【コラム】

兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃

127 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(67)GUI

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今回のテーマは「GUI」だ。

俺たちの味方である安価な衣料量販店のことではない、と明らかに何も思い浮かばなかったとわかる前置きはやめて、意味を説明しよう。

説明書絶対読まないマンでもスマホが使える理由

GUIとは、コンピュータやソフトウェアが利用者に情報を提示したり操作を受け付けたりする方法(UI:ユーザインターフェース)の類型の一つで、情報の提示に画像や図形を多用し、基礎的な操作の大半を画面上の位置の指示により行うことができるような手法のこと。これに対し、情報の提示も操作も文字を中心に行う方式をCUI(Character User Interface)あるいはCLI(Command Line Interface)などと呼び、情報技術者が操作する前提のコンピュータ製品などで多く用いられる。 (IT用語辞典 e-Wordsより抜粋)

この時点で「わからせる気があるのか、わかるように説明しろ」とブチ切れている方がいるだろう、私もその一人だ。しかしこの「GUI」は、まさにこの「難しいことはわからないし、わかる気もない奴」ほどお世話になっているシステムである。

貴殿も、このページをPCかスマホ、幻覚などで見ているだろう、まずそのデスクトップかホーム画面、またはホーム画面の幻覚を見てほしい。多かれ少なかれアイコンが並んでいるはずだ。縦書きの筆文字しか表示されないという骨太な機器はそうそうないだろう。

そこから、インターネットブラウザのアイコンをクリックまたはタップするなどして今このページを見ていることだろう、幻覚で見る方法は各々やり方があると思うので割愛するが、一番簡単かつ合法なのは「寝ない」なので参考にされたし。

その時、どうやってネットブラウザのアイコンを選んだかというと「勘」とかではなく、アイコンの図柄から視覚的に判断しクリックしたはずだ、つまりそれが「GUI」だ。

そもそも、私のような説明書絶対読まないマンが曲がりなりにもPCやスマホを使えるのはこの「GUI」があるからである。説明をまったくされなくても、受話器の絵が描いてあるアイコンを押せば電話がかけられる、ということぐらいはわかるからだ。

逆に、電話のアイコンに見えるがそれはダミーで押すと爆発する、本物は説明書を読まないとわからない、という風にすればみんな説明書を読むと思う。つまり、最悪字が読めなくても何とかなるという画期的システムである。

しかし、アイコンをクリックして操作する、というのは、我々にとってあまりにも当たり前になりすぎた。よって、アイコンは、コウノトリが連れてきたり、木の股から生まれたりと自然発生しているもののようにすら思えるが、もちろん、人間がアイコンの画像を作り、また小難しいプログラムを組んでクリックしたら動くように作っているのだ。

「わかりやす過ぎる」ことの弊害

そして、GUIが生まれる前は、冒頭の説明に書いてある「命令文を入力して実行する方式(CUI)」が主流だったのである。昔のコンピューターは、「情報技術者が操作する前提」のものだったからだ。

私はこのCUI時代を知らないので具体的にどのような操作をするのかわからないが、命令文を入力すると言っても「ネットをたちあげろ」などと日本語入力してもダメだろうし「たちあげてください」と敬語で言ったとしてもシカトだろう。

おそらく、黒画面に英数字が羅列された、映画などでハッカーが「今頭がいいことしてまっせ」とアピるシーンに使われるような画面操作で行われていたのだと思う。

今でもそんなシステムで作られていたら、PCやスマホの普及率は9億%ぐらい下がると思う。「難しい話でも、漫画や図解で説明されたら何となくわかる」ように、視覚で操作できるというのは非常にわかりやすく便利なのだ。

ただし、人間には「システムが使いやすく便利になるほど、金を失いやすくなる」という特徴がある。クレカなどペイシステムが発達するほど借金を抱える人間が増えるのと同じだ。

少なくとも、ソシャゲを立ち上げてガチャを回すまでの過程がCUIだったら私はこんなにガチャを回してないし、回すところまでたどり着けない可能性が高い。「システムが難解だと、馬鹿がいらんことをする前に投げ出す」という利点はあるのだ。

