【コラム】
昨年が日中友好40周年だったためか、中国の現状、特に経済発展に関する明るいニュースがメディアをにぎわし、相変わらず継続している。IT関連では中国の関連産業のレポートやインターネットの普及状況に関する記事も数多く、そういうものを読んだり観たりして「これからは中国だ」と思った人も少なくないだろう。
しかし、個人的には、特にインターネットの利用状況などについて、気になることが少なくない。たとえば昨年11月27日にアムネスティ・インターナショナルが報告書「中華人民共和国:中国におけるインターネットに対する国家統制」を発表している。この内容をふまえて同時に発表された声明と国際ニュース(「中国:インターネット利用で、恣意的拘禁、拷問、処刑も」)を読むと、急速に経済発展し、インターネットなど国際コミュニケーションを開放しつつあるとイメージされている中国が、むしろ情報統制を強めている様子が見えてくる。
同ニュースによれば「インターネットの利用に関連した犯罪で拘禁されたり刑務所に送られた人が、少なくとも33人いる」とのことで、そのうち「2人が拘禁中に死亡している。おそらく、警察の拷問や虐待で死亡したものと思われる。2人とも、法輪功の修練者である。法輪功は1999年7月、『邪教集団』として禁止された」ともある。また生存者中、最長の刑(11年)を宣告されている元警察官の李大偉氏の場合でも、その罪状は「外国にある中国民主化サイトから記事をダウンロードした」ことにすぎない。昨年中国政府はインターネットカフェの火事を機にすべてのカフェを封鎖し、アクセス制御ソフトを導入した店のみを再開させたり、国内からGoogleへの接続を政府が一時妨害したりした。
こういう状況下、中国に進出しているIT関連の海外企業は「『国家の安全を脅かし、社会の安定を破壊し、法をやぶり、迷信と猥褻なものを広める』ような『有害』情報を書き込ませないことを、各社に同意させ」た「自主規制誓約書」を政府と結んでいるらしい。
この報告書発表の後も、中国のIT政策に関連して気になることが、日本国内で起こっている。この1月13日から15日まで、東京で日本政府主催による「世界社会情報サミット(WSIS)東京会合」(WSISのアジア太平洋地域の準備会合)が東京で開催された。この会議は国連総会で決議されたWSISの地域会合であり、政府、民間、NGOなど情報化に関わりを持つすべての人々が参加することが目的となっていた。しかし主催の日本政府はこの会議についてほとんど広報せず、NGO参加についてもNGOからの要望があってはじめて「コミュニケーションの権利」(1月12日国連大学)などのサイドイベントが実現した経緯がある。
ところで、この会議で日本政府が、国連加盟国であり正式参加資格のあるはずの朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)を招聘しなかったことも問題となった(現在の拉致問題の状況を考えても、正式招聘がマイナスばかりとも考えられないだろう)らしいのだが、サイドイベントの方では、アジア各国から産業界とともにオブザーバーとして参加しているNGOのうち、台湾からのNGOの参加に、中国政府代表が強く異を唱えたという。その結果、インド政府の提案ですべてのNGOの参加資格が「オブザーバー」から「非公式」に変わり、さらに台湾のNGOの名前を会議記録から抹消する、という中国提案が通り、参加者リストも台湾NGO名を抹消したものが再配布されたというのだ。
「一つの中国」を主張する中華人民共和国政府の政治的な立場は理解できないではないが、そもそも国連がNGO(非政府組織という意味だ)の参加を認めた会合で、その団体の出身国が台湾だったというだけで、ここまで事態を悪くしてしまう中国のスタンスは、やはり異常と言うほか無い。このWSISも情報通信関連の国際会議であるから、情報通信分野での国際的コンセンサスと中国国内の通信規制・情報統制とのギャップを示すものだということができる。
中国政府の北朝鮮からの脱北者への対応を考えてもわかるように、経済発展によって開放されつつある中国社会のイメージとは逆に、国内ではあいも変わらぬ思想統制的な行政体制が維持されているのだろう(その効果・機能はともあれ)。
2002年6月段階での中国のインターネット人口は4,600万人と言われる。ここ10数年中には、人口と比例するように、世界のインターネット人口中、中国の比率は4分の1程度まで増え、世界最大のインターネット国家になるという予想もある。そのとき、インターネット文化のスタンダードが、報告されている中国政府主導のそれになってしまうのでは、という不安感がどうしてもぬぐえない。
アムネスティ・インターナショナル日本
http://www.amnesty.or.jp/
世界社会情報サミット
http://www.wsis-japan.jp/
世界社会情報サミット NGOサイドイベント
http://www.unu.edu/wsis/
福冨忠和(Tadakazu Fukutomi)
vwyz@jca.apc.org
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