【コラム】

東京バイツ

134 "国語世論調査"報道に隠されているかもしれない各紙がはっきり書かない真実

    福冨忠和  [2003/06/26]

    6月19日、20日の新聞やテレビが、ちょっとした記事の穴埋め程度の印象で「国語に関する世論調査」に関するニュースを報道した。これは文化庁が行った昨年の同調査の報告。たとえば各新聞社のWebで検索可能な見出しを挙げてみると、「文化庁国語調査 正しい意味ご存じですか?」(産経新聞)、「『役不足』などの慣用句、6割が逆の意味で理解(毎日新聞)、「『役不足』『確信犯』、意味理解は2割程度 文化庁調査」(朝日新聞)といったもので、推測はつくと思うが、慣用句などの用法について、多くの人が原意とは違った意味で理解していることを、この調査があきらかにしたことを書いている。

    「流れに棹さす」とか「役不足」とか「確信犯」という言葉が間違って使われているのは、最近TVで頻繁に流れている電子辞書のCMで知っていたのであまり驚かないが、このほかよく使われる英語を元にするカタカナ語の理解なども調べていて、こちらの理解度の高さとあわせて、総じて各記事が暗に指摘するのは、「日本語が乱れている」ということのようだ。元の調査のほうでも、同時に「現在使われている言葉は乱れていると思うか」という設問を設け、その結果、80.4%が「非常に」「ある程度」乱れている、と答えたことを報告している。年齢別では、若年層ほど「非常に乱れていると思う」と答えた割合が低い。

    なるほどね、言葉は乱れてるみたいだね、などと感じつつ、普通はそんな記事などすぐ忘れてしまうのだが、以前に 国立国語研究所の外来語の言い換えについてこのコラムで文句を付けたこともあったので(第112回 「納得診療」や「交通利便性」の背後で隠蔽されてきた重要な概念について)、一応気にして、文化庁のWebで元報告を探した。ところが報告書そのものは国立印刷局から市販されるため、現物は掲載されておらず、「平成14年度『国語に関する世論調査』の結果について」という報道資料だけがあった。まあ、この公開方法の善し悪しを特に問うつもりはない。

    気になったのは、毎年継続している調査の中で、今年新たに行われた「読書」に関する項目なのだ。1カ月にどれくらい本を読むか、という問いに、全く読まない37.6%、1~10冊58.1%、11冊~20冊2.6%。1~10冊という区分は随分おおざっぱかな、と思うが、これとて「そんなものだろう」という印象だ。別の設問で「読書する人の数は減っている」が60.6%という結果もあるが、自分じゃあまり本は読まない割に、みんな結構シビアな印象を持っているものだ、と感じるばかり。実はこの報道資料にある読書に関する調査範囲は、この2つと「読書することのよいところ」というものだけで、「言葉の乱れ」「カタカナ語」にくらべてあんまりつっこんでいない。新聞、テレビ報道もこの発表をうけて「言葉は乱れてるぜー」というトーンだったわけだ。

    しかし新聞記者の中には、きまじめに調査報告の現物まで目を通して、恐るべき内容に気付いた人がいたようだ。これが朝日新聞の「『全く読書しない』3人に1人 文化庁『国語世論調査』」という記事で、前述の「言葉の乱れ」記事が、紙面では1面だったのに対して、こちらは関連記事として第2社会面にある。

    「『全く読まない』の割合を地域別にみると、高かったのは四国(59.8%)、東北(48.5%)、九州(47.4%)だった。低かったのは関東(28.6%)と近畿(34.3%)などだ。」「都市の規模が大きい方が、全く読まない人が少ないという傾向も出た。東京都区部(18.3%)、政令指定市(31.1%)に対し、人口10万人未満の小都市は41.8%、町村は48.0%だった。」「年代別では、1冊も読んでいないのは60歳以上の47.3%から40~49歳の26.0%までの幅があった。 」(同記事)

    どうです。恐るべき事実でしょ。

    紙面では、地域別の読書量がグラフ化されていて、この地域間の「読書デバイド」が歴然とわかる。また斎藤孝・明大教授の「地域書店の質、量」を原因視するコメントもある。

    もしかしたらみんな「そうじゃないかなー」と思っていたことかもしれないが、「やっぱり公然とニュースにするのはまずいんじゃないの」などという判断もはたらいた結果、心優しき産経新聞や毎日新聞は記事にしなかったような気もしないではないが、報道しなければ報道しないで、王様はいつまでも裸だったり、ロバの耳だったりする可能性もあり、一応評価すべきかも知れない。

    で、敢えてこの調査からわかる事実を確認しておく。

    ・四国の人は、日本でもっとも本を読まない傾向がある。その次が東北、北陸の順。

    年齢別で言えば、

    ・高齢者ほど本を読まない傾向がある。

    ということ。これを「日本語の乱れ」に関する項目とあわせて考えると、

    ・本を読まない人ほど、日本語が乱れている、と思っている傾向が高い。

    あるいは、

    ・日本語が乱れていると思っている人は、そう思っていない人より本を読まない傾向がある。

    ということが言えてしまうんじゃないだろうか。

    私も今後、四国や北陸などに出かけることもあれば、年配の方との人間関係もあるの で、これ以上のコメントは避けておくが(^^)、これ、「言うことがはばかれる真実」という感じがしている。

    福冨忠和(Tadakazu Fukutomi)
    vwyz@jca.apc.org

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