【コラム】

兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃

104 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(44)チャットボット

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今回のテーマは「チャットボット」だ。

ボットとは「bot」のことであり、こう書くとTwitterをやっている人間なら親しみ深いだろうし、フォロワーが全部botというプロフェッショナルもいるだろう。

逆に言うとbotさんのおかげで我々はフォロー&フォロワーゼロを免れているといえる。そんな俺たちの救世主(メシア)たる「bot」とはそもそも何か。

bot:Twitter の機能を使って作られた、機械による自動発言システム。語源はロボットから来ている。特定の時間に自動ツイートする bot、ユーザーの bot 宛の発言にリプライする bot、特定のキーワードに反応する bot 等、様々な bot が存在する。(ツイナビ ツイッター用語集より)

TLでよく見かける、漫画のキャラクターのbotが定期的にあらかじめ登録された作中の台詞をつぶやいていたり、こちらがつぶやいた特定のワードに反応してリプライを返したりしてくるアレだ。

私の漫画のキャラクターのbotもいくつかある。名誉のために言うが自作ではない。特に、「フルメタル鳩山bot」と言うのが2つある上に両方「ブス」という言葉に反応するため、ブスとつぶやいたら、毎回きっちり二人がかりで「メガネの人格が変わるほどの地獄だぜー!」などと絡んでくるというリアル地獄絵図なので、気になる方はフォローして即ブロックすればよいと思う。

また、キャラだけではなく「カレー沢薫bot」というものもある、私がTwitterなどでつぶやいた不用意な発言が、半永久的に発信され続けるという生き恥botなのだが、何せ自分で作ってないので、削除権がない。私如きでこの有り様なのだから、中高生の時ノートに描いた落書きという、見つけたら即家ごと燃やすであろう危険物を博物館で展示されてしまう太宰治などは大変である。

ちなみに、私は私関連のbotを全くフォローしていない、無益だからだ。例外としてデビュー作「クレムリン」の関羽というキャラが「○○だニャ…焦りと苛立ちだニャ」とつぶやき続ける「焦りと苛立ち関羽bot」だけはフォローしている。無益を極めすぎて逆に有益な気がしたためである。

チャットボットと会話の有用性

このように、botというのは、好きなキャラがつぶやいたりリプしたりしてくれる、嬉しいな、ぐらいのもので、基本無益なものである。チャットボットはそんなbotの有益性を高めたものだ。botとの会話を通じてユーザーが必要としている情報が得られるというもので、検索機能の役割も果たすという。前回話したメッセンジャーとbotが混ざり合ったようなサービスだ。(参考:「O2O×FinTech の最新動向」第4回)。

有益と言っても、嫁キャラのbotに延々話しかけ続けていたら「お前に必要なのはリアルの話し相手だ」と突然マジレスしてくるというわけではないし、何を探しているかぐらいはこちらで明確にしなければならない。「自分を探している」などと漠然なことを言っても、「そんなものはない」と返されるだけだ。

つまり、「服が欲しいが、どんな服を選んだらいいかわからない」という場合は、服の通販サイトのチャットボットと会話をして、その会話からこちらの求めている服を割り出し、その通販ページまで案内してもらうという具合だ。

そこまで会話がしたいか、普通の検索でいいではないかとも思うが、求めている答えにたどり着くには会話が一番早いという意見は否定しにくい。

リアル服屋でだって、店員と会話さえできれば、一番早く、求めているものにたどり着けるのだ。それができないどころか「店員が話しかけてくる店」を積極的に避けるため、ひとりで店内を延々うろうろした挙げ句、上下ビビッドなオレンジのセットアップという、アメリカの囚人のようなチョイスをしてしまうのだ。

会社でだってそうだ。なんでもネットで調べられると言っても、ネットでわかるのは一般論であり、「会社のやり方」とは違う。つまり、会社のことは会社の人間に聞くのが一番早い上に正確だ。だが、会社の人間に質問すると「怒られる」というリスクが発生するし、「この前も教えたよね?」などと言われたら一大事だ。

よって、聞かずにやるか、ネット知識でことを進めてさらに怒られるのである。その点チャットボットならこちらの発言にぶち切れてくることはないだろうから、安心だ。しかし人間の性癖は複雑なので、その内「イケメンドSチャットボット」とか「美少女が罵倒してくるチャットボット」などが生まれてくることも予想される。

すでに、行きたい場所を言うと時刻表を教えてくれるLINEのチャットボットがあるというので登録し、早速「ドバイ」と書き込んだ。それがどこにあるのかは知らないが、ドバイにさえ着けば勝ちのような気がしたからだ。

すると、チャットボットは「そのような駅はありません」と返してきた。

そう言われてみると、日本に「ドバイ駅」はないような気がする。これはこちらの過失だ。そこでグッとレベルを落として、私の実家の最寄りの駅を入力した。すると、チャットボットは「候補が複数あります」と言い、都心の駅を羅列しはじめた。もちろんその中に、おらが村の駅はない。

地方は最新システムから無視されるという、初歩的なことを忘れていた。田舎ものは田舎ものらしく、ドバイへは徒歩か牛に乗って行こう。


<作者プロフィール>
カレー沢薫
漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「やわらかい。課長起田総司」(2015年)、「ねこもくわない」(2016年)。コラム集「負ける技術」(2014年、文庫版2015年)、Web連載漫画「ヤリへん」(2015年~)、コラム集「ブス図鑑」(2016年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。本連載を文庫化した「もっと負ける技術 カレー沢薫の日常と退廃」は、講談社文庫より絶賛発売中。

「兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃」、次回は2017年3月28日(火)掲載予定です。

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インデックス

連載目次
第113回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(53)シンギュラリティ
第112回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(52)Society5.0
第111回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(51)Industry 4.0
第110回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(50)CPS
第109回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(49)3Dプリンタ
第108回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(48)CPU
第107回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(47)e-文書法
第106回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(46)CGM
第105回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(45)MFP
第104回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(44)チャットボット
第103回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(43)メッセンジャー
第102回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(42)PLM
第101回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(41)CAD
第100回 100回にわたる連載を振り返って
第99回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(40)モバイルペイメント
第98回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(39)ダークネット
第97回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(38)IPアドレス
第96回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(37)JPEG
第95回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(36)SCM
第94回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(35)コグニティブ
第93回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(34)ハプティック
第92回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(33) 会話型UI
第91回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(32) APT
第90回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(31) 4K・8K
第89回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(30) コネクテッドカー
第88回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(29) ビーコン
第87回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(28) ゼロデイアタック
第86回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(27) 生体認証
第85回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(26)CPM
第84回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(25)NAS
第83回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(24)デジタルサイネージ
第82回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(23)テキストマイニング
第81回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(22)ファビコン
第80回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(21)ERP
第79回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(20) オンデマンド
第78回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(19) VoIP
第77回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(18) ディープラーニング
第76回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(17) テレワーク
第75回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(16) 5G
第74回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(15) O2O2O
第73回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(14)SaaS
第72回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(13)シングルサインオン
第71回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(12)オムニチャネル
第70回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(11)ユビキタス
第69回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(10)ホワイトハッカー
第68回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(9)ビッグデータ
第67回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(8)ランサムウェア
第66回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(7)クラウド
第65回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(6)ドローン
第64回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(5)人工知能
第63回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(4)マルウェア
第62回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(3)FinTech(フィンテック)
第61回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(2)VR
第60回 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(1)IoT
第59回 mixi時代のリア充アピールと「消灯」
第58回 春の花粉症と個々人の「体質」
第57回 飲み会に誘われた→たたかう、にげる?
第56回 SNS疲れと「インターネット上の友達」
第55回 カレー沢流・「真の親孝行」と「かんぴょう巻」
第54回 地方在住のオタクと「ガンジス川のまんじゅう」
第53回 カレー沢薫が激賞する「別腹で食べるべきスイーツ」
第52回 カレー沢薫、「ゆとり」「さとり」を語る
第51回 もしカレー沢薫の作品がアニメ/実写化したら
第50回 兼業漫画家が語る「健康法」と「クソゲー」
第49回 安直?楽勝?作家から見た「過去のヒット作のリバイバル」
第48回 兼業作家とマイナンバー
第47回 デザインを学んだカレー沢薫の「卒論」
第46回 カレー沢薫が「最後の晩餐に食べたい」一品
第45回 オタクがオタクであり続ける理由
第44回 漫画家・カレー沢薫がはじめてコラムを書いた日
第43回 カレー沢暴力からの卒業
第42回 兼業漫画家と女の「諦め」
第41回 カレー沢暴力(薫)が語る、「お断り」な仕事の依頼
第40回 女が「美」を希求する理由、そして“ありのまま”の罠
第39回 上京の旅路のロハスな過ごし方
第38回 酒もたばこもやらない兼業漫画家が愛する「嗜好品」
第37回 兼業漫画家と怒りの賢者モード
第36回 福山雅治の結婚と「公式設定」
第35回 もし「カレー沢薫」が改名するとしたら?
第34回 漫画家デビューしたいなら、まず石油王になってから
第33回 猫もまたいで通る「老後」の話
第32回 兼業漫画家が考える、「前の作風の方がよかった」と言われた時の対処法
第31回 カレー沢薫が偏愛する、ある猫の物語
第30回 「結婚すればリア充」なのか? 非リア充/リア充の境界線
第29回 猫派の兼業漫画家、「犬」を語る
第28回 漫画家の仕事をクールに演出する「作業用ドリンク」
第27回 続・「カレー沢薫先生サイン会」の開催動機
第26回 兼業漫画家の「作業用BGM」
第25回 カレー沢薫が語る「恋愛」~壁ドンは本当にときめくのか~
第24回 兼業漫画家とLINEスタンプ
第23回 兼業漫画家に学ぶタスク管理の極意
第22回 酒やたばこより健康を害する、たったひとつの事柄
第21回 兼業漫画家の「夏の風物詩」
第20回 漫画家の夫になるということ(あるいは、夫婦が暮らすということ)
第19回 漫画家という職業選択と親心
第18回 二次創作の醍醐味と争いを生まないための「注意」
第17回 漫画家・カレー沢薫が語る「アイデアのつくり方」
第16回 猫よ、人の望みの喜びよ
第15回 カレー沢薫というペンネームを生んだ「病」
第14回 コミュ障界の石川五ェ門が人間観察をしない理由
第13回 「カレー沢薫先生サイン会」の開催動機
第12回 兼業漫画家の美容意識と"オタクの美醜"
第11回 あなたは米に「萌え」られるか
第10回 健康で文化的な兼業漫画家の生活
第9回 漫画家の絵の上達と「オウンゴール」
第8回 漫画家の夫をめぐる「傾向」と「受難」
第7回 カレー沢薫の華麗なる交友関係
第6回 漫画家は怒り、編集者はスコップを持つ
第5回 兼業漫画家は"大平原"の夢を見るか
第4回 カレー沢流・漫画制作におけるライフハック
第3回 "兼業まんがクリエイター"の日常を徹底解剖
第2回 確定申告、その経費と内訳~カレー沢薫の場合~
第1回 "漫画を描かない漫画家志望"がデビューするまで

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