム集「ブス図鑑」(2016年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。本連載を文庫化した「もっと負ける技術 カレー沢薫の日常と退廃」は、講談社文庫より絶賛発売中。

「兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃」、次回は2017年10月17日(火)掲載予定です。

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インデックス

連載目次
第132回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(72)HTML5
第131回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(71)Flash
第130回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(70)PoC
第129回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(69)UI/UX
第128回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(68)MVNO
第127回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(67)GUI
第126回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(66)USB Type-C
第125回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(65)サーバ
第124回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(64)デジタルツイン
第123回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(63)半導体
第122回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(62)IIoT
第121回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(61)ADAS
第120回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(60)アディティブ・マニュファクチャリング
第119回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(59)LPWA
第118回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(58)ディスラプティブ・イノベーション
第117回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(57)HEMS
第116回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(56)ニューロモルフィックコンピューティング
第115回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(55)M2M
第114回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(54)MR
第113回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(53)シンギュラリティ
第112回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(52)Society5.0
第111回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(51)Industry 4.0
第110回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(50)CPS
第109回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(49)3Dプリンタ
第108回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(48)CPU
第107回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(47)e-文書法
第106回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(46)CGM
第105回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(45)MFP
第104回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(44)チャットボット
第103回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(43)メッセンジャー
第102回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(42)PLM
第101回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(41)CAD
第100回 100回にわたる連載を振り返って
第99回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(40)モバイルペイメント
第98回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(39)ダークネット
第97回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(38)IPアドレス
第96回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(37)JPEG
第95回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(36)SCM
第94回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(35)コグニティブ
第93回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(34)ハプティック
第92回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(33) 会話型UI
第91回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(32) APT
第90回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(31) 4K・8K
第89回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(30) コネクテッドカー
第88回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(29) ビーコン
第87回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(28) ゼロデイアタック
第86回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(27) 生体認証
第85回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(26)CPM
第84回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(25)NAS
第83回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(24)デジタルサイネージ
第82回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(23)テキストマイニング
第81回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(22)ファビコン
第80回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(21)ERP
第79回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(20) オンデマンド
第78回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(19) VoIP
第77回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(18) ディープラーニング
第76回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(17) テレワーク
第75回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(16) 5G
第74回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(15) O2O2O
第73回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(14)SaaS
第72回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(13)シングルサインオン
第71回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(12)オムニチャネル
第70回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(11)ユビキタス
第69回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(10)ホワイトハッカー
第68回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(9)ビッグデータ
第67回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(8)ランサムウェア
第66回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(7)クラウド
第65回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(6)ドローン
第64回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(5)人工知能
第63回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(4)マルウェア
第62回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(3)FinTech(フィンテック)
第61回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(2)VR
第60回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(1)IoT
第59回 mixi時代のリア充アピールと「消灯」
第58回 春の花粉症と個々人の「体質」
第57回 飲み会に誘われた→たたかう、にげる?
第56回 SNS疲れと「インターネット上の友達」
第55回 カレー沢流・「真の親孝行」と「かんぴょう巻」
第54回 地方在住のオタクと「ガンジス川のまんじゅう」
第53回 カレー沢薫が激賞する「別腹で食べるべきスイーツ」
第52回 カレー沢薫、「ゆとり」「さとり」を語る
第51回 もしカレー沢薫の作品がアニメ/実写化したら
第50回 兼業漫画家が語る「健康法」と「クソゲー」
第49回 安直?楽勝?作家から見た「過去のヒット作のリバイバル」
第48回 兼業作家とマイナンバー
第47回 デザインを学んだカレー沢薫の「卒論」
第46回 カレー沢薫が「最後の晩餐に食べたい」一品
第45回 オタクがオタクであり続ける理由
第44回 漫画家・カレー沢薫がはじめてコラムを書いた日
第43回 カレー沢暴力からの卒業
第42回 兼業漫画家と女の「諦め」
第41回 カレー沢暴力(薫)が語る、「お断り」な仕事の依頼
第40回 女が「美」を希求する理由、そして“ありのまま”の罠
第39回 上京の旅路のロハスな過ごし方
第38回 酒もたばこもやらない兼業漫画家が愛する「嗜好品」
第37回 兼業漫画家と怒りの賢者モード
第36回 福山雅治の結婚と「公式設定」
第35回 もし「カレー沢薫」が改名するとしたら?
第34回 漫画家デビューしたいなら、まず石油王になってから
第33回 猫もまたいで通る「老後」の話
第32回 兼業漫画家が考える、「前の作風の方がよかった」と言われた時の対処法
第31回 カレー沢薫が偏愛する、ある猫の物語
第30回 「結婚すればリア充」なのか? 非リア充/リア充の境界線
第29回 猫派の兼業漫画家、「犬」を語る
第28回 漫画家の仕事をクールに演出する「作業用ドリンク」
第27回 続・「カレー沢薫先生サイン会」の開催動機
第26回 兼業漫画家の「作業用BGM」
第25回 カレー沢薫が語る「恋愛」~壁ドンは本当にときめくのか~
第24回 兼業漫画家とLINEスタンプ
第23回 兼業漫画家に学ぶタスク管理の極意
第22回 酒やたばこより健康を害する、たったひとつの事柄
第21回 兼業漫画家の「夏の風物詩」
第20回 漫画家の夫になるということ(あるいは、夫婦が暮らすということ)
第19回 漫画家という職業選択と親心
第18回 二次創作の醍醐味と争いを生まないための「注意」
第17回 漫画家・カレー沢薫が語る「アイデアのつくり方」
第16回 猫よ、人の望みの喜びよ
第15回 カレー沢薫というペンネームを生んだ「病」
第14回 コミュ障界の石川五ェ門が人間観察をしない理由
第13回 「カレー沢薫先生サイン会」の開催動機
第12回 兼業漫画家の美容意識と"オタクの美醜"
第11回 あなたは米に「萌え」られるか
第10回 健康で文化的な兼業漫画家の生活
第9回 漫画家の絵の上達と「オウンゴール」
第8回 漫画家の夫をめぐる「傾向」と「受難」
第7回 カレー沢薫の華麗なる交友関係
第6回 漫画家は怒り、編集者はスコップを持つ
第5回 兼業漫画家は"大平原"の夢を見るか
第4回 カレー沢流・漫画制作におけるライフハック
第3回 "兼業まんがクリエイター"の日常を徹底解剖
第2回 確定申告、その経費と内訳~カレー沢薫の場合~
第1回 "漫画を描かない漫画家志望"がデビューするまで

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