【コラム】

兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃

111 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(51)Industry 4.0

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今回の「Industry 4.0(インダストリー4.0)」である。

なんでも、ドイツ政府が提唱しているプロジェクトだそうで、ドイツ語で書くと「Industrie 4.0」だ。

ドイツと言えば、欧州の中でも堅く、生真面目なイメージがあるかもしれないが、実際ドイツに行った人に聞くと「やはり日本に比べると、公共機関など緩いところが多い」そうだ。

これはもう諸国が緩いというより、日本が変態級に几帳面なのではないだろうか。外国人から見ると、電車などが1分の誤差もなく到着するのは、感心を越えて「キメぇ…」「ドン引き」の域なのかもしれない。

そんな割と生真面目で工業先進国、美女が巨大淡水魚を持っているカレンダーが好評を博しているドイツが打ち出したのが「Industry 4.0」だ。

4.0秒で分かる「第四次産業革命」

インダストリー4.0とは,第四次産業革命を表す言葉であり,製品のライフサイクルを通じて価値連鎖全体の組織と制御が新たなる段階に入ることを意味する。このサイクルは個別化の進む顧客の要望に対応するもので,アイデア段階から開発および製造の指示,製品の末端顧客への納品,果てはリサイクリングまですべての段階を指し,それに関連するサービスも含む。(日本貿易振興機構(ジェトロ) インダストリー4.0 実現戦略 プラットフォーム・インダストリー4.0 調査報告より引用)

私ほどのIT用語マスターになると、見た瞬間「これは説明を読んでもわからない奴だ」とわかるのだか、これも4.0秒でそう直感した。

どうも、「Industry 4.0」を簡単に言うと、今までここで取り上げてきた「IoT」や「CPS」を製造業に使っていこうということらしい。

賢明な読者はすでに「loT」や「CPS」が何だったか忘れていると思うが、心配するな、私もだ。細かいことは忘れたが「すべてネットにつなげてしまえ」という暴力的な思想だったような気がするので、おそらく、製造業の機械にもその暴力を行使しようというプロジェクトだと思う。

全く平和の香りがせず、国が燃えそうな話になってしまったが、「Industry 4.0」により、企業は大きなコスト削減と作業効率化が図れるという。つまり、製造業をすべてデジタル化しようということだ。

Industry 4.0、難航の原因

確か本コラムでも「今、原料から製造、販売、廃棄に至るまで、一本化して管理するのがアツい」という話をしたと思う。ただ、その用語の名前は忘れた。(参考: PLMSCM )

要するに製造機械(モノ)をネットに繋ぎ、そこからリアルタイムで得られる市場状況などの情報を元に、生産をコントロールできるようになるというわけだ。「風が吹いた」という情報をキャッチした機械は一斉に桶を作り出すということだろう。

また、機械は今までの情報から自分でデータを解析して動くため、いちいち人間が指示を出さなくてもいいらしい。確かに実現すればすごい話なのであるが、やはり難航している部分もあるという。その難航の原因は何かというと、賢明じゃない読者もわかっていると思うが「人間」だ。私でもわかったぐらいなので、わからなかった人間は、熱を測るか8時間ぐらい寝た方がいい。

「人間」、「Industry 4.0」に限らず、大体のものごとにおける難航、頓挫の原因がこれである。原因といっても、「Industry 4.0」用機器のコンセントをいれたそばから抜いていくなど、そういうわかりやすい妨害はしていないと思うが、「Industry 4.0」に対し「反対」もしくは「何となく渋っている」姿は何となく予想がつく。

誰だって、今までの仕事の工程は忘れて、新しいシステムでやるぞといわれたら「嫌だよ」と思うだろうし、少なくとも「めんどくせえ」ぐらいは思うだろう。新しいことを始めるというのは、慣れたら便利になるのだろうが、とにかくそこまでがだるいものである。

しかも、目に見えて反抗してくるやつはまだよいが、「何となく渋ってるやつがたくさんいる」というのは、すべての物事の停滞をまねく。また、「すべて一本化」というのも、いままで縄張りを持っていた人間からすると「嫌だぜ」という話だろう。

「Industry 4.0」というのは「第四次産業革命」という意味らしいが、自らの生活がかかったフランス革命などでも、渋るやつは絶対いただろうから、こういった革命に腰が重い奴がいるのは当然である。

やはり、必要なのは、倒すべき共通の敵ではないだろうか。まずは「Industry 4.0」で倒すべき、大魔王的なのがいるという設定にしてみてはどうだろうか。


<作者プロフィール>
カレー沢薫
漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「やわらかい。課長起田総司」(2015年)、「ねこもくわない」(2016年)。コラム集「負ける技術」(2014年、文庫版2015年)、Web連載漫画「ヤリへん」(2015年~)、コラム集「ブス図鑑」(2016年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。本連載を文庫化した「もっと負ける技術 カレー沢薫の日常と退廃」は、講談社文庫より絶賛発売中。

「兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃」、次回は2017年5月23日(火)掲載予定です。