また「わかりやすすぎる問題」もある。スマホで言うなら、電話なら受話器の絵のアイコン、メールなら手紙の絵のアイコンと一目でわかるようなアイコンデザインがされている。「ふ」と書かれた将棋のコマアイコンを押すと、美少女ゲームが起動されるということはあまりないはずだ。美少女ゲームのアイコンには大体美少女が描かれている。

つまり、イケメンが出てくるゲームが大好きな私のホーム画面は、イケメンのアイコンだらけになってしまっているのである。隠せばいいのだろうが、頻繁に起動するものなのでついついわかりやすい位置に置いてしまう。

よって、何かの事故で他人に画面を見られたら一目で「こういうのが好きな人」だということがわかってしまう。GUIのおかげで、自分の趣味までわかりやすくなってしまっているのである。

わかりやすいのは良い事だが、わかってもらいたくないこともある。たまには、将棋のコマがアイコンの乙女ゲーも作ってほしい。


<作者プロフィール>
カレー沢薫
漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「やわらかい。課長起田総司」(2015年)、「ねこもくわない」(2016年)。コラム集「負ける技術」(2014年、文庫版2015年)、Web連載漫画「ヤリへん」(2015年~)、コラム集「ブス図鑑」(2016年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。本連載を文庫化した「もっと負ける技術 カレー沢薫の日常と退廃」は、講談社文庫より絶賛発売中。

「兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃」、次回は2017年9月19日(火)掲載予定です。

