前回はベトナムのスイーツについてお伝えしましたが、今回はミャンマーのビジネスチャンスについてお話ししたいと思います。

執筆者紹介

渡邊健太郎(Watanabe Kentaro)


専修大学在学時にエンパワーメント(現ネットランドジャパン)を創業。現在も代表取締役 副社長の肩書きを持つ。2004年~2006年にはライブドア社長室にも所属。同社の子会社であるブロードバンドピクチャーズの代表取締役などを務めた経験を持つ。

現在、カンボジアでのホテル経営にも携わっているほか、経営コンサルタントとしても活躍しており、「アイデア発想・ビジネスモデルセミナー」の講師なども務めている。ブログ「チャンスを掴むビジネスアイディア発想法」も好評執筆中。

イメージとは正反対!? 富裕層が増えているミャンマー

皆さんは、ミャンマーというとどんな印象をお持ちでしょうか。

周りの友人に聞くと、アウンサンスーチーさんの軟禁といったニュースから、「軍事政権から国民が制限を受けて苦しんでいる」「経済制裁を受けている国」といった暗いイメージを抱いているようです。私も同様の印象を持っていました。

実際はどうなのかというと、空港に降り立った瞬間にイメージは一転します。人々はとても明るく親切で、街に出ればモノは豊富で、車のクラクションや物売りの人達の声で活気があります。では、もっと具体的に、ミャンマーの街の様子を紹介していきましょう。

最近は、スーパーマーケットやショッピングセンターが増えてきており、何でも手に入るようになっています。日本製品も例外ではありません。化粧品フロアに行けば、資生堂、カネボウ、コーセーなどの日本ブランドの販売ブースがあり、書店では日本のギャル向けファッション誌が販売されているという有様です。

このようにモノは豊富ですがタイ経由で入ってきているため、値段は高価です。しかし、ミャンマーはアジアで最もGDPの低い国と言われているのに、「一体誰が購入するのか?」とびっくりする値段のついた商品が飛ぶように売れていました。

次に、街の喧騒を生み出す要因の1つである「車」ですが、街中を走る車のほとんどは日本の中古車ばかりでした。その間を走る大型バスも見覚えのあるデザインと形……そう、日本の公営、私営のバスの中古車が走っているのです。

しかも、日本の中古車は考えられないような値段で売買されています。10年前、15年前のクラウンが300万円程で売られているのですから、目を疑いました。3年前には1,000万円もしたというのですから驚きです。

では、携帯などの通信費はどうでしょうか。今年1月にミャンマーを訪れた際にSIMカードを購入したところ、端末代は別途で5万円でした。電話の権利費といった感覚で、3年前は50万円もしたそうです。

念のためお伝えしておきますと、ミャンマー人の年収は5万円と言われていますから、いかに高価かがおわかりいただけると思います。国内通話代も1分100円、インターネット回線は脆弱なのに高額といった具合で、通信インフラがまだまだ弱く、高価という状況でした。

年収5万円なのに、誰がこんな高価な携帯電話や車を購入できるのだろう……と不思議になりますよね。実は、ミャンマーの人々は結構なお金を持っており、表の経済だけではなく、見えにくい経済があることが推測されます。

その1つが不動産売買です。

例えば、ヤンゴン中心の土地の値段が急上昇しており、東京よりも高い土地が出てきているそうです。この背景には、ミャンマーの人々は土地信仰が強く「とにかく土地に投資しよう!」という流れがあるようです。株式や海外投資などによるお金を増やす手段を持たない人々が多く、国内投資へと資産を振り分けるため、土地の値段が過熱して、急上昇しているのです。

そのため、街中に土地成金が大勢歩いているといった印象を受けました。現地の平均月収の1~2ヵ月分をポンと簡単に使う富裕層の人が増えているそうです。

すでに成功している富裕層向け飲食店ビジネス

日本ではあまり情報が伝わってこないミャンマーの街の様子を紹介してきましたが、そんなミャンマーでは、どのようなビジネスチャンスが考えられるでしょうか。

まず、富裕層向けの飲食店ビジネスなどは、今後需要が伸びていくと思います。今回、いくつかの日本食店を訪れてみました。ある店は日本の駐在員とその家族をターゲットにした日本料理店として成功しており、別な店は顧客の9割が現地富裕層という焼肉店で、こちらも大成功を収めていました。

そのほか、「ドーナツキング」という、日本のミスタードーナツのようなドーナツ専門店が大人気で店舗網を増やしており、比較的富裕層の間で受け入れられていました。日本と同様にお持ち帰りで購入するスタイルが主で、価格は日本円で50~100円程度ですので、プライスラインを見ても十分にビジネスチャンスがあると言えるでしょう。

また、ミャンマーには経済制裁の影響もあって、マクドナルドやケンタッキーなどが出店していませんので、多少のローカライズを行えば、日本のファーストフード店にとってもビジネスチャンスがあるかもしれません。

ミャンマーの人口は、政府が人口統計をきちんと把握できていない状況ですが、本当は8,000万人程いるだろうと言われており、内需を期待することができます。

それから、私が今回印象的だったのは、ミャンマーの人々の国民性です。前向きな意識を持っている真面目な国民性、そして識字率が大変高いというのも特徴です。

今後、礼儀正しく真面目で優秀、そして低価格な賃金で働いてくれる労働者を求めて、日本企業がこぞって進出してくるのではないでしょうか。そうなると、日本からやってくる駐在員やその家族達向けの生活全般に関わるサービスへの需要が高まり、ビジネスチャンスが一気に増加してくることが予想されます。

余談ですが、ビルマ語の文法が日本語の文法と似ているらしく、日本語を学んでいる人々もいました。外国語の一番人気は、タイとの連携による経済発展が見込んでタイ語だそうですが、日本型ビジネスマネジメントの語学学校などもおもしろいかもしれません。