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インデックス

連載目次
第120回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(60)アディティブ・マニュファクチャリング
第119回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(59)LPWA
第118回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(58)ディスラプティブ・イノベーション
第117回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(57)HEMS
第116回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(56)ニューロモルフィックコンピューティング
第115回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(55)M2M
第114回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(54)MR
第113回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(53)シンギュラリティ
第112回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(52)Society5.0
第111回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(51)Industry 4.0
第110回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(50)CPS
第109回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(49)3Dプリンタ
第108回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(48)CPU
第107回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(47)e-文書法
第106回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(46)CGM
第105回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(45)MFP
第104回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(44)チャットボット
第103回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(43)メッセンジャー
第102回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(42)PLM
第101回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(41)CAD
第100回 100回にわたる連載を振り返って
第99回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(40)モバイルペイメント
第98回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(39)ダークネット
第97回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(38)IPアドレス
第96回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(37)JPEG
第95回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(36)SCM
第94回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(35)コグニティブ
第93回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(34)ハプティック
第92回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(33) 会話型UI
第91回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(32) APT
第90回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(31) 4K・8K
第89回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(30) コネクテッドカー
第88回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(29) ビーコン
第87回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(28) ゼロデイアタック
第86回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(27) 生体認証
第85回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(26)CPM
第84回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(25)NAS
第83回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(24)デジタルサイネージ
第82回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(23)テキストマイニング
第81回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(22)ファビコン
第80回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(21)ERP
第79回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(20) オンデマンド
第78回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(19) VoIP
第77回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(18) ディープラーニング
第76回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(17) テレワーク
第75回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(16) 5G
第74回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(15) O2O2O
第73回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(14)SaaS
第72回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(13)シングルサインオン
第71回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(12)オムニチャネル
第70回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(11)ユビキタス
第69回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(10)ホワイトハッカー
第68回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(9)ビッグデータ
第67回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(8)ランサムウェア
第66回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(7)クラウド
第65回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(6)ドローン
第64回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(5)人工知能
第63回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(4)マルウェア
第62回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(3)FinTech(フィンテック)
第61回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(2)VR
第60回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(1)IoT
第59回 mixi時代のリア充アピールと「消灯」
第58回 春の花粉症と個々人の「体質」
第57回 飲み会に誘われた→たたかう、にげる?
第56回 SNS疲れと「インターネット上の友達」
第55回 カレー沢流・「真の親孝行」と「かんぴょう巻」
第54回 地方在住のオタクと「ガンジス川のまんじゅう」
第53回 カレー沢薫が激賞する「別腹で食べるべきスイーツ」
第52回 カレー沢薫、「ゆとり」「さとり」を語る
第51回 もしカレー沢薫の作品がアニメ/実写化したら
第50回 兼業漫画家が語る「健康法」と「クソゲー」
第49回 安直?楽勝?作家から見た「過去のヒット作のリバイバル」
第48回 兼業作家とマイナンバー
第47回 デザインを学んだカレー沢薫の「卒論」
第46回 カレー沢薫が「最後の晩餐に食べたい」一品
第45回 オタクがオタクであり続ける理由
第44回 漫画家・カレー沢薫がはじめてコラムを書いた日
第43回 カレー沢暴力からの卒業
第42回 兼業漫画家と女の「諦め」
第41回 カレー沢暴力(薫)が語る、「お断り」な仕事の依頼
第40回 女が「美」を希求する理由、そして“ありのまま”の罠
第39回 上京の旅路のロハスな過ごし方
第38回 酒もたばこもやらない兼業漫画家が愛する「嗜好品」
第37回 兼業漫画家と怒りの賢者モード
第36回 福山雅治の結婚と「公式設定」
第35回 もし「カレー沢薫」が改名するとしたら?
第34回 漫画家デビューしたいなら、まず石油王になってから
第33回 猫もまたいで通る「老後」の話
第32回 兼業漫画家が考える、「前の作風の方がよかった」と言われた時の対処法
第31回 カレー沢薫が偏愛する、ある猫の物語
第30回 「結婚すればリア充」なのか? 非リア充/リア充の境界線
第29回 猫派の兼業漫画家、「犬」を語る
第28回 漫画家の仕事をクールに演出する「作業用ドリンク」
第27回 続・「カレー沢薫先生サイン会」の開催動機
第26回 兼業漫画家の「作業用BGM」
第25回 カレー沢薫が語る「恋愛」~壁ドンは本当にときめくのか~
第24回 兼業漫画家とLINEスタンプ
第23回 兼業漫画家に学ぶタスク管理の極意
第22回 酒やたばこより健康を害する、たったひとつの事柄
第21回 兼業漫画家の「夏の風物詩」
第20回 漫画家の夫になるということ(あるいは、夫婦が暮らすということ)
第19回 漫画家という職業選択と親心
第18回 二次創作の醍醐味と争いを生まないための「注意」
第17回 漫画家・カレー沢薫が語る「アイデアのつくり方」
第16回 猫よ、人の望みの喜びよ
第15回 カレー沢薫というペンネームを生んだ「病」
第14回 コミュ障界の石川五ェ門が人間観察をしない理由
第13回 「カレー沢薫先生サイン会」の開催動機
第12回 兼業漫画家の美容意識と"オタクの美醜"
第11回 あなたは米に「萌え」られるか
第10回 健康で文化的な兼業漫画家の生活
第9回 漫画家の絵の上達と「オウンゴール」
第8回 漫画家の夫をめぐる「傾向」と「受難」
第7回 カレー沢薫の華麗なる交友関係
第6回 漫画家は怒り、編集者はスコップを持つ
第5回 兼業漫画家は"大平原"の夢を見るか
第4回 カレー沢流・漫画制作におけるライフハック
第3回 "兼業まんがクリエイター"の日常を徹底解剖
第2回 確定申告、その経費と内訳~カレー沢薫の場合~
第1回 "漫画を描かない漫画家志望"がデビューするまで

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