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インデックス

連載目次
第136回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(76)ファイアウォール
第135回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(75)V2X
第134回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(74)フリーミアム
第133回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(73)タンジブル
第132回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(72)HTML5
第131回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(71)Flash
第130回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(70)PoC
第129回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(69)UI/UX
第128回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(68)MVNO
第127回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(67)GUI
第126回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(66)USB Type-C
第125回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(65)サーバ
第124回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(64)デジタルツイン
第123回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(63)半導体
第122回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(62)IIoT
第121回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(61)ADAS
第120回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(60)アディティブ・マニュファクチャリング
第119回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(59)LPWA
第118回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(58)ディスラプティブ・イノベーション
第117回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(57)HEMS
第116回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(56)ニューロモルフィックコンピューティング
第115回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(55)M2M
第114回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(54)MR
第113回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(53)シンギュラリティ
第112回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(52)Society5.0
第111回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(51)Industry 4.0
第110回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(50)CPS
第109回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(49)3Dプリンタ
第108回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(48)CPU
第107回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(47)e-文書法
第106回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(46)CGM
第105回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(45)MFP
第104回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(44)チャットボット
第103回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(43)メッセンジャー
第102回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(42)PLM
第101回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(41)CAD
第100回 100回にわたる連載を振り返って
第99回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(40)モバイルペイメント
第98回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(39)ダークネット
第97回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(38)IPアドレス
第96回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(37)JPEG
第95回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(36)SCM
第94回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(35)コグニティブ
第93回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(34)ハプティック
第92回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(33) 会話型UI
第91回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(32) APT
第90回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(31) 4K・8K
第89回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(30) コネクテッドカー
第88回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(29) ビーコン
第87回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(28) ゼロデイアタック
第86回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(27) 生体認証
第85回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(26)CPM
第84回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(25)NAS
第83回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(24)デジタルサイネージ
第82回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(23)テキストマイニング
第81回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(22)ファビコン
第80回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(21)ERP
第79回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(20) オンデマンド
第78回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(19) VoIP
第77回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(18) ディープラーニング
第76回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(17) テレワーク
第75回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(16) 5G
第74回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(15) O2O2O
第73回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(14)SaaS
第72回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(13)シングルサインオン
第71回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(12)オムニチャネル
第70回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(11)ユビキタス
第69回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(10)ホワイトハッカー
第68回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(9)ビッグデータ
第67回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(8)ランサムウェア
第66回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(7)クラウド
第65回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(6)ドローン
第64回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(5)人工知能
第63回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(4)マルウェア
第62回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(3)FinTech(フィンテック)
第61回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(2)VR
第60回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(1)IoT
第59回 mixi時代のリア充アピールと「消灯」
第58回 春の花粉症と個々人の「体質」
第57回 飲み会に誘われた→たたかう、にげる?
第56回 SNS疲れと「インターネット上の友達」
第55回 カレー沢流・「真の親孝行」と「かんぴょう巻」
第54回 地方在住のオタクと「ガンジス川のまんじゅう」
第53回 カレー沢薫が激賞する「別腹で食べるべきスイーツ」
第52回 カレー沢薫、「ゆとり」「さとり」を語る
第51回 もしカレー沢薫の作品がアニメ/実写化したら
第50回 兼業漫画家が語る「健康法」と「クソゲー」
第49回 安直?楽勝?作家から見た「過去のヒット作のリバイバル」
第48回 兼業作家とマイナンバー
第47回 デザインを学んだカレー沢薫の「卒論」
第46回 カレー沢薫が「最後の晩餐に食べたい」一品
第45回 オタクがオタクであり続ける理由
第44回 漫画家・カレー沢薫がはじめてコラムを書いた日
第43回 カレー沢暴力からの卒業
第42回 兼業漫画家と女の「諦め」
第41回 カレー沢暴力(薫)が語る、「お断り」な仕事の依頼
第40回 女が「美」を希求する理由、そして“ありのまま”の罠
第39回 上京の旅路のロハスな過ごし方
第38回 酒もたばこもやらない兼業漫画家が愛する「嗜好品」
第37回 兼業漫画家と怒りの賢者モード
第36回 福山雅治の結婚と「公式設定」
第35回 もし「カレー沢薫」が改名するとしたら?
第34回 漫画家デビューしたいなら、まず石油王になってから
第33回 猫もまたいで通る「老後」の話
第32回 兼業漫画家が考える、「前の作風の方がよかった」と言われた時の対処法
第31回 カレー沢薫が偏愛する、ある猫の物語
第30回 「結婚すればリア充」なのか? 非リア充/リア充の境界線
第29回 猫派の兼業漫画家、「犬」を語る
第28回 漫画家の仕事をクールに演出する「作業用ドリンク」
第27回 続・「カレー沢薫先生サイン会」の開催動機
第26回 兼業漫画家の「作業用BGM」
第25回 カレー沢薫が語る「恋愛」~壁ドンは本当にときめくのか~
第24回 兼業漫画家とLINEスタンプ
第23回 兼業漫画家に学ぶタスク管理の極意
第22回 酒やたばこより健康を害する、たったひとつの事柄
第21回 兼業漫画家の「夏の風物詩」
第20回 漫画家の夫になるということ(あるいは、夫婦が暮らすということ)
第19回 漫画家という職業選択と親心
第18回 二次創作の醍醐味と争いを生まないための「注意」
第17回 漫画家・カレー沢薫が語る「アイデアのつくり方」
第16回 猫よ、人の望みの喜びよ
第15回 カレー沢薫というペンネームを生んだ「病」
第14回 コミュ障界の石川五ェ門が人間観察をしない理由
第13回 「カレー沢薫先生サイン会」の開催動機
第12回 兼業漫画家の美容意識と"オタクの美醜"
第11回 あなたは米に「萌え」られるか
第10回 健康で文化的な兼業漫画家の生活
第9回 漫画家の絵の上達と「オウンゴール」
第8回 漫画家の夫をめぐる「傾向」と「受難」
第7回 カレー沢薫の華麗なる交友関係
第6回 漫画家は怒り、編集者はスコップを持つ
第5回 兼業漫画家は"大平原"の夢を見るか
第4回 カレー沢流・漫画制作におけるライフハック
第3回 "兼業まんがクリエイター"の日常を徹底解剖
第2回 確定申告、その経費と内訳~カレー沢薫の場合~
第1回 "漫画を描かない漫画家志望"がデビューするまで

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