初代は1955年~

全日本空輸(以下、ANA)の歴史は、前身となる日本ヘリコプター輸送(通称、日ペリ)が設立された昭和27年(1952)に始まる。2012年12月には創業60周年を迎え、国内線では最大の路線網を展開しており、国際線も含めた全旅客数は世界のトップ15に挙げられている。

ANAは現在に至るまで、9代に及ぶ客室乗務員の制服を展開している。ANAと言えば濃紺をイメージするかもしれないが、中には「これもANAなの?」という驚きのデザインもあるのだ。2014年度下期には10代目の着用開始が予定されているが、ここでは9代目までの制服を初代から追っていきたい。

初代は米空軍の婦人服がモデル

ANAの前身である日ペリ航空はDC-3を就航させるのに伴い、初めて客室乗務員を採用。6人の募集に対して1,000人もの応募者が試験場に集まったため、整理のために警察官まで出動したという。そして昭和30年(1955)11月、この狭き門をくぐり抜けた初代客室乗務員たちは、米空軍の婦人服をモデルにデザインされた鮮やかな紺色のツーピースの制服を身にまとい、乗客たちをもてなした。夏はジャケットを脱いで、開襟シャツ姿でサービスを行っていたという。   

2代目は昭和33年(1958)に登場。社員によってデザインされた制服は、シンプルなノーカラーの紺のツーピースと、開襟シャツが組み合わされていた。帽子は初代と同様にベレー帽タイプとなっている。この時期、世界を見てみると、ベレー帽を客室乗務員の制服に採用する航空会社が多く見られた。

昭和41年(1966)に登場した3代目は、同年9月に厚生大臣賞を受賞。ブルーのツーピースで、今までベレー帽だった帽子は、金ボタンをあしらった翼が特徴的な、フェミニンな形に様変わりした。また、初代からこの3代目までは、一人ひとり足の形を測って制靴を作っていたという。靴は機内用と外用で、ヒールの高さが異なる2種類が貸与されていた。

2代目は58年~

3代目は66年~

4代目は70年~

大阪万博に合わせてミニが登場

ANAの歴代制服の中で、趣が大きく異なるのが4代目である。昭和45年(1970)に開催された大阪万博に合わせて登場したのが、当時大流行していたAラインのミニ。後にも先にもミニスカートの制服はこの時だけで、夏服はさわやかな青と白、冬服は黄色と茶色のコントラストが印象的なワンピースを展開していた。

ロッキードL-1011(トライスター)導入と同時に、昭和49年(1974)に登場した5代目の制服は、「トライスタールック」と呼ばれている。ブルー、ベージュ、オレンジの3色のバリエーションで、スカートのほかパンタロンが採用された。パンツを着用した制服は、5代目のみの展開となっている。

ブラウスにはループにかける小さなボタンが10個、ジャケットにはオーバーベルトをデザイン。また、靴は編み上げのひも付きパンプスであったため、着替えに時間がかかる“CA泣かせの制服”だったという。

ボーイング747SR(スーパージャンボ)が就航するのにあわせて、昭和54年(1979)に6代目を展開。一新された制服はカジュアルなデザインと色使いで、親しみやすい印象をもたらした。また、機能性を重視した働きやすいものになり、ANAの認知度アップにも貢献した制服と言える。

5代目は74年~

6代目は79年~

7代目は82年~

スカーフは7代目から

創立30周年を迎えた昭和57年(1982)からは、客室乗務員のシンボルともいえるスカーフが登場する。制服は6代目とはうって変わり、かっちりしたデザインのダブルのスーツへ。カラーは濃紺だが、旅客係員の制服は赤いスーツであった。

また、客室乗務員たちはその日の気分で、スカーフの色や結び方をチョイス。エプロンもシャープなすっきりラインとかわいらしいスタイルの2種類があり、乗客とは制服を話題にしたコミュニケーションも生まれたという。更にこの代から、ストッキングはベージュからブラックに移行となった。

平成2年(1990)には、マニッシュなイメージのストライプスーツを採用。「女らしい」イメージから「シャープ」なイメージへと様変わりした。ブラウスやスカーフは、バイオレット、アクアマリン、コーラルピンクの3色から好きなものを選べるようになっていた。またこの代の途中から、制帽と手袋は廃止された。

現在の制服は2005年5月、ANAグループで統一されたブランドのアピールと、グループの一体感を高めるために登場。策定に当たっては、ANAの経営理念である「安心」と「信頼」を基本に、ANAの創立50周年と羽田第2旅客ターミナルへの移転を機に、「変革」と「新しさ」をコンセプトとしている。ブルーとパープルのスカーフが指し色となり、フェミニンな印象を与えている。

8代目は90年~

現在の9代目は2005年~

2014年度下期に登場予定の10代目には、世界的なデザイナーであるプラバル・グルンを起用。同氏のコレクションは、英国キャサリン妃やレディー・ガガなど多くのセレブリティから愛されている。制服の基本コンセプトは、「きらめき」や「安定感」「信頼感」など、進化するANAを感じさせるデザインを構想しているという。

全日本空輸(ALL NIPPON AIRWAYS)

1952年に前身となる日本ヘリコプター輸送が誕生。1997年に設立された「スターアライアンス」に1999年より加盟し、メンバー各社が運航する便にANA便名(NH)を付けるコードシェアを積極的に展開している。就航する世界の都市は33都市だが、コードシェア便を合わせると、ほぼ世界を網羅する巨大なネットワークを展開している。

2013年8月下旬より、ANAブランドのコンセプトを表す「Inspiration of JAPAN」の文字をデザインした飛行機を就航、順次導入させている。また、これに合わせてサービスの向上を図り、年度を通して新しいサービスを提供している。新機内食は総勢24人の匠からなる「THE CONNOISSEURS(ザ・コノシュアーズ)」がプロデュースし、長時間フライトのファーストクラス・ビジネスクラスの寝具もリニューアルした。