今回のテーマは「JPEG」である。

舐めるな。この俺様がJPEGにいくらつぎ込んでいると思っているんだ。

ネット上で目にする画像=大体JPEG

そう、我々が日々経済という名のソシャゲのガチャを回して何を得ようとしているかというと、他ならぬこの「JPEG」だし、尊い尊いとディスプレイの前で涙を流して拝んでいるpixivの神絵師の絵だって「JPEG」だ。つまり、インターネット上で目にする画像の大体はJPEGということになる。

そもそもJPEGとは何かというと、画像の圧縮方法の一つだ。ネットに画像を載せようにもその容量があまりにも大きければ表示に時間がかかり、せっかくのセクシー画像もその全貌を表す前に、こちらがクールダウンしてしまう恐れがある。画像の表示は一刻を争うのだ。そして、そのために作られた画像の圧縮方式がJPEGだ。

何を今更誰でも知っていることを、と思うかもしれないが、全くのネット・PC初心者は当然知らないのだ、現に私も昔は知らなかった。

知らなかったが故に、Photoshopか何かで描いた嫁キャラの絵をJPEGに圧縮することなくそのまま、メール添付で人に送り付けたことがある。その結果、その人のメールソフトは数時間にわたり、当時としては激重な画像データを受信し続けるという「一片の曇りもない嫌がらせ」となったのだ。

それをやったのはネットがやっと一般家庭に復旧し始めたころで、私も高校生だったため「ネット初心者の子供のやらかし」で済んだが、今これをやったら完全に老害である。

元は受信に数時間かかるような画像データであっても、JPEGに圧縮することによりものの数秒で相手に送ることができるし、興奮冷めやらぬままにセクシー画像を拝むこともできるのだ。

JPEGの名前の由来

ネットにおいてJPEGは空気レベルで浸透してしまっているため(実際オタクはJPEGがなくなったら窒息死すると思う)、意識することすらなくなっていたが、そもそもJPEGはどのように生まれたのだろう。

まず「JPEG」という名前だが「ジェイペグ」と読む、これは世界共通だそうだ。由来は、ジェイ田ペグ太郎さんが発明したというわけではなく、それを作ったISO組織「Joint Photographic Experts Group」の頭文字だ。(1)

その前に「ISO」ってなんだよ、とお怒りの方もいるだろう、少なくとも私は怒っている側なので、キーボードを叩き壊さん勢いで「ISO」をググった。ISOとは「International Organization for Standardization(国際標準化機構)」のことだそうだ。

例えば、非常階段などのマークが場所によってバラバラでデザイナーのいらない遊び心満載だったら、有事の際にそこが非常階段だとわからないし、便所と間違ってそこで用を足す恐れがある。よって、そういったものは共通マークにする必要がある。そのような世界のスタンダードを作るのがISOというわけだ。

確かに画像の圧縮方法も共通のものがないと困る、現にPhotoshopで作ったデータは、Photoshopかそれを展開できるソフトが入っていないPCでは開くことができない。だが、JPEGならどのパソコンでも見ることができる。もしJPEGが見られないパソコンがあるとしたら、それはパソコン大の岩か何かだと思うので、早急にヤマダ電機か眼科に行った方がいい。

JPEGは最高のコレクション手段

そんな世界のスタンダード、なくてはならないJPEGだが、最近はプライバシーやセキュリティの問題もある。例えばカメラで撮った写真をSNSなどにあげた場合、そのデータに含まれる位置情報などが悪用されるケースがある。そのため、JPEG側で利用者のプライバシー保護を行うための技術「JPEG プライバシー&セキュリティ」を開発中だそうだ。(2)

だが、Twitterに上目使い顔写真(ヒゲや猫耳が描き足されている)をアップして「ブスすぎていゃになる…」「#ブスと思った人RT」など謎のハッシュタグをつけて自らツイートしている奴がいる時点でプライバシーもクソもない気がするし、ネット上にはどんなに情報がない写真からでも個人を特定する「スネーク」がいるので、やはり本人の危機意識が一番の問題だろう。

ちなみに最近、私はソシャゲで推しキャラが描かれているJPEGを手に入れようとして一日で5万円ほど溶かし、結局そのJPEGは手に入らなかった。そういう人間に対し人は「JPEGに5万www」と冷や水をかけたがるものだが、コレクションとしてJPEGほど合理的なものはない。

まず、データであるからかさばらない。同じコレクションでも鉄道模型とかだったらとんでもなく場所を取り、一部屋まるごとつぶしかねない。そこから「嫁が俺のコレクションを勝手に捨てた」という、発言小町でおなじみの事件が起きるのだ。

それに、形のあるものだと見つかりやすいという問題もある。見つかったら「あんた、これいくらしたの?」詰め寄られてしまう。その点、JPEGなら事件はすべてスマホやPC内で起こるため、クレカの請求を見られない限り発覚しない。

現に、私が溶かした五万のことを夫は知らない。

「集めるならJPEG」、これが家庭円満の秘訣である。

参考ページ

1)【連載】JPEGはなぜここまで普及したのか? ~専門家に聞いてきた~

2)JPEGのプライバシーを守る新規格、その狙いは? ~専門家に聞いてきた~


<作者プロフィール>
カレー沢薫
漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「やわらかい。課長起田総司」(2015年)、「ねこもくわない」(2016年)。コラム集「負ける技術」(2014年、文庫版2015年)、Web連載漫画「ヤリへん」(2015年~)、コラム集「ブス図鑑」(2016年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。本連載を文庫化した「もっと負ける技術 カレー沢薫の日常と退廃」は、講談社文庫より絶賛発売中。

「兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃」、次回は2017年1月31日(火)掲載予定